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第五話 驚愕! 裏切りの緑の力(Aパート)

「あの、大吾さん」


 今日も今日とていつもの湾岸公園。


 銀杏の木に背をもたせ掛けている大吾と隣で体育座りの少年のいつもの図。二人の間ではリンカーンが丸くなり、少年は学生服姿なので本日が土曜日なのも相変わらず。


「ふと思ったんですけど、元グリーンセンシャーの方って今はなにをしてるんですか?」


 前回の戦いでは戦死したはずのブルーの双子の姉が現れ、戦い直後の隙を見せた大吾から変身道具をあまりにも鮮やかに奪っていった。


 取り返すのにあまりやる気を見せなかった大吾も、一週間空けて少年が再びここを訪れてみると、ちゃんと変身道具を取り返していた。やっぱりやる時はやるんだなぁと、少年は改めてこの人に人生の師匠として着いていくことを誓うのであった。


 そんな接触もあったのでダイセンシャー最後の一人は今は何をやっているのだろうと気になったのだ。


「あいつは故郷に帰って農家に戻ると言っていた、最後の戦いの後で」

「農家の人なんですね、グリーンさんは」


 自給自足の生活を送れればそれが一番迷惑がかからない方法なのだろうグリーンは判断したのだ。


 ダイセンシャーのグリーンは、デスクロウラーとの戦いの当時から、立案された作戦の検討など参謀役のような立ち位置だったらしいのでいかにも彼らしい決断だと思った。


「だが、風の噂では今は別の仕事についているとは聞いたが」

「別の仕事?」

「やっぱりここにいたね、大吾」


 突然割り込んでくる声。二人が見上げるとどこかの組織の制服であろう服装に身を包んだ青年が立っていた。


「――あ!?」


 そして少年はその顔を見た瞬間に一発で誰だかわかった。


「あ、あなたは、元グリーンセンシャーの天機関真守てんきかんまもるさん!?」


 今まさに噂をしていた相手が現れた。少年は驚く以外にはない。思わず立ち上がりながら声を上げた。


「どうもね、学生君。なんだい大吾この子は?」

「僕は大吾さん弟子です!」

「ほう、お弟子さん?」

「俺は弟子とは認めたわけじゃないがな」

「あの大吾が誰かに師事する役になるとは……時代は変わるもんだねぇ」

「時代っつっても最終決戦から半年しか経ってないがな」

「そうだね」

「それにしても真守」

「なんだい?」

「俺の記憶が間違っていなければそれは陸上保安庁の中で二番目に偉いヤツが着る服だが、それはコスプレか?」

「いや、正式に僕に支給されたものさ。それともう一つ間違ってる」

「間違ってる?」

「僕は陸上保安庁次長次席。正式には上から三番目だね」

「……陸上保安庁次長次席」


 少年が思わず同じ言葉を呟いた。


 陸上保安庁とはこの国の国土の治安を維持する警邏組織の総称である。


 今から十数年前、元々存在していた警邏組織は様々な紆余曲折の果てに完全解体され、この組織が新創設された。


「まぁ次長の次席だけど立場的には長官(一番上)とほとんど変わらないんだけどね。そしてそうじゃないと意味が無いし」


 真守の入庁後、本当はすぐ下の階級である一等陸上保安監のように甲乙で区別しようとはされたが、もともとの次長が自分の役職の下に甲を付けるのを嫌がったのでこうなった。しかし二人の次長は基本的には同格であり、真守の方には長官代理という立場をいつでも発動できるという特権がある。次長が二人いるのは、単純に真守が普段から陸保に居ないという理由であるし、先達たちが長年築いたプライドの問題でもある。


「そのまま長官でも良いだけどね。そう言う面倒くさい仕事は面倒くさい仕事をやりたい人にやってもらった方が良いからね。僕たちは大体機動力がないと仕事にならないし、陸保にもそれほど長居をする訳じゃぁないからね」

「お前が農家を辞めて再就職したって話は聞いたが、まさか国家の手先になっていたとはな」

「手先か……中々に辛辣な言葉だね。でも僕は僕なりに考えて僕なりに決めたのさ。僕たちにとって一番の平和な時間を作ろうって」

「平和な時間か……」


 大吾が感慨深げにその言葉を繰り返す。


「おまえが自分自身で決めたおまえの行動にとやかく言うつもりはないが、今日ここに来たのはそんな再就職先の自慢に来た訳じゃないだろう?」

「さすが大吾、いや、レッドセンシャー。相変わらず勘が鋭いね」


 そう言う真守の目も鋭い光を帯びた。


「大吾をスカウトに来た」

「スカウト?」

「新たに創設されるこの国の海兵隊のトップとして」

「……」


 この国が自衛隊三軍の他に、新たに四つ目の軍「海兵隊」を創設しようとしているのは、大吾も知っていた。


「専守防衛の意に反してないか?」


 海兵隊と言う組織は、敵国湾岸線への敵前上陸が前提となる軍組織である。敵から攻撃を受けた後と言う形でしか戦ってはならないとされているこの国の防衛思想とは、全く相反する組織形態になる。


「もうそんなことを言っていられる状況でもないってのは大吾だってわかるだろう、大吾だって当事者の一人だったんだから」


 しかし戦車戦隊と鉄車帝国の戦いが全てを変えてしまった。


 自国内での水際戦闘であれば、海兵隊の創設も容認されるような状況となってしまっていた。それほどの脅威が半年前のこの国にはあったのだ。そしてその半分はまだ残っている。


「それのトップに俺がなるのと、おまえの僕なりの考えはいったいどこで繋がるんだ?」


 詳しい説明を受けても、少しも納得した様子を見せない大吾が言う。


「海兵隊ができてこの国が四軍となったら、その一つ一つに僕たちが入る。つまり一軍に一つずつ僕たちの力が加わることになる。そうすれば四すくみの状態になって均衡が取れるようになる」


 一つの軍が戦車戦隊の隊員を一人一人手にする。


 まがりなりにも手元に置いておければ、脅威としての危険度は下がる。その為には陸海空の三軍では足らずに、新たな四つ目の組織の創造が必要となった訳だ。


 そしてそれは大吾の加入によって完成するという。


「それで完璧さ。もうコソコソ逃げ回る必要も無い」

「コソコソもしてないし逃げ回ってもいないぞ俺たちは」

「でもコソコソ逃げ回っているようにしか見えないだろう、他から見たら」


 この公園で過ごす大吾も、移動販売のカレーショップを営んでひっそりと暮らしている亜希子とてももの二人も、三人が胸に秘めた想いを知らなければ、世を忍んで隠れ住んでいるようにしか見えないだろう。


「どうだい大吾、僕と一緒に来る気にはなったかい?」

「……凄ぇ理にかなった素晴らしい計画だな」

「そうだろう? だからキミがまずは海兵隊の――」

「だが、イケすかねぇ」


 真守の言葉を大吾がバサリと切った。


「色々言いたいことはあるが、席が一つ足らねえのが一番気に食わないな」

「火雪の席か。キミならそう言うだろうと思って用意はする計画だけど、今はまだ無理だね」

「そう言ってだまして釣るつもりか?」

「判断はご自由に。まぁ大吾なら素直にウンとは言わないだろうことは考慮済みだったけどね。だから計画はフェーズ2へ移行する」


 そういって真守が何かを呼び寄せるようなジェスチャーをする。


「なんだい、なんかおっぱじめようってのか?」

「ああ、おっぱじめるよ。キミのことを再起不能にしてこの国の国土海兵隊長官という檻の中に閉じ込めておく。これが第二計画」


 遠くの方からローターブレードの回転音が聞こえてきた。


「この国も自分の土地で戦いが続いてるってのに、ずっと手をこまねいていた訳じゃないんだよ。本来は自分たちが守るべきはずだからね、この国土は」


 回転音は徐々に大きくなり、爆音と呼べるほどの音になる。


「だからこの国も僕ら戦車戦隊に変わる正義のヒーローを作ろうとした」


 爆音の正体が現れた。家並みのすぐ上の地上スレスレを、二基のエンジンをフル回転させて一機の垂直離着陸機が飛んでくる。


「ただ残念なことに、新たなヒーローを作るのは失敗しちゃったんだ」


 双発垂直離着陸機――オスプレイは、公園直上までくるとそこで静止した。


「でもその代わり『怪人』を作ることには成功したんだよ」


 オスプレイの後部ハッチが開き何かが投下される。空中に投げ出されたそれはパラシュートを広げて降下してきた。そして地響きを上げて三人の近くに降り立った。


「これが陸保が誇る、対鉄車帝国戦車怪人兵器、戦車鉄人さ」

「……戦車鉄人」


 戦車怪人と同じように戦車鉄人と呼ばれるものも、戦車が立ち上がったような形をしていた。背面であった部分に足首しかない脚、キャタピラを回す転輪から生えた両腕、車体前面であった部分に乗っている頭部。


 怪人は頭と手足はどことなく生物っぽかった雰囲気があったが、鉄人にはそれが全く無い。その名の通り完全なるロボット兵器なのだろう。


「タホートー!」


 戦車鉄人が雄叫びを上げた。背中から複数の砲身が覗いていて、蠢いている。多砲塔戦車の怪人――否、鉄人であるらしい。


「さぁT35兵、いけぇ!」

「タホートー!」


 T35兵が一歩踏み出す。戦車鉄人より重量があるのか歩くたびに軽い地響きが起こる。


「パワーだけはありそうだな」

「そうだね。僕の変身スーツで最終調整をしているから、掴まったらいくら変身後の大吾だって骨くらいは折れる。さすがに大吾だって両手両足の粉砕骨折くらいになれば何もできないだろう」

「どうせならサクッと殺してくれた方が嬉しいがな」

「僕は素直に死を与えるほど優しくないよ」

「そうだったな」


 大吾はそう言いながらポケットから変身道具を出した。それと同時に少年も頭にリンカーンを乗せて後ろに下がるといういつもの行動を取る。


「変身!」


 変身道具をかざし、大吾が光に包まれる。そして光が消え去った時、赤き戦士が現れる。


「変身完了、レッドセンシャー!」

「タホートー!」


 T35兵が横を向いた。背に背負った砲塔の内、片側に向けられる三門が旋回する。そして発砲。一挙に三発の砲弾が大吾=レッドの周りに着弾した。


「うわっと!?」

「タホートー!」


 実際の多砲塔戦車は戦艦の砲塔のように統一射撃指揮ができないので、実戦ではほぼ全く役に立たなかったのだが、戦車鉄人であるならば体の一部として全体射撃が可能になるので非常に有効な武装となる。


 この国が人造怪人のベースとして多砲塔戦車を選んだのは理にかなっている様だ。


「まったく、前回といい今回といい、弾幕張りゃあ良いってモンじゃねえぞ! 行くぞ、戦車召喚!」


 前回の150トンセミトレーラー戦車男ほどではないが凄まじい弾幕の中、レッドが戦車を召喚する。


 そして時空が歪み光の中からまろび出る一台の戦車は、レッドにとっては愛車となりつつある一号戦車だ。


「一号戦車変身!」


 更に間髪入れずに変身をコールする。車体上部が光に包まれると二連装機銃の砲塔が消え去り、変わりに重厚な火砲が一門載せられた。


「変身完了、一号7.5cm対戦車自走砲!」


 一号7.5cm対戦車自走砲とは、一号戦車B型に三号突撃砲用の48口径75mm突撃砲を搭載したワンオフの現地回収車両である。そしてベルリン攻防戦に投入される。


 その火力は一号戦車改造バリエーションの中ではナンバーワンなのだが、当時のベルリン戦は博物館に展示されていた第一次世界大戦時代のマーク4戦車を引っ張り出して戦列に並べてたような有様なので、多分実際にはこの程度ではなく、もっと恐ろしげな現地改修魔改造車両があふれていたと思われる。


 しかして記録に残る車両としては本車が最強の破壊力を誇る一号戦車バリエーションだ。


「とう!」


 レッドが車体の上に飛び乗る。


「大概の攻撃は射撃か投擲、そして――一撃必中だ!」


 レッドが右手をかざして、一号7.5cm対戦車自走砲最大にして一号戦車バリエーション最強の武器をコールする。


「セブンポイントファイブセンチバレットフォイエール!」


 そして直訳すれば7.5cm砲弾発射の声に送られて砲弾が飛んでいく。今回は最後だけ微妙に独語なのはその日の気分次第なのだろうか。


 発射された砲弾は願いたがわずT35兵に直撃、元々が多砲塔戦車は装甲が薄いので戦車鉄人であっても耐えることもできず、そのまま爆発四散した。この辺りが多砲塔戦車の弱点でもあり、人造怪人の限界なのかも知れない。


 爆煙が晴れるとそこには様々な部品が転がっていた。戦車鉄人は内部は機械の塊なので、中の人が正義に目覚めることも無く、無残な最後である。


「さて、簡単にやっつけちまったが、どうする、残りはお前だけだ?」


 レッドはためらい無く、自走砲の砲門を真守の方へと向けた。


「なーに、この程度は想定内だよ。今日は挨拶に来たようなもんだしね」


 対戦車砲に狙われても真守は動じた風は無い。この辺りはさすが元戦車戦隊だ。


 すると先ほど聞こえたローターブレードの音が再び大きくなって、オスプレイが降下してきた。後部ハッチがまた開いて今度は縄梯子が下ろされる。ちょうど手を上げた所に来たその先端を真守が掴むと、オスプレイが上昇する。


「今日のところは失敬させてもらうよ。また来るよ、大吾!」

「……」


 非常に鮮やかな脱出を見せた真守を、変身したままの大吾は無言で見送った。

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