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第六話 参上! 復活の戦車戦隊(Aパート)

 東京湾内自衛隊三軍共同兵器試験場。


 横須賀沖にある、戦時中に台場(海上砲台陣地)の一つとして整地されていた無人島の一つである。


 この場所は去年になって急遽新設された共同試験場なのだが、それが横須賀の目の前というのは、ここを駐屯地としている他国に対するあてつけなのだろう。この国にも自分で自分を守れる戦力があるのを知らしめるための。


 この手の兵器試験場とは普通であれば秘匿された場所で行うのが常だが、そう言う通常での試用が始めから不可能なもののために用意された場所だ。


 通常での試用が不可能――つまり凄まじく大きいということだ。


「これがジオーか……」


 試験場に運び込まれたその試作機を仰ぎ見て、航空自衛隊幕僚長は呟いた。


 ジオー。


 鉄車帝国デスクロウラーの蹂躙を許し、あまつさえ戦車戦隊ダイセンシャーという謎の組織の助けを借りなければ国土が守れなかった自衛隊が陸海空の総力を結集して作り上げた、初の三軍共同開発による一号機である。


 その建造目的は、鉄車帝国巨大化怪人、そして戦車戦隊が保有するダイセンシャオーをあらゆる面で圧倒する力を有すること。


 巨大化怪人もダイセンシャオーも90メートル前後の身長を誇る巨大兵器なので、サイズにしてもまずはそれを上回らなければならなく、バランスを考慮して頭部が小さく下半身が大きいという、どことなく怪獣を思わせる威容となってしまったのは仕方ない。更には安定性を高めるべく股間接後部に可動式のアウトリガー――いわゆる尻尾まで付いてしまっているので、人型とは言えないような形になっている。


「まるで機械仕掛けの怪獣ですな」


 陸自の幕僚長が、誰しも思う第一印象を改めて言う。この人物は一々自分で口にして確認しないと気がすまない性格の者なのだろう。


「デザインの良し悪しもあるが、まずは陸保と海保が作ってる巨人よりも先に完成できたのが何よりだ」


 今更な意見を受け流すように海自幕僚長が言う。


 保安庁という二つの二次組織が、一体ずつダイセンシャオー級機械巨人を建造中なのは、自衛隊高官であるなら誰でも知っている。陸保と海保はこの巨人を機関戦力として、この国第四の軍隊である海兵隊を作り出そうとしているらしい。


「二次組織がなにを莫迦な」とは最初は思われたが、この機械巨人が計画通り完成すればそうも言っていられなくなる。


 ダイセンシャオー級とは言ってもかなりのダウングレード型ではあるのだが、一次組織である各自衛隊の存続を揺るがす脅威になりえるのは確かだ。


 だからこそジオーの建造は急ピッチで行われた。そうしてようやく本日を迎える。


 鉄車帝国の滅亡から半年も経ってからの試用運転の漕ぎ付けであるが、それでも数々のオーバーテクノロジーの投入を行わなければ完成しなかった。


 全ては自分たちの手で国を守るため。専守防衛組織であるのに専守防衛ができなかった恨みや悔恨がそのまま具現化したのがこれである。


 だがこのように怨みつらみがこもったものは往々にして、良くない結果をもたらすのが常であるのだが……


『反応炉安定しません!』


 幕僚長たちの為に用意された中央座席に、制御室直結スピーカーからの声が轟いた。


「どういうことだ」


 幕僚長の誰かが訊いた。


『リミットを超えて動力を抽出しようとしています!』


 普通この種の大馬力機関は自壊を抑えるために、限界出力までは出ないようにリミッターがかけられている。有名な処では公試運転では設計通りの33ノットの速力を叩き出したアイオワ級戦艦が実戦ではボイラー破損を抑えるため30ノットを限界速力に設定していたのがある。


 そのような制限すら解除して動くのならば、それは死中に活を求める背水の行動である。自らが壊れてでも倒すべき敵がどこかにいる。


「ジオーが……動いています!」


 側近の一人が叫んだ。


 確かにここまで運び込むのにジオーは自ら歩いてやってきた。そのまま炉も停止させることは無く暖機運転のまま待機していた。しかしそれは何重もの安全装置に保障されてるからこその運用であって、自ら勝手に動き出すことなど考えられていない。


 もちろんこんな機体にパイロットなどは存在しない。


 その全てが外部によりオペレートされる。艦艇の運用を全て外部無線から行うようなものだ。


 ジオーはおもむろに足を上げ、そして一歩目を踏み出した。凄まじい激震。その振動に、共同兵器試験場にいた全員が引っくり返った。


 巨体がゆっくり進んでいく。緩慢な動きの直後に起こるとてつもない揺れ。


 腹部に内蔵された融合炉にしても、軌道エレベーター建造用に研究されていた装甲素材にしても、全体を統括して動かす革新的制御装置にしても、その殆どが偶然の産物で完成したようなシロモノなのである。大重量を動かすために、重量軽減用反重力装置まで組み込まれているが、それは捕獲した異星人宇宙船から解析した技術であるとも噂されていた。そのようなものが一気に反応し合い、負の化学反応を起こしてしまったのだろう。


 そんな塊を作ってしまっていたのである。もはや人の手に負えるものではなく、今まで暴走しなかったのが不思議なくらいだ。


 動き出したジオーは共同実験場を越え、海へと足を進めた。


 ジオーには二つの行動目的コードが打ち込まれている。


 一つは鉄車帝国巨大化怪人の掃討。


 これはこのジオーの存在理由であるのだから、それは間違いが無い。


 しかし鉄車帝国デスクロウラーは壊滅しており、鉄車帝国巨大化怪人も現れることはない。


 では今は一体何の目的に動いているのか。


 ジオーにもう一つ用意されている秘匿コード。


 それは――ダイセンシャーの殲滅。


 それはあまりにも強すぎる脅威の排除。


 自分たちの手には負えない、自分たちには手に入らないものであるならば、排除するしかないと考えるのは人間と言う弱い生き物にとっては普通の考えの一つでしかない。


 一人一人が軍隊一軍の戦力だとしても、三軍共同で開発した究極兵器があれば、一人くらいは踏み潰してこの世から消すことはできるだろう。




 ダイセンシャーがいなければこんなにも平和裏に戦いは終わらなかっただろう。ダイセンシャーと言うあまりにも強すぎる者たちによって被害は最小限で食い止められている。

 しかし自衛隊としては、やはり自分たちの力でこの悪の帝国を殲滅したかった。たとえ国土の殆どが巻き込まれて焦土と化そうとも。




 それは本当に暴走したのか、それとも誰かが予めダイセンシャー殲滅プログラムが起動するようにしておいたのか。

 今となってはわからない。

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