謝罪
和紗の家に来て、1週間が経過した。
流石にずっとここにいるのも申し訳ない気持ちが出てきたのでそろそろホテルを取ろうか悩んでいたが、和紗が気にしなくていいと釘を刺してきた。
優しさに感謝する気持ちもあるけど、やっぱり申し訳ないな。
実家に帰ろうかな。お母さんに何か言われそうだし、なにより弟二人にも色々詮索されそうで嫌だ‥どうしようかな。
そんなことを考えながら和紗の家で食器を洗う。和紗はお風呂に入っていった。
横に隼人がいて、皿を拭いている。
『なあ、花。』
『‥何?』
隼人が花の手を握ってきた。
泡まみれの花の手を濁るので、隼人の手も泡で汚れてしまう。
『手、泡ついたよ』
『‥俺の家来ない?』
『‥隼人の家に行ったらダメでしょ。』
『な、何もしないよ。』
『うそでしょ』
『‥やっぱりだめ?』
『もう当て馬扱いは嫌だって言ってたじゃん。別れる時に。』
『‥』
『今、行ったら。また当て馬になるよ?』
『‥花がそれでもいいなら』
『嫌だよ。だから行かないの。』
『‥。』
『ごめん。』
『‥やっぱりヒラマサが好きなのか?』
『分からない。』
『‥これからどうすんの?ずっと和紗の家にいるわけにはいかないだろ。』
『今日、帰るつもりだから。』
『え‥そうなの?ヒラマサのとこに?』
『うん。』
『そ、そうか‥仲直りするの?』
『将生次第かな。』
『へー‥そっか‥。』
『‥』
『俺の家ならいつでもいいよ。』
『‥しつこいよ』
『何もしないから!』
『‥隼人も物好きだよね。なんで私なの?』
『‥仕方ないだろ。そんなの俺に聞かれても分かんないよ。』
『はぁ‥家に帰るよ』
『ひ、ひらまさだって浮気してたんだから、花が俺の家に寝泊まりするくらい良いだろ?』
『‥』
『それにもうさ、友達じゃん?』
『友達‥ね。』
『うん。』
『考えとく。とりあえず今日は家に帰るから。』
『‥そっか。』
数分後和紗がお風呂から上がってきた。
『花、今日帰るんだよね』
『うん。ごめんね.迷惑かけて。私も頭冷えたよ。』
『良いけど‥ヒラマサはどうするの?』
『んーなんかもうあんなシスコン男もう知らない。別れるわ!』
『『ええ!?』』
『んじゃ!またくるね!』
『ええ!ちょっと待ってよ!花!』
『そうだよ!一回話し合おう!』
『もう二人に迷惑かけられないからさ!ありがとうね!』
そういうと、和紗に宿泊費として7万円を渡して花は家を出た。
『‥花のやつ、本気なのか?』
『さあ‥どうだろうね』
『大丈夫かな。てか、別れるなら俺の家でもよくね?』
『シンプルにあんたが嫌なんじゃないの?』
『は!?』
『まあ、とりあえず。実家に帰るみたいだし大丈夫でしょ。もういい大人だしね。』
『ええ‥』
『あんたも早く帰りなさい〜』
『分かったよ‥』
そのまま解散した。
マンションの前まで行くと、後ろから声が聞こえた。
『花!』
振り返るとそこには将生が立っていた。仕事から帰ってきてずっと待っていたのだろう。仕事のときに着ていくジャケットのシンプルセットアップのままだった。
『‥久しぶり』
『帰ってきてくれて‥ありがとう』
『別に‥許した訳じゃないから』
『分かってる‥家に入ろう。』
『うん。』
マンションに入ると中はとても綺麗に片付いていた。
埃一つ落ちてない綺麗に磨かれた床。
キッチンにある鍋の中には私の好物であるおでんが用意されていた。
『夕ご飯作ってくれてたんだ。』
『あ‥一応.ご飯いるかなと思って‥』
『‥そう、ありがとう』
『‥』
『‥』
また沈黙が走る。
『花、本当に申し訳なかった。』
将生は、その場で頭を深く下げた。
『‥戻ってきてくれて本当にありがとう。本当に心配をかけて、辛い思いをさせてごめんなさい。』
『申し訳ないって思ってるんだ。菜月ちゃんはどうしたの?』
『もう二度と来ないように連絡した。それからはもう来てないし、連絡も来てないよ。両親にも説明して、向こうのご両親にも注意してもらえたよ。』
『菜月ちゃんとは、どういう関係?』
『従姉妹だよ。ただ、菜月は俺のことが好きだったらしくて、昔、子どもの時に結婚する約束を口約束でしてしまったんだ。そこから本当に懐いて離れなくなってしまって、突き放すのも可哀想でできなかった。けど、それで花を傷つけてしまってたら元も子もない。情けないよ‥。』
『‥もう同じことしない?』
『しない。菜月の連絡先はブロックした。今後も部屋には一切入れないことを親族にも伝えた。』
『‥』
『あと、これ‥』
ヒラマサは、花にひとつの封筒を渡した。
『手紙‥?』
『花に向けて書いたんだ。もう二度と部屋に入れない。花の嫌がることはしないって紙に書いてある。本当に申し訳なかった‥。もう一度だけチャンスが欲しい。』
『‥ありがとう。次はないからね?』
『‥!!ありがとう!!』
すると将生は、花を強く抱きしめた。
『花がいない1週間は本当に辛かった。』
『‥私も。寂しかった。』
『もう二度とこんなことしない。』
『うん』
どうにか別れる危機は脱した。




