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10.ニューウェポン


 居候を開始して3日が過ぎていた。


 あの後、自由に使っていいと部屋を貸してくれた。元々一人で住むには広い家であり、一家族が十分に暮らせれる部屋数が設けられている。室内にはベッドと机、本棚が備え付けられていた。


 部屋は2階で来客があった時のために日頃から綺麗にしていた場所らしい。他の部屋は物置にしていたりと泊められる状況じゃないみたいだ。


 まあ、私は最悪物置でもいいんだけどね、幽霊だし。


 この体になってから食事は必要なくなり、同時にお花摘みに行く事からも解放された。睡眠に関しても無理になったと思ったが、挑戦してみれば夢の世界に飛び立っていた。


 実際に夢を見れはしなかったけど。


 人間だった頃と違うのは、半分起きている事か。完全に意識は失わず、声でも掛けられれば直ぐに目は覚めるだろう。だが、思考は働かず頭は寝ている感覚があるので休めていると思う。


 別に寝なくても眠気は襲ってこないし、ハッキリ言って寝る必要は感じられない。


 ただ、いつか人間に戻った時に寝れなくなると困るので偶には寝ようと決めた。せっかく人間に戻ったのに寝不足で亡霊みたいな顔はしていたくない。


 ちなみに、寝る際はベットに横になっているのだが、目覚めると宙に浮いている。寝ている時にいつの間にか浮遊を念じてしまっているのだろうか。


 おかげで私の様子を確認しに来たコーディアルさんが、某映画の如き光景に腰を抜かしてしまった。歳を取ると腰も弱くなってしまうのだ。


 ごめんなさい、でも安心してください。私は幽霊であって、悪魔じゃないの。


 そんなこんなで、異世界での生活が始まった私だが、魔物を狩る以外にも料理や掃除を行っていた。


 特に何も言われて無いが少しでも心象は良くしておきたい。これからお世話になるのだから。


 長い期間一人暮らしをしていた関係で料理はよく作っていた、掃除もお手の物だ。霊体では食事を取れないため味見は出来ないが、食材は地球とあまり変わらなかったため味付けは容易だった。


 さらに、浮遊がとても役に立ち、作業効率が凄まじい事になった。ひとりでに包丁が食材を切りながら、おたまが鍋をかき混ぜる、フライパンが自ら野菜を炒める間に私は流しで洗い物をする。などと台所は私の独壇場だ。


「なんだ、これは……」


 なんだか浮遊の方がよっぽど魔法らしい気がする、コーディアルさんは私の後ろでずっと固まってた。


 彼は煮る以外の料理を作っていなかったようで笑顔で食べてくれた。嬉しそうに頬を緩ませて頬張る姿は、ちょっと可愛いかった。作った料理を美味しそうに食べてくれるのはありがたい事だ。


「ふんむっ」


「むむむむっ……」


 家事を済ませた私は庭に出ていた。体がなまらないように鍛錬をしていた場所だからか、物が少なく開けている。そこで、端っこに転がっていた石を浮遊させる。


 今まで何となくで浮遊させていたが、改めて能力を確かめる事にしたのだ。今後魔物と戦う場面は多くなる、約束もあるし実体化の検証に向けて、それなりの数を狩る事が必要である。


 現在、私にとって唯一の攻撃手段である浮遊能力の限界を理解するのは大切だ。


 そういう訳で石に向かって念じているのだが……。


 うーん、やっぱり遠距離からだと米袋ぐらいの大きさは浮かせられないな。こぶし大なら余裕で浮かせられんだけどなぁ。


 ただ、一定数を浮遊させていると今度は追加で浮遊できなくなる、何でだろう?


 数が多い事が原因? 能力を適応させれる上限が決まっているのか。いや、だとしたら何故大きいサイズは不可能なのか、一つだけに集中しているはず。個数が問題ではなく、別の何かが影響しているのだろう。


 過去の戦闘を思いだしながら考察をしていく。


 石だけでなくオオカミにとどめを刺した倒木も触れていないとピクリともしなかった。アレもかなりの大きさだった覚えがある。


 サイズ、距離、数、重さ…そうか、重さか! 


 確かに浮かせれない石は私が腕を使っても持ち上げられない程に重い。直接触れずに動かせるのは私自身が上げられる重量だったのだ。


 でも、そうだとしたら浮かせれる重量をどうやって増やせばいいのだろうか。筋トレで筋肉を付ける? 幽霊が筋肉を鍛えても意味があるのかな。肉すら失った霊体だし、無駄になりそうだけど。


 一応、今後試すとして、次は浮遊の適応距離を調査だ。


 庭の真ん中に実験対象である石を配置し、5メートルぐらい離れる。浮遊を念じると地面から飛び上がった。うん、当たり前だけどこの距離は成功、じゃあ今度はもっと距離を空けてみよう。


 移動を開始し、先程の倍ぐらいだろうか。距離にしておよそ10メートル石から離れた。


 標的に向かって念じ、浮遊させる。うん、ここまでは問題なく届くみたいだね。オオカミやゴブリン戦でもこの程度は動かせていたため当然だが、何の苦も無く行使できた。


 その後も距離を空けて検証を続け、念の届く限界は理解できた。


 範囲はおおよそ12メートル、そこからさらに3メートル程まで浮かせられるが遠すぎるのか動きが遅くなる。射出して攻撃に使える範囲が12メートルなのだ、そして15メートルを超えると完全に能力の範囲外となる。


 結局の所、私にできるのは近くの物を浮遊させて撃ち込む事しかできない。でも限界を知っていれば遠すぎて浮かせられない時でも混乱しなくて済むし、何より心に余裕が生まれるのだ。


 それに、今日からは石と枝で戦う原始人から抜け出せるのだ。


「持ってきたぞ、レイ」

「あ! ありがとうございます!」


 コーディアルさんが金属製の長い棒を手に、庭へと出てきた。


 先端が鋭く尖り、徐々に太く分厚くなる三角形をした部品が棒の上部に嵌っている。


 私の新しい武器である槍だ。


 戦いぶり聞いたコーディアルさんが、以前手に入れたまま放置していた槍を私に譲ってくれたのだ。


 倉庫でずっと眠っていたため錆びだらけの状態だったが、研いだり削ったりして整備をしてくれていたのである。それが遂に仕上がったと聞いて楽しみにしていた。


 ピカピカの槍を受け取る。刃も柄も金属製であるためそれなりの重量があるが、私でも持ち上げられる。


 これからは、自然物ではなくこの槍を飛ばすのだ。楽しみすぎる、検証もひと通り終わったから直ぐにでも狩りに行ける。行っちゃおうかな?


「これから狩りに行くのか?」


 ワクワクして落ち着かない様子の私を見て、簡単に予想できたのだろう。苦笑いを溢している。


「はい! そのつもりです。かっこいいですし、早く使ってみたくて」

「ふっ、そんなに喜んでくれたなら整備した甲斐があるよ」


「本当にありがとうございます。では早速行ってきます!」


 一言告げて私は空に浮かび上がり、そのまま森に向かって一直線に向かった。勿論、とだまちゃんも一緒だ。


 森は家の裏に生い茂っているためすぐに着く。


 実はまだニ回しか入っていない、コーディアルさんから魔法を学んだり魔物について教わったりしていたからだ。倒すのも大切だが、この世界の知識も必要なのである。


 この森では小型の魔物がほとんどで大型の魔物やゴブリンなどの人型は出ないと教えてもらった。大した脅威にもならないのでちょうどいい標的だ。


 槍を浮遊で追従させながら森を駆ける。大体30分ぐらい経っただろうか、小さめの池の畔に辿り着く。例え魔物でも生きている事には変わりがない、ご飯も水も必要になる。きっと近くに1匹ぐらい潜んでいるだろうと当たりを付け、目的地に選んだのだ。


 予想通りそこには茶色のウサギの姿が確認できた。高度を落としバレないように近づく。


 水でも飲みに来たんだろう、キョロキョロと周囲を警戒しながら池へと向かって歩みを進めていた。よし、そのまま進め。飲み始めたらその油断している隙を突かせていただく。


 名前はアラシェーラ。見た目大人しそうなウサギだが、あんな姿でも立派な魔物だ。体内にしっかりと魔石が存在していて、魔法は使ってこないがもの凄い脚力で飛び上がる。その脚力を生かして獲物の首に飛び付き、肉を食いちぎるのだ。


 雑食で普段は自身より小さい魔物や果物を餌としているが、勿論、人間を見れば襲い掛かってくる。村人が不用意に入り、何人か犠牲になっているらしい。凶悪な魔物なのである。


 アラシェーラの後ろに着いた。ここから不意打ちを狙い、一撃で仕留めよう。魔法を使って来ないので私には一切の攻撃は入らないが移動が速く、バレたら激しい上下運動で手が付けられない。深い意味はないよ?


 槍の初陣なのだ、出来れば失敗したくない。しっかり狙いを定め、水を飲む後姿に向けて槍を慎重に射出した。風を切る音を響かせながら一直線に向かっていく、途中で気付いたみたいだがもう遅い。


「キュー!」

 

 狙いたがわず茶色い体に槍が突き刺さった。アラシェーラは断末魔をあげ、地面に縫い留められる。


「よし、命中!」


 狙った所から少しずれて後ろ足辺りを貫いているが、問題は無いだろう。バケツに余裕で収まるサイズだ、十分良い結果でしょ。槍は思ったよりもスピードが出ていた、空気抵抗を受けずらいフォルムに槍の重さが合わさったのだろう。


 これは凄く良い、強度もあるし最高の武器じゃない! 私は期待以上の成果に喜び溢れてくる。


 だけど、喜んでばかりもいられない、問題点も同時に見つかったのだ。火力はあるが一度外したら、再度攻撃するのに時間がかかってしまう。特に遠距離からの攻撃であればそれは顕著になってくる。


 再び操るのに近寄る必要があるのだ、それまで槍は刺さったままになる。最悪の場合、相手がゴブリンなどであれば奪われて逆に利用されるかもしれない。


 うーむ、悩ましい問題が見つかってしまったよ、何か対策を考えないと。だけどまあ、今は素直に喜んでおこうか、どうせこの森にはゴブリンなんて出てこないし。


 槍を浮遊で引き抜きながら、笑みを浮かべる。


 これから楽しくなりそうだなぁ。

 

読んでいただきありがとうございます。

評価・ブックマーク・いいね、本当に励みになります。

遂に10話まで来ました、これからも投稿頑張っていきます。

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