No.7 体育大会
体育大会当日。
チアリーダーの格好をしてダンスを踊るターンがやってきた。チアリーダーの格好は毎年デザインして作り替えているようだ。デザインやスカーの丈の長さ、長袖長ズボンに至るまでまだ‥それなのに。
ワンピース型のミニスカートのチアの衣装だ。
『思ったより丈が短い気がする』
『大丈夫似合ってるよ!』
『恥ずかしい‥』
『みんな着てるから大丈夫!』
真緒は抜群のスタイルで見事に着こなしている。
ふわふわの茶髪は、ツインテールにしてもボリュームがあって可愛い。
巻き髪ツインテールなんて少女漫画に出てくるお嬢様でしか見たことないのにとてもよく似合っている。
私も一緒の髪型にされそうになったがどうにかお願いしてポニーテイルにしてもらった。
そして本番の演技タイムが始まり、なんとか踊り切ることができた。
写真撮影タイムも終わったのでさっさと着替えることにする。
『あ、チアだ!やっほー!』
『本当だ』
『ゲッ』
『きゃー!!ヒラマサじゃん!あと柳田〜!』
障害物競走の控え場所に向かうヒラマサと柳田と会ってしまった。
真緒が自信満々にチアの衣装でポージングをしている。可愛い。
花は、羽織っているジャージのチャックを上まで閉めた。スタイル抜群の真緒と並ぶと貧相な自分の身体が恥ずかしくなる。気まずそうに後ろに隠れる。
『どう?ヒラマサ!柳田!うちら可愛いでしょ?』
『良いじゃん!似合ってるよー!案外似合うもんだねー!』
『馬子にも衣装ってやつだな』
『‥どういう意味?』
ヒラマサの言葉にピクッと眉毛を動かして、顔を近づける真緒。
ヒラマサは特に表情を変えることなく、飄々としている。
『あれ?言葉の意味分からない?』
『‥喧嘩売ってるの?って聞いてるの』
『はいはい、よくお似合いですよ。お二人とも。』
『やったー!ヒラマサも障害物競走頑張ってね!』
『おう』
‥おやおや、ヒラマサと真緒がなんだか良い感じの雰囲気だ。ヒラマサもフッと笑っている。
2人を邪魔しないように柳田に声をかける。
『あれ、柳田はリレーでしょ?障害物競走も出るの?』
『まあね、欠席者が出たから代わりに俺がでるんだよ。てか、2人ともめちゃ可愛いじゃん!せっかくだし一緒に写真撮ってよ!』
『あらあら〜いいわよ!』
『え』
『ヒラマサも一緒に映ろ!』
『え、あぁ、良いよ。』
なるほど、ヒラマサとの写真をゲットするためか、なら仕方ない。真緒の為に協力しよう。
『はいチーズ!』
4人で写真を撮った。
黒歴史だ。どうかこの4人の間だけで静かに処理されることを祈るしかない。
『あ!将生だ!』
遠くからヒラマサに駆け寄ってくる美少女。
シミひとつない色白の肌に長い黒髪をポニーテイルにしている。高身長に長い手足。
切れ長な瞳に真っ直ぐ整った鼻、
モデルのような立ち姿。
あ、あれは‥
『あの時一緒にいた謎の美女!!!!』
『声大きいよ!真緒!』
『なんだよ。びっくりすんじゃん。』
『今から障害物競走でしょ?運動神経悪いのに大丈夫なの?』
『余計なお世話だっての』
『あ、そうだ。ぐるぐるばっとあるし、酔い止め飲んでおかないと吐いちゃうでしょ。これ飲んどきな!』
『ありがとう』
親しげに話す2人を見て立ち尽くす真緒。
そして、それを黙って見つめる花。
すると、柳田は花と真緒の2人の反応を見つめてニヤニヤしている。
そして、ちらっとヒラマサと謎美女の方を向くと声をかけに行った。
『あ、杏奈さんじゃん!久しぶりっすね!』
『柳田君もひさしぶり!変わらないね〜、こっちの2人は友達かしら?』
『どうも‥』
『‥コンニチハ』
『こんにちは!3年の平井杏奈よ!よろしくね!いつも将生がお世話になってます〜♪』
『やめろよ』
『アンナサン‥ヨロシクオネガイシマス‥』
『‥ん?‥平井?もしかして、杏奈さんって』
『そうです!将生のお姉ちゃんです!』
『お姉さまッ!!!??』
真緒の瞳に正気が戻った。
『こんなに綺麗なお姉さんがいらっしゃったなんて知りませんでした!!!!私、2年1組の赤石真緒っていいます!よろしくお願いしますッ!!』
『えー嬉しい!ありがとう!!真緒ちゃんっていうのね!可愛い子ね!よろしくねー!!』
『言われてみれば、ヒラマサと少し似てる‥』
『似てない。』
花の言葉に被せるようにバシッと否定してきた。
珍しくヒラマサが顔を赤くしている。家族をみんなに見られて恥ずかしい思春期の男の子といった顔だ。
『姉貴もこんなとこで話しかけてくんなよ』
『ごめんってー!可愛い女の子に囲まれてるから彼女でもできたのかと思って見にきたのー』
『余計なお世話、早く向こう行けよ!』
『はいはい〜♪んじゃあねみんな♪』
そういうと、お姉さんは手をひらひらさせながら走り去っていった。
酔い止めをヒラマサに渡しに来たのと茶化しに来たのを達成したので満足そうだった。
『ヒラマサはお姉さんなんていたんだね!』
『まあ‥んじゃ俺たちは障害物競走に行かなあとダメだから、ほら、雄大行くぞ。』
『んじゃあなー!また後で写真送るわ〜!』
『うん!よろしく!早く送ってね!』
『頑張れー』
ヒラマサも気まずそうに走り去っていった。
柳田はいつも通りのお調子具合だった。
あいつ絶対知ってたのに、あえて知らないふりしてたな。
『花!杏奈さん綺麗だね!あんな素敵なお姉さんがいるなんてヒラマサすごい!!!きっと家族みんな美人なんだよ〜!!』
『うーん、ヒラマサがすごいというか、杏奈さんが美人なのは、杏奈さんがすごいのでは?』
『てか!障害物競走の応援行かなきゃー早く観客席に行こう!』
『え?着替えは!?』
『そんなの後でいいよ!早く早く!』
『えええーー』
そのまま着替える間もなく、真緒に手を引かれるまま観客席へ戻っていった。




