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ゴミ218 達人、冒険者する

 10月10日、トボル。

 イリマイオトグ遺跡から出てくるアンデッドを止めるため、その内部に突入した俺たちは、ボス部屋っぽい場所で上半身だけの人型みたいなアンデッドに遭遇した。

 両腕を振り上げた巨大アンデッド。腰から下の骨がない上半身だけの姿なので、両腕を振り上げたら背骨だけで地面に接しているのだが……どういうわけかバランスを崩すこともなく動いている。

 ファンタジーだなぁ……。


「せあああっ!」


 向かって右側――巨大アンデッドの左腕が振り下ろされ、オーレさんはそれを躱しながら反撃した。オーレさんの剣は、巨大アンデッドの左腕を構成する骨を一部吹き飛ばした。

 なるほど。ああすればいいのか。

 巨大アンデッドの右腕が、俺に向かって振り下ろされている。俺はオーレさんの真似をしてサイドステップで躱し、反撃する。

 バキン、と金属が折れる音がして、剣が壊れていた。


「……武器の性能差か。」


 まあ、ゴミとして捨てられた剣だし、素材もただの鋼鉄だからな。スキル「ゴミ修復」で新品にしたところで、その強度はたかが知れている。

 その点、オーレさんの剣はもっと上等な素材でできているのだろう。ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト、それに魔物の牙や爪など、この世界には鋼鉄よりも武器に適した素材がいくらでもある。

 もしもスキル「破壊不能」の効果がおよべば、壊れたりしないのだろうが……そのためには、スキルをかける対象物が「ゴミ拾い用具」でなければならない。剣はゴミ拾い用具ではない。まあ、2本あれば箸のように使えるから、強引に火ばさみの代わりと解釈できるのだが、それだと2本同時に剣を握らなくてはならず、手の大きさ的にちょっと無理がある。二刀流みたいに両手に1本ずつ持つのではスキルの対象外になってしまうし……。


「……これを使うか。」


 地球から俺と一緒に転移してきた火ばさみ。これなら「破壊不能」が使える。片手で握るのもたやすい。


「はっ!」


 アローが矢を放つ。

 巨大アンデッドは防御も回避もしなかった。直撃した胴体に、爆発が起きる。胸骨を構成する骨が少し吹き飛んだ。

 手榴弾並の破壊力があるのに、大したダメージになっていないようだ。痛がる様子がないのは、アンデッドだから元々痛覚がないのかもしれないが。


「意外と硬いな。」


 まあ、今までに出てきたアンデッドよりも明らかに上位の存在のようだし……アンデッドも存在進化するのだろうか? 逆にドラゴンが最初は「人間」並に弱いというのも考えにくいし、最初からそういう強さの存在という事もあるだろう。ただ、この防御力は存在進化1回分に相当するものと考えてよさそうだ。


「まあ、少しは削れるのですから、このまま続ければいつか倒せますぞ。」

「では、このまま続行しましょう。」

「了解だ。」


 俺とオーレさんが巨大アンデッドの腕を1本ずつ担当して、じわじわと削っていく。

 アローが胴体を撃って、胸骨を少しずつ削っていく。

 巨大アンデッドは、俺とオーレさんを相手にしていて、アローにまで手が回らない。


「うーん……この連携……冒険者やってるなぁ。」


 初めてMMORPGをやったときの事を思い出す。知らないプレーヤーに声をかけられて、そのまま野良パーティーを組んで狩りに行った。知らない場所に知らない人と向かっていく高揚感……ゲームが一番楽しかった瞬間かもしれない。

 正直、鉄球を全力投球したら一撃で倒せるだろうが……2人には悪いけど、今この瞬間がとても楽しい。誰かが疲れたり飽きたりしたら全力投球で倒すとして、今はもうしばらく付き合ってもらおう。

 まあ、楽しいとかを抜きにしても、地下で全力投球は控えるべきだ。衝撃音とか衝撃波とかが反響して、こっちに攻撃の威力が帰ってきてしまうからな。


「ですなぁ。ずっとソロでやっておりますから、こういう瞬間は楽しいですぞ。」

「俺はずっとアローと一緒だったけど、気持ちはわかります。」

「同意はするが、さすがにちょっと硬すぎて面倒だな。」

「それな。」

「確かに、その通りですな。」

「浩尉、もうちょっとデカい瓦礫とか振り回したらどうだ?」


 俺はゴミの重さを無視して持ち上げられる。最初それは「機能拡張」によって火ばさみとか手袋とかがチート化しているせいだと思っていたが……いや、それは今でもそうなのかもしれないが、もうステータスが高くなりすぎて、素手でも同じことができてしまう。

 問題は、瓦礫の利用は今までも何度かやっているから、もうあまり大きい瓦礫がないという事だ。アイルの水害などで大量に瓦礫を収納しているとはいえ、それらの多くは木材だ。ディバイドの競技場みたいな大きい石材の瓦礫はもうない。なんせこの国の建物といったら、ほとんどが木造建築だ。石造建築なんて競技場とか城塞とかの大型建築物ぐらいしかない。そしてそれらは耐用年数も長いので、瓦礫として収納しているものはないのだ。


「まあ、木材でどこまでできるか分からないが……。」


 ゴミ袋から木材を取り出して、振り回す。

 予想通り、簡単に木材がへし折れてしまった。

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