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ゴミ219 達人、ボス部屋を攻略する

 10月10日、トボル。

 俺たちは、イリマイオトグ遺跡のボス部屋っぽい場所で巨大アンデッドと対戦中だ。

 けっこう防御力が高くて、少しずつ削る持久戦になった。

 相手がデカいので木材を取り出して殴ってみたが、木材のほうが折れてしまった。


「まあ、こうなるよな。」

「当然でしょうな。鋼鉄の剣でも折れていたのですからな。」

「あー……。

 ……あ、そうだ。あれは? ソーホーゲンでやったやつ。」

「過冷却水か。なるほど。」


 木材をもう1本出して、それに水と綿を混ぜて浴びせる。同時に冷却魔道具の出力を上げて凍らせ、木材を綿入りの氷で包んだ。

 綿が混じっている氷は、鉄筋コンクリートと同じ原理で極めて壊れにくくなる。


「おりゃあっ!」


 完成した冷凍ポ*キーを振り回す。

 いや、手元まで全部氷で包んだから、*ッキーというよりトッ*か。

 冷凍*ッポが巨大アンデッドの右腕を砕き、切り落とした。


「よっしゃ!」

「あははは! 豪快ですな!」


 なぜかオーレさんにウケた。


「面白いですか?」

「そりゃ、剣士ですからな。

 それを剣として扱うというのなら、これほどバカげた話もありますまい。」

「バカげた?」


 首をかしげる俺たちに、オーレさんは笑いをこらえながらうなずいた。


「今回は相手が大きいから有効ですが、普通に人間サイズの相手だったら、そんな大きすぎる武器では隙だらけになりますぞ。

 まず、地面や屋根壁によって振り回せる角度が制限されますから、攻撃する角度も防御できる範囲も限られますな。」

「なるほど。」

「言われてみれば、その通りだな。」

「それに、持ち運びにも不便で、普通の屋内には持ち運べませんぞ。

 宿屋や酒場に入るたびに、表に置いておくのですかな? それはもう『今は丸腰だから襲ってくれ』と言っているようなものですぞ。」

「ああ、なるほど……。

 つまり、農耕馬でレースに出るとか、サラブレッドに馬車を引かせるとか、そういうバカバカしさという事ですね。」


 農耕馬はスピードよりもパワーやスタミナが重視され、大型で力強い品種が使われる。巨大な櫛みたいな道具を取り付けて、それを引かせることで、畑を耕すことができる。あるいは荷馬車を取り付けて農具や収穫物を運ばせる。要するに耕運機や運搬車あるいはトラックの代わりだ。スピードは人間が歩く程度で構わないが、パワーは人間の何倍も強いことが求められるし、すぐへばってしまうような体力のない品種では困る。

 一方、レースにはスピードが重視されるため、軽量で最高速度に優れる品種――つまりサラブレッドが使われる。パワーは騎手1人を乗せて走れる程度でいいし、スタミナもせいぜい数分走れれば十分だが、最高速度は他の品種より優れていることが求められ、同種の中でも他の個体より優れていることが求められる。

 当然、馬車を引くのに使われるのは前者だ。


「まさに。」


 もっと現代の日本人に分かりやすく言うなら、戦車を鈍器として振り回すようなバカバカしさだ。いや、そこは乗り込んで大砲撃てよ、と誰だって思うだろう。


「まあ、でも、デカい敵には有効なんだろ?」

「その通りですな。」

「じゃあ、いいじゃないか。なあ、浩尉?」

「まあな。

 そもそも、別にダメとは言われてないし。」


 バカバカしくて面白いと言われただけだ。


「もっと言うなら、俺にとっては武器を使うほうが手加減している。

 この事実のほうがバカバカしいじゃないか。」


 剣士が剣を使うのは、素手よりも武器を持ったほうが強いから、というのが前提にある。

 槍でも弓でも、武器を使う前提はすべて「素手より強い」という事だ。


「グオオオオオオオオオ!」


 右腕を失った巨大アンデッドが、ようやく姿勢を立て直し、残った左腕で殴りかかってくる。

 俺はその巨大な拳に合わせて、正面から殴り返した。

 巨大アンデッドの巨大な拳と、俺の拳がぶつかり合う。


 ズドオオオオオオオオオオン!


 ビルの発破解体みたいな音がして、巨大アンデッドの左腕が丸ごと木っ端みじんに吹き飛んだ。

 叩き折って切り落とした格好になっただけの冷凍ト*ポ攻撃より、明らかに威力が上だ。


「…………。」

「……無茶苦茶だな、相変わらず。」


 なぜか言葉を失うオーレさんと、呆れた様子のアロー。

 ……解せぬ。

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