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和紗

1人で夜の街を歩いている花。

電話がかかってきた。

名前を見ると和紗だったので、電話に出た。


『和紗?』

『花。お疲れ。夜にごめんね、相談事って何かなーって思ってさ。今ね西岡からそろそろ花から相談されると思うからよろしくって言われてたのよ。』

『今?』

『そう。西岡と私と寺倉で今飲んでるのー!寺倉がヒラマサに花とおいで!って電話しようと思ったけど出なくてさ〜』

『そうなんだ。』

『‥何かあったんでしょ?よかったら今から来ない?現在地送るねー!』


和紗から送られて来た場所は、最寄り駅前の飲み屋さんだったので、そこへ向かうと3人で楽しそうに飲んでいた。

隼人に手招きされて、席に着く。


『珍しいね。3人なんて。』

『たまたま寺倉と2人でご飯行く約束しててね。仕事帰りに西岡に会ったから誘ったんだー』


寺倉が恨めしそうに西岡を見ている。

なるほど、そういうかんじね‥。


『ヒラマサと何かあったの?』

『え‥』

『同棲したての2人がこんな時間に別々で行動して、居酒屋に1人で来るなんておかしいでしょ?』

『‥まあ、ちょっとね。』


愛想笑いをしながら席に着く花。


『あ、すみません!ハイボールひとつ!』

『え、花、酒飲めるの?』

『大丈夫なの?佑々木さん無理しちゃダメだよ』

『いいの!もう飲めるから!』

『‥無理すんなよ?』


向かいの席に座ってる隼人が心配そうに見てくる。


『大丈夫。』


久しぶりのお酒を体に流し込む。

美味しい‥!!沁みる!!


『今日ね、入院さんが多くてさ、すごい残業してたからめちゃ沁みる!!』

『お疲れ様!たくさんのも!』

『うん!』

『気持ちはわかるけど、無理させちゃダメだよ』

『そうだそうだ』


4人とも薬剤病院関係者というだけあって話が通じるためか仕事の話でとても盛り上がった。


『あーもう、将生ほんとむかつく!』

『おーおーノってきたね』

『やっぱり将生と何かあったんだ。』

『あの菜月ちゃんってこもほんとなんなの!?』

『ブハッ!』


寺倉がお酒を吹き出しかけたむせこんでいる。


『大丈夫か!?』

『いや、全然。それよりも‥菜月ちゃん来てんの?』

『うん。寺倉知ってるの?』

『うん。あの、将生大好きな従姉妹でしょ?』

『そう。大学入学を機に上京して来たらしくて、私たちのアパートにほぼ住み着いてる』

『うわ最悪じゃん』

『え、なに、どういうこと?ヒラマサのいとこの菜月ちゃんっていうこが花たちが同棲してるアパートに住み着いてるの?』

『そう。』


すると、寺倉が和紗と隼人に説明してくれた。


『それがなかなかの曲者なんだよね。昔からとにかく将生のことが大好きでさ、大学の時も何度も会いに来てたよ。将生のアパートに押しかけたりとかしてて。泊まる場所ないっていうから泊めてあげてたりしてたみたいだけど』

『え、今も泊めてるの?』

『今は泊めてないよ。ただ週3から週5でやってきては夕ご飯までしっかり食べて帰るの。将生が家まで送るからって言って、夜中に家まで送ってようやく帰ってくれる感じ。』

『えー‥やば』

『仕事で疲れて家に帰ったら、そんな子の相手しないといけないのしんどいわね。』

『てかさ、ヒラマサは何も言わないの?』

『んー、なんか。何度か来る頻度が多いって注意してくれたけど、言い方も優しいからね。全く効いてないよ。』

『えーヒラマサって結構きついタイプなのに、従姉妹には優しいんだ?』

『なんか小さい時に結婚の約束してたみたいだよ。菜月ちゃんが言ってたんだけどさ』

『えー?いつの話よそれ!』

『菜月ちゃんが5歳で将生が11歳の時って言ってた。菜月ちゃんが言ってただけで将生は忘れてそうだったけどね。』

『小さい時の約束を健気に守って婚約者気取ってるの?』

『まあ‥そんなとこじゃないかな。将生はめんどくさがってたけど。』

『でも、大切な妹みたいな存在って言ってたよ』

『なにそれ浮気相手に言う常套手段じゃん!』

『そうなの?やっぱり浮気してたのかなー』

『やっぱりとは?』

『今日家に帰ったら2人がソファでキスしてるところ見たの。』

『はあ!?』

『えええ!?』

『残業で帰るのが遅くてさ、9時前ぐらいに帰宅したんだけど、玄関に靴があるから、菜月ちゃん来てるんだーと思って家に入ったら物音がして、ドアの隙間からリビングを見たらソファで菜月ちゃんに馬乗りになった状態の将生が菜月ちゃんにキスしてたの〜。笑っちゃうでしょ?』

『いや笑えない』

『笑えないな』

『笑えないよ』

『もーさ、ほんと無理!あのまま私が帰ってこなかったら絶対最後までしてたもん』


あっけらかんとして笑いながら話す花に困惑する和紗と隼人と寺倉。


『そ‥そ、そんなこと将生に限ってありえるかな?なにかハプニング的なものなんじゃない?』

『でも、将生からキスしてたし。それに、菜月ちゃんも上に着てたブラウスがはだけで胸元見えてたし、将生のズボンのベルトを菜月ちゃんがゆるめてるとこも見た。』

『ま‥まじ?』

『生々しい現場すぎる』

『現行犯逮捕だな。』

『うーん‥』

『寺倉がヒラマサを庇いたい気持ちは分かるけど、ここまで悪質だと擁護しようがないわ。親戚のことはいえ、同棲してる家に連れ込んでキスするなんて、そんでもってお互い服も脱ぎかけでしょ?確信犯じゃない。花、しばらく将生の家帰らなくていいよ!』

『だよね!』

『うん!私の家くる?』

『え、いいの?』

『うん!』

『やった!ありがとう!和紗!』

『あの花。別に俺の家でも‥』

『隼人は大丈夫』

『あ、そうですか‥』

『もう勢いで隼人に甘えるのはやめたの。』

『‥!!』

『気持ちは嬉しいけど、ごめんね。』

『全然いいよ。‥でもさ、またいつでも相談乗るし、行く場所がなくなったら全然来てもらってもいいから。』

『万年彼女なし男だもんね』

『やーい非モテ』

『はぁ?寺倉にだけは言われたくない』

『なんでだよ!本当にモテないやつにそういう話を振るのは筋違いだぞ!』

『なんでそうなるんだよ』


その日は日付が変わるまで飲んで騒いで。そのまま和紗の家まで帰り、眠ることができた。


ーーー。一方ヒラマサーーーーーーー


憔悴しきった様子で部屋に戻ってきた。

部屋に戻ると、菜月が服をちゃんと着た状態でソファに座っていた。


『‥まだいたのか』

『あ、あの‥ごめんなさい。菜月ね』

『帰ってくれないか』

『え‥』

『さっき約束しただろ。キスしたらもうここに来ないって。花に嫌がることしないって。』

『‥』

『ちゃんとキスしたんだから約束守って』

『‥私、将生お兄ちゃんのことがずっと大好きで‥大きくなったら、大人になれば結婚できると思って今まで頑張って来たんだよ。』

『‥』

『大学に合格するために猛勉強してきたの!やっと合格して東京に住めると思ったのに、彼女がいて同棲してるなんてひどいよ!昔、結婚してくれるって約束したじゃない!』

『‥俺は菜月のこと好きじゃない。小さい時の約束とか覚えてない。ごめん。』

『‥将生お兄ちゃん』

『帰って。』

『やだ。』

『帰れって言ってるだろっ!!!』

『‥!!』


将生は、菜月に背中を向けながら下を向いて部屋中に響き渡る声で怒鳴った。


『頼むから‥もう二度と来ないでくれ。』

『もういい!将生お兄ちゃんなんて大嫌い!!!』


菜月は部屋を飛び出した。

将生は、誰もいなくなった部屋でその場に座り込んで頭を抱えていた。


スマホが光っている。


花か‥?

スマホを見ると寺倉だった。そうだよな。

あんなことがあって出ていった直後に着信なんて入れるわけないよな。


どうしよう。どうやったら戻ってきてくれるんだ。弁明するにはどうしたらいい。


‥前、花は西岡に抱きしめられそうになった時にちゃんと手で押さえて拒否してた。

だから未遂に終わったんだ。

それなのに俺はめちゃくちゃ大人気なく怒って拗ねて‥なのに、今度は俺がやってしまった。

しかも、がっつりキスしてしまった。

お互い同意の上で、キスするところを見られた。

しかも、側から見たら明らかにキスだけで終わらなさそうな雰囲気だった。

仮に自分が花と反対の立場で、家に帰ったら西岡と花がそんなふうにキスしてたら‥想像したら体が震えるぐらい許せない状況だ。

なんてことしてしまったんだろう。


菜月は従姉妹だから、親戚のやつだからって油断してた‥6歳も年下だったから恋愛対象に一切なかった。

ただ懐いてるだけだと思ってた。

花も気にしないだろうって。甘かった。


なんで気づかなかったんだろう。バカだ。


花に会いたい‥。

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