第五話 (Bパート)
真守を回収したオスプレイはとある施設に着陸した。
「守備はどうでしたか?」
「予定通りさ。戦車鉄人は倒され、レッドセンシャーの実力は殆ど落ちていないのが確認された。それだけさ」
「そうですか」
迎え入れた男が静かに言う。この人物の着ている服にも、真守が着ている制服に付いているのと同じような階級章が付いている。彼は海上保安庁の次長である。だから相手がこの地位になることなどありえない程の若年で、しかもぞんざいな口の利き方をされても文句は言えない。いや、ここにいるのが海上保安庁長官であっても、基本的には文句は言えないだろう。何しろ相手が怒れば、自分の所属する組織ごと全てを灰燼に帰すことができるだけの力を持っているからだ。
(この男を我々側に取り込めたのは果たして成功なのだろうか)
海保次席が心の中で独語する。
ここは陸上保安庁と海上保安庁が共同で所有する極秘開発施設である。
二つの保安庁は仕方ないとは言え、自衛隊三軍よりは下位に見られる組織である。それは組織の役目としては致し方ないことであるのだが、中には、特に高官となればなるほどその実情に不満を募らせている者も多い。
だから、此度の鉄車帝国の侵攻を利用して、保安庁を自衛隊と同格の組織に昇格させようとする動きは、デスクロウラーとダイセンシャーが戦っていた時期からあった。
しかし海上保安庁が一次戦力となればそれは海上自衛隊と同じと言うことになり、陸上保安庁の場合も組織が強くなれば陸上自衛隊と変わらなくなってしまう。そうなれば不要論を招くことになる。それだけは避け得たい。
だから双方とも、海自も陸自も立場上作戦行動装備がほぼ存在しない、水際作戦に特化した組織としての力を向上させようというところで、意見の合致を見たのである。海保などは元々が水上での護衛を主目的する組織であるので、海自よりは装備を充実させるのは容易と思われる。
表向きには海保と陸保から要員を供出して新たに四つ目の軍である海兵隊を創設することになっているが、双方とも独自に水際作戦用装備を揃えるのを最終目標としている。
だから海兵隊創設は、保安庁側が一群で自衛隊級の装備を揃えられなかった場合に、協調できるようにと設定された安全策ではあるのだが
(全部成功しちゃってこの国が六軍になっちゃうのも面白いけどね)
海保、陸保共に自衛隊と同格の組織となり、しかも予備案であった海兵隊まで完成してしまう。そうなれば大変な権力が噴出することになるだろう。だがそれだけ力が渦巻けば、自分たち戦車戦隊の力が薄まるのである。真守は保安庁共同施設の廊下を歩きながらほくそ笑んだ。
そうして長い通路の終点の扉へと辿り着く。衛兵が天機関真守であることを確認すると扉を開いた。
「……」
中には二体の鋼鉄の巨人が佇立していた。
一方の名はカイボーガー。もう一方の名はリクボーガー。
鉄車帝国の巨大化怪人に対抗するために開発が進められていたダイセンシャオー級スーパーロボットである。
結局この二大ロボが完成する前に鉄車帝国は滅亡してしまったが、二大保安庁を一次戦力とするための切り札として今ここにある。そして真守が大吾のことをスカウトしようとしたのも、彼をこの二大ロボのどちらかのパイロットにする為である。
「さて、サイコロはどう転ぶんだろうね」
完成間近の二体の機械巨人を見上げながら、真守は一人呟いた。




