No.8 告白
チア服から私服に着替える間もなく、恥ずかしいので上からジャージの服を着て障害物競走の観戦をすることになった。ズボンも持ってくればよかったな‥。
真緒は、ヒラマサを観るために観客席の最前列でワクワクしながら目を輝かせている。
『ねえねえ、花!ヒラマサ何走目かな?』
『さぁ‥ていうか、運動音痴って言われてたしあんまり見てあげない方がいいんじゃない?』
『そんな可愛いとこも見たいの!』
柳田が1走目だった。
障害物競争はまずぐるぐるばっとから始まり、平均台、ハードル、網潜りからの50メートル走になっている。
案外しんどいので不人気な種目。
そして。柳田は涼しい顔でダントツで一位。
『バカだけど、運動はできるわよね』
『ねー』
柳田雄大は、勉強は苦手だけど、運動能力は高く、顔もジャニーズ系の可愛い顔立ちをしている、身長も173cmと平均並みで細マッチョな筋肉質。
愛嬌があって人懐っこく、男女共に友人が多い。
本来モテるのは彼のような人を言うのだろう。
その証拠に柳田が走るたびに黄色い歓声が聞こえる。
一方のヒラマサは、最下位だった。
5人で走るが、4着よりも30秒ほど遅れてゴールした。ゴールと同時にトラックに倒れ込んで先生たちが駆け寄ってきて生存確認している。
『可愛いとこ見れた?』
『最後まで走り切ったのよ!!十分じゃない!!100点よ!!』
『お母さん目線?』
『感動ものだわ‥』
真緒ちゃんの御涙頂戴できたところで昼休憩に入った。
チア服からジャージにやっと着替え終えた。
昼ごはんは各自弁当や買ってきた軽食を食べる。たまにはいいよねーということで、クラスの女子たちと一緒に食べることにした。
『柳田めちゃかっこいいよね』
『あんなかっこよかったっけ?』
『でも、西岡も足早くて良くない?』
『確かにね!顔も悪くないし!』
女子たちは体育大会で活躍した男子たちの意外なイケメンさに釘付けになっていた。
『真緒の好きなヒラマサはヘロヘロだったね』
陸上部の千佳ちゃんが真緒に声をかける
『そんなことないわ!最後まで走り切ったことが大事なのよ!』
『お、さすが、学年一のヒラマサ推し。』
『でも、学年成績ナンバーワンでいつもクールなヒラマサがあんなヘロヘロになるとこってなかなか見れないし、ギャップ萌えみたいなのは分かる気がする!』
『え!?ほんと!?そうでしょ?可愛いでしょー!?』
『同担歓迎タイプなんだ!』
『真緒ちゃん心広いですからね!』
色々な感性の人がいるなーと思い作ってきたおにぎりを食べる。シンプルに運動できる方がカッコよく見えるけど‥。西岡は別として。
クラスメイトからもヒラマサの人気はそこそこあった。スタイルも良くて眼鏡をしてるせいで分かりにくいが顔もイケメンだ。なんせこの進学校で学年一位の首席入学。特待生だ。そして、みんな勉強を教えて回る頼れるお兄ちゃん的な存在。モテる要素は十分だ。
『午後からは学年別リレーと色別の選抜リレーだね!』
『そりゃ我ら赤組の勝利です!』
『今の所緑が優勢だけどね』
『リレーだけでも勝てたら実質勝利よ!』
『そうだ、花。西岡がリレーで優勝したら‥』
『それ以上言わないで』
『え、なになに?花と西岡がより戻すの?』
『もーその話はやめてよ!戻さないから!』
千佳ちゃんがめんどくさい情報を出してきた。そして、それに対して周りもガヤを飛ばしてくる。
最悪だ。
そして、嫌な予感はしっかりと当たってしまった。
《アンカー緑組の西岡に渡りました!そして、おおっと!青組を抜いて‥そのままダントツゴール!!緑組の勝利!
学年別リレー2年の部は緑組の勝利です!》
うわ‥最悪。
『ちゃんと優勝しちゃったじゃん。』
『‥言わないで、真緒ちゃん』
『大丈夫だよ。西岡に何かされそうにならないように私がそばにいるよ』
『ありがとう、心の友‥』
そして、そのまま真緒とトイレに行き、その帰りだった。
『大石、待ちなさい。』
『ゲッ、石田先生じゃん』
『お前、ピアスつけてないか?』
『えー外してきてるし‥透明ピアスしかつけてな‥あ。』
『んじゃそのピンク色の派手なハートのピアスはなんだ?』
『あ、えっと‥チアの時に可愛くて付けてて‥あー!外すの忘れてたーー!!なんちゃって!てへぺろ!』
『こっちに来なさい。』
『ええーー!無理!無理!一回話し合おう!石田先生ー!』
『はいはい、こっちで話し合います。佑々木は先に戻ってなさい。』
『‥はい。』
『えーん!花ー!助けてー!』
そのまま真緒は生徒指導室へ連れて行かれた。
可哀想に。ピアスつけてること早めに言ってあげればよかったな。でも、あの感じだと気づいてたな。
『佑々木。』
後ろから聞き覚えのある声。
そっと振り向くと、西岡隼人がいた‥。
『‥西岡。何?』
『‥話があるんだけど、今ちょっといい?』
『何の話?ここじゃダメなの?』
『2人で話したいんだ。』
『私は話すことない。』
体育館の裏にある廊下で、私と西岡以外誰もいない。
静まり返った廊下、遠くの方から歓声やがやがやとした賑やかな話し声が聞こえる。
沈黙が走る。このまま気まずくなって帰っていってほしい。何の話かは大抵想像つく。
西岡は真面目で顔に出やすいタイプだからとても分かりやすい。
そう、今から告白します!って顔をしている。
『佑々木。好きだ!』
『知ってます。』
『え、そうなの!?』
『あんた、みんなに言いふらしてるでしょ。みんな口軽いんだから変に言いふらさない方がいいよ』
『陸上部の奴らにしか言ってない‥』
『陸部のやつにも言うなって言ってるの。ただでさえ分かりやすいんだから。』
『そうなんだ。ごめん‥』
『はい。分かればいいんです。』
また沈黙が走る。
『より戻せないかな?』
『無理です。』
『なんで?』
『好きじゃないから付き合えない』
『他に好きなやつとかいるの?』
『いないよ。いないけど、好きな人じゃないと付き合いたくないの。』
『‥。試しでもいいから』
『それで一年の時に付き合ってだめだったじゃん。もう諦めてほしい。』
『‥分かった』
『(ん?諦めがいいな‥) 分かればいいの』
『夏の大会で優勝したら、秋の修学旅行の自由行動は俺と一緒に回ってくれない?』
『‥その約束。私になんのメリットがあるの?』
『だめかー』
『そりゃそうでしょ。流れを汲みなさいよ。』
『俺さ、でも‥本当に佑々木が好きなんだ。』
『うん‥ありがとう』
『前みたいに一度だけでいいから、手とか繋げないかな?』
『無理かな』
『握手は?』
『無理かな』
『頼む!佑々木!抱きしめさせてくれ!』
『無理!きもい!もう私、帰るから!』
『あーちょっと待って!佑々木!』
西岡が私の腕を掴んできた。
『離して!』
『頼む!もう少しだけ話を聞いてほしい!』
『なにしてんの』
声がする方を見ると、そこにはヒラマサが立っていた。
冷めた目でコチラを見ている。
嫌なとこ見られた‥。
『たまたまトイレから出てきて、途中から見てたけどさ、めちゃくちゃ嫌がってるじゃん。』
『‥平井には関係ないだろ。』
『関係ないけど、明らかに嫌がってる上に危害を加えようとしてる現場を見たら止めないわけにはいかないだろ。』
『俺は危害は加えない。話がしたいだけだ。』
『とにかく佑々木から手を離せ。』
思わぬ救世主にホッとする。どうしよう、不覚にもヒラマサがカッコよく見える
『‥わかったよ。』
西岡は、名残惜しそうに手を離した。
『お前がしてることはストーカーと同じだぞ。訴えられたら負けだからな。』
『ストーカーなんてしてない。それに、お前には関係ないだろ。』
『別に西岡が誰が好きとかどうでもいいけどさ、離してって言われてんだから離せよ。自分より体もデカくて力強い奴に無理やり腕掴まれたら怖いに決まってんだろ。佑々木はただでさえチビなんだから。』
『ヒラマサ、ありがとう。‥チビ?』
『たっく‥もう話はいいのか?西岡』
『え?』
『このまま2人で話し合いは危ないだろうから、俺が同席するよ。話があるんだろ?言えよ』
『‥もういいよ』
『あっそ。んじゃ佑々木行くぞ。』
『え、あ、うん‥』
『待ってよ、2人とも』
西岡がヒラマサと私を呼び止めた。
『‥最後に一つだけ聞きたいんだけど、2人は、付き合ってんの?』
『『付き合ってません。』』
『‥あ、そう。』
そういってその場を離れた。
『ねえ、ヒラマサ。助けてくれて、ありがとう』
『別にいいよ。ただのカップルの痴話喧嘩ならそのままスルーしようと思ってたけど、佑々木が西岡のことをゴミを見るような目で見て明らかに嫌がってたし。』
『そんな顔してたかしら‥?』
『してたねー。』
『うっ‥』
『まあ、でもしつこすぎる奴は嫌われるからな』
『そうよね!』
『あからさま過ぎるやつも好かないな』
『‥ん?』
『心当たりあるならちゃんと見て抑えろよ。』
『えっ‥』
『んじゃな。』
間接的に注意された気がする‥。
頭をよぎったのは、ヒラマサ一色のふわふわパーマの私の可愛い天使。
『‥以後気をつけます。』
やんわり止めるようにしよっと。




