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17.一時撤退


 路地裏で大立ち回りを演じた翌日。


 私は割り当てられた部屋でまったりしていた。


 さすがに、今日予定していた実態調査は取り止めとなった。襲われたことで疲れているだろうと気を使ってくれたのだ。


 この後で見解や調査結果などを聞く時間を設けてもらったけど。


「はあ、昨日は大変だったよ」

『うん、でも無事に済んでよかった』

「結局あの人は何をしたかったんだろうね」

『わからない、だけど危険な人物。今後外出は注意を払わないといけない』

「だね、まだ町に居るだろうし」


 結局あの女性は何をしたかったのか考えてもよくわからなかった。私を異世界に転生させた人物から、連れて来るよう言われてたみたいだが攻撃されたし。


 私と同様に転生か転移してきたらしいが友好的な関係は築けそうもない。きっとあの女性を派遣した人も普通じゃないと思う。どうやって転生させたのか謎だし、目的も不明だ。


 気軽に町を散策できない状況になっただけで情報は皆無。最近この町に来たのかユリアーナさんも見たことの無い冒険者だった。


 特徴的な格好なので知っていると予想していたが当てが外れたよ。だけど、有り難いことに調べてくれるらしいので問題はないだろう。


「さてと、そろそろ時間だからユリアーナさんに会いに行こうか」

『わかった。場所は前と同じ?』

「確かそうだったはず」


 今日はとだまちゃんも槍の外に出ているので一緒に応接室へと向かう。


 屋敷には年かさの執事と庭師の2人が使用人として別棟に住んでいるらしい。私達のことは伝えられているため、安心して屋敷を移動できる。未だに会ってすらいないけどね。


 コンコン


「どうぞ」

「お持たせしてしまいましたか?」

「気にしなくて大丈夫よ。それより、早速始めましょう」


 結果がまとめられているのか書類が机に広げられている。


「まずは、襲ってきた冒険者についてね。やはり、町に着いたばかりで名前もどこから来たのかもわからないわ」

「そうですか…」

「ええ。ただ、金髪の男と一緒に居たみたいね。2人とも顔が整っていて、独特な格好で目立っていたから多数の目撃情報があるわ」

『金髪の男…』

「途中で別行動をしていたようだから関係者では無いかもしれないけれどね。情報が少なくて判別が難しいわ」


「それと、もしかしたら既に町に居ない可能性があるの。時間的に貴方と戦った後ぐらいから目撃されていないのよ」

「それって、あの直後に町を出たってことですか?」

「それが不思議なんだけど門番が誰も見ていないのよ。そもそも、入った記録さえ無いわ。バレずに侵入して、いつの間にか抜け出しているの」


 そんなこと現実には不可能としか思えない、外壁の内側には巡回がいて門前では門番が目を尖らせている。


 その状況でどうやって潜り抜けたのかな? 外壁に穴でも空いてるぐらいしか他に思いつかないよ。


 それに、一緒に居た金髪の男も気にかかる。屋敷に向かう途中で営業をしてきたセールスマン、あの人も顔は綺麗だったし金髪だった。ただの偶然だろうか?


「もう何日かは調べてもらうけれど、たぶん大丈夫だと思うわ。ただし、無用な外出は禁止よ」

「はい、理解してます。潜伏しているかもしれないですよね」

「理解できてるならいいわ。さ、次の話題に移りましょう」


 あの女性のことは気になるけど居ないならそれで問題ない。それより、人間に戻る方が重要だ。聞き逃さないように集中してユリアーナさんの話に耳を傾けた。


 私の体だが端的言えば結晶化していない巨大な魔石らしい。魔力が多分に含まれていて半分物質化している状態だ。だが、その性質は変化しており魔法を発動することは無理だったそうな。


 大量の魔力が収束すると凝固される性質により魔石ができる。魔物は体内に魔力を宿しているため魔石が生み出されているのだ。空気中の魔素を魔力に変換する機能が備わっているという事実もあるが今は横に置いておく。


 何故、半分なのかと言うと魔力以外にも何かが混在していることが関係する。性質変化も要因の1つだが混在している物体が結晶となることを阻害しているとユリアーナさんは考えているみたいだ。


 未知の物質故にそれ以上のことは研究を重ねないとわからないと伝えられた。


 うーん、完全に理解した訳じゃないけど、要は寒天の少ない水ようかんみたいな物かな。


 とりあえず、魔石に類似した物体で構成されている訳だ。


「貴方の体に関してはこんな所ね。何か質問はある?」

「混在している物体によって魔法が使えない可能性ってあります?」

「恐らくは大丈夫よ。結局の所、魔力を意思で操るの。術式で制御するか根源魔法みたいに全て意思の力で行うかの違いよ」

「それじゃあ!」

「魔力を操るセンスが有れば、だけれどね」

「な、なるほど」


 次は私に似た魔物についての話だが、あまり情報は得られなかった。


 そもそも、個体数が少ないのか冒険者ギルドですら目撃情報に乏しく討伐数も片手で数えれるほどだ。ユリアーナさん自身も直接見た事は無いらしい。


 まとめられた記録によれば、心臓辺りに魔石が浮いており、見た目は人間で透き通っている。何やら呟きながら近づいて来て、触れられると干乾びたようにカラカラとなって殺されるようだ。


 人体実験の果てに魔石を埋め込まれた元人間では無いか、と考えられているが詳細は不明。


 実際に見つけ出して色々試すしかないだろうか。


 ユリアーナさんとの話し合いは遅くまで続いた。


―――――――――――――


 レイが上空へと逃げ出し屋敷を目指していた時と同じ頃。


 裏路地では1人の女が辺り一帯を練り歩いていた。


「くそっ、あのガキどこ行きやがったよ」


 時折何かを探すようにキョロキョロとしている。


「どこだ、どこに居やがる。俺の刀を返しやがれってんだ!」


 ガキは仕留められねぇし、愛刀は持ってかれるわで最悪だ。こんなことなら、投げるんじゃなかったぜ。


「まだ、そう遠くにゃ行っちゃいねえ筈だ」


 怒りから顔を歪め、恐ろしい形相で路地裏を隈なく探す。


「こっちに来たはずだろうがよ。せめてアイツだけでも置いて行けよ」


 それにしても、気配の割にクソ弱かったな。妙な避け方しやがるから、逃しちまったがもっと広い場所なら一方的に切り裂いてやってるぜ。


 だが、切りかかったのはまずかったか? 女狐の奴に連れて来いって言われたが抑えきれなかったぜ。ま、しょうがねぇな、このために来たんだからよぉ。


「ここにも無ぇ…。って、あん?」


 コツコツ


 途方に暮れていたが聞こえてきた足音の方向を見れば、刀を持った金髪の男が向かって来る。


「おお! てめぇ、それ俺の刀じゃねえかよ!」

「はあ、やっぱりそうでしたか。地面に刺さっていましたが何をしていたんですか?」

「んなもん殺し合いに決まってんだろうがよ。まあ、逃げられたがな」

「はい? 一柳さんには資金の調達をお願いした筈ですよね?」

「だから何だよ、連れて行く予定のガキが居たんだぜ? 金なんぞ後回しだろうがよ」


 ったく何言ってんだこの優男はよ。ほんとに頭ん中詰まってんのか?


「え、もしかして襲ったんですか!?」

「そうだが、なんだってんだよ?」

「何をしているんですか! 見かけたら私に伝えてくださいとお願いしたの忘れたんですか!?」

「そんなこと聞いてねぇよ」

「冗談じゃありませんよ! ああ、どうしたらいいんだ。まだ、新しい人材も見付けられて無いのに…」


 うるせぇ奴だな。また、見つけりゃいいだけだろうがよ。


「……仕方ありません、一度戻って彼女に説明しましょう。計画に支障があってはいけませんから」

「ああ? この町に居んだぞ! さっさと捕まえて終わりだろ!」

「だったらどうして襲ったんですか…。今更付いて来てくれませんよ。それに、隠しごとをして機嫌を損ねたらどうなるか分かりませんよ?」

「ぬうっ」


 そいつはまずいぜ。こいつはもう俺のもんだ、奪われる訳にはいかねぇ。


「ちっ、好きにしやがれよ」

「はあ、なんで私ばかりこんな目に合うんですか。平社員には荷が勝ちすぎるでしょうに」


 金髪の男は手の平に収まるサイズの水晶玉を懐から取り出す。水晶玉には文字が浮いては四散している。


 それを路地裏の壁に向けて掲げると青く輝く門が出現し、2人はそのまま門へと消えていった。


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