No.9 バイト先の自習スペース
体育大会が終わり、期末試験前になった。
バイトをしてるパン屋さんは2階を学生向けの自習スペースとして開放しており、ドリンクとパンを1つ買えば誰でも利用可能となっている。
私もバイト前後に店主のご好意で使わせてもらうことが多い。
しかし、最近ここに居座ってるのがいる。
『そこの店員さん。苺ミルクお代わり。』
『‥はい』
ヒラマサだ。
『お客様。何故このような場所に?予備校内にも勉強できるスペースはあるでしょう。』
『自由に飲食しながら勉強できるスペースなんてないよ。それに、ここの自家製イチゴミルクが俺は好きだ。』
『あ、そうですか。』
にしてもいつも来たら苺ミルク3杯とパンを食べていく。バイトもしてなさそうなのに、お金持ちだな。
ここの苺ミルクは確かに美味しい。
地元の農家さん直送の苺を使い店長が一つ一つ丁寧に作成している。一杯600円だ。
それをまるで水のように飲みやがって‥高校生の分際で‥。
予備校に通わせてもらえるぐらいだし、やっぱりそれなりに裕福で賢い家系なのかな。
お姉さんの杏奈さんも生徒会長で成績学年一位って聞いたし。
一階に降りて、厨房に入る。
そこには恰幅の良い体つきをした40代の店長がいる。またラグビー選手らしく強そうだ。
パン屋の仕事は力仕事だから筋肉があるのも納得だ。
『店長、4番卓に苺ミルク一つ入りました。』
『はいはい4番卓ね。彼、最近いつも来てくれるよね』
『そうですね、』
『佑々木さんの同級生なんでしょ?』
『はい。一応。』
『彼氏とか?』
『ちがいます!!』
『あらそうなの?いつも仲良しそうに話してるから彼氏なのかと思っちゃった〜!』
『仲良くありませんし』
『えー‥でも、彼は佑々木さんのこと好きだったりして!』
『ないですね』
『えー!』
このおっちゃん店長は、強面な見た目に対して乙女心がありとにかく恋バナ好きなのでこういう色恋話になんでも持って行きたがる。
良い人だが、こういうところがたまに面倒だ。
ちなみに奥様は超絶美人。
店長が作ってくれた苺ミルクをおぼんに乗せて二階に運んでいく。
『はい、苺ミルクおまたせました。』
『ありがとうございます。そういえば、もうすぐ試験だろ。ちゃんと勉強してんのか佑々木。』
『してます‥』
『最近、LINEこないから勉強してないのかと思ってたわ。』
『まあ、それとこれとは別』
『ちゃんと捗ってんの?』
『もちろん』
『んじゃ次のテストでは100点だな。楽しみだ。俺と点数勝負でも賭けるか?俺が買ったらお前が苺ミルク奢る。お前が勝ったら俺が奢る。』
『絶対嫌。奢らされて終わりじゃん。』
『なんで負ける気なんだよ。勉強捗ってるんだろ。まさかまぐれの76点で満足してるんじゃないだろうな?』
『失礼な!次はもっと良い点数取るわよ。まぐれじゃないしね!実力だしね!』
実は、あまりヒラマサにLINEすると真緒に悪いと思ってLINEを控えている。
真緒に何か言われたわけではないが、やはり好きな人が異性と連絡を取るのをよく思わない人もいるだろう。
ヒラマサにラインするのは最終手段だ。
『それに、ヒラマサに頼ってばかりじゃだめでしょ。自分で勉強して、自分の力で高得点を狙いたいの。』
『ふーん。ご立派なことで。赤点取ってた人とは思えないな。』
『うるさい‥』
『まあ、頑張れー。分かんないとこがあればいつでもLINEしてくれれば良いから。んじゃ』
『ありがとう』
良いやつなのだか、悪いやつなんだか。
カウンターに戻ると店長がやってきた。
『佑々木さん、もう交代の時間だよ。お疲れ。
残ったパンを適当に袋詰めして更衣室前のテーブルに置いてあるから持って帰って良いよ』
『やった!ありがとうございます!』
更衣室に入ってスマホを見ると、真緒からLINEが来ていた。
《13日にカフェかどっかで勉強したいな♪》
13日か‥、
シフトを確認すると出勤になっていた。
《13日はバイトだ。ごめんなさい。他の日ならいけるし、その時に行こう!》
そう、真緒に返信して着替えてバイト先を出た。




