菜月
菜月がしょっちゅうやってくるようになり、同棲生活を初めて3ヶ月が経過しようとしていたが2人の時間はとても少なかった。
土日は必ずやってくるし、平日でも将生が帰る前にきては部屋に上がり込んでご飯を食べて帰って行くこともあった。
『ねえ、将生お兄ちゃん一緒にお風呂入ろうよ!昔みたいに!』
『‥!!!』
『入るわけないだろ。飯食ったらもう帰れ。』
『えーおうちのお風呂壊れちゃったのー』
『嘘つくな。』
‥やばい。最近菜月ちゃんの積極性が群を抜いている。将生はモテる。今までも謎の女性にストーカーされたり、メール履歴でも食事誘いなどもたくさんきていたが全て断っていた。
それ見たら分かるように高校の比じゃないくらいモテていた。。
高学歴高身長そして、この甘いルックスで大手自動車会社のサーマルエンジニアであればモテて当然だろう。
だが、その中でも菜月ちゃんのアピールは群を抜いていた。
しかし、将生は昔から仲良くしている親戚の女の子の世話をしてる感覚なのだろう。
どこか突き放すにもぎこちなく、優しい雰囲気があった。
本気で嫌がってるわけじゃない。
菜月ちゃんもそれが分かってるからやってるんだろう。彼女としてそばでそれを見せられるのはきつかった。
同棲してるのに心の溝は広がるばかりだった。
仕事中。
病院内で馴染みの声が聞こえた。
『花!久しぶり!』
『あ、隼人。何してるの?』
院内を歩いていると、スーツ姿の隼人がいた。
MRバッジをつけている。
『先輩と一緒に附属病院に来たんだよ。仕事だよ仕事!』
『あ、そうなんだ。お疲れ様。』
『白衣よく似合ってるよ。俺も花と一緒に薬剤師として働きたいな‥』
『人手不足だからいつでも待ってるよ』
『まじで?考えとくわ〜‥なんか元気ない?』
『え?そ、そうかな。普通だよ。』
『なんか、先月からヒラマサと同棲始めたって和紗から聞いたよ。今1番幸せな時なんじゃないの?』
『そうだね。幸せだよ。』
『‥なんか隠してるな?』
『別に。早く仕事戻りなよ!先輩に怒られるよ!』
『あ!そうだ!そろそろ15分前だし先輩来るかも〜』
『でしょ?早く行って来なよ!』
『おう!行ってくる!‥なんかあったら連絡しろよ。相談乗るから。なんでも1人で抱え込むなよ。』
隼人は花の腕を持って、真剣な顔で言ってきた。
『‥うん。ありがとう。』
『よし!んじゃな!』
そのまま隼人は病院の玄関へ走っていった。
‥隼人に相談できない。隼人と連絡取り合っていたら将生が嫌な気持ちになる。
相談するとしたら誰だろう‥。
真緒は今仕事の研修でヨーロッパにいる。
和紗。和紗なら相談できるかも‥!!!
和紗に連絡してみよ。
《相談事があるんだけど、今度一緒にご飯で行かない?》
するとピロロん♪とメールが来た。
あ、和紗かな?早い!
と思ってスマホを見ると、将生だった。
《今日早めに帰れるから、ご飯作って待ってるよ。食べたいものがあればリクエストどうぞ。》
‥何がいいかな。今日も菜月ちゃん来るのかな。
こんなメールにも心から喜べなくなってしまった。将生と菜月ちゃんがいる家に帰りたくない。ゆっくり休めないからだ。
適当な理由つけて週末実家に帰ろうかな。
でもそしたら将生と菜月ちゃんが2人きりになって‥いやいや変な想像しちゃダメ。
とりあえずスマホをポケットを入れて仕事をして帰ることにした。
この日は夕方からの緊急入院が多かったためか残業が多く、なかなか帰れなかった。
まさかに帰るの遅くなるって連絡しなきゃ‥。
一方その頃。
《緊急入院で仕事で遅くなります。》
メールが来て1時間が経過し、時刻は夜8時30分になっていた。
『‥まだかな。花。』
『ねえねえ、もうご飯食べちゃおうよ!』
『1人で食べたらいいだろ。俺は病院まで花を迎えに行くよ。ていうか、もう帰れ。そして、しょっちゅう来るのも、やめろって何度も言ってるだろ。』
『なんでよー!お兄ちゃんのこと追いかけて上京して来たのに冷たくない?』
『別に頼んでないから、それにもう子どもじゃないんだから、俺がわざわざ世話を焼く必要もないだろう。』
『‥何よ。んじゃ子どもじゃないなら大人の対応してよ!』
『大人の対応?』
すると、菜月は立ち上がってブラウスのボタンを開けて胸をはだけさせた。
『‥何してるんだ?風邪引くぞ』
ちらっと見て、顔色一つ変えることなくそのまま手元にあるコートを羽織り始めた。
花を迎えに行くつもりなのだろう。
それが余計に腹が立ったのか、将生の腕を引っ張った。
菜月はそのままソファに倒れ込み、将生はその上に覆い被さるように倒れ込んだ。
ため息をつきながら立ちあがろうとする将生の腕を掴んで離さない。
『おい、やめろ。』
『やだ。やめない。』
『はぁ‥なんなんだよ。もう無理だって言ってるだろ。昔から言ってるだろ。菜月は従姉妹なんだから付き合えないって。』
『法律上結婚はできるじゃん』
『俺は別に菜月と結婚したいとは思わない』
『‥!!花ちゃんの方が大事なの?』
『当たり前だろ。』
『分かった。もう諦める。』
『‥そりゃよかった。んじゃもう離して』
『‥最後にキスして。』
『はぁ?』
『キスしてくれたらもうこの家に二度と来ない。花ちゃんにも接触しない。花ちゃんが嫌がることしない。』
『‥本当だな?』
『うん。絶対しない。約束する。』
『‥』
将生は、菜月の唇に軽くキスをした。
『‥はい。終わり。』
『‥何もしないの?』
『キスしただろ。』
『最後までして!』
『最後まで?キスしただろ。』
『違う!』
すると菜月は将生のズボンのベルトに手をかけてベルトを外そうとした
『‥何してるんだ。やめろ。キスだけでいいっていっただろ。』
『将生お兄ちゃんだって男でしょ?』
『‥ 』
『大事な花ちゃんじゃできない過激なことだって、菜月ならできるよ?』
『何言ってるんだ。菜月だって大事な妹だよ。そんなことしない。』
ガサッ‥
玄関から物音がした。
将生が驚いて玄関の扉の方を見ると、静かに扉が開いた。
花が立っていた。
『花‥!!』
『‥。』
涙で潤んだ瞳で真っ直ぐ将生と菜月を見ている。その表情とこの状況でやばいことがすぐに分かった。
花は、一言も声を出さないまま、バッグを持ってそのまま家を飛び出した。
『待って!!花!!』
将生は、緩んだズボンのベルトを締め直しながら、急いで花を追いかけた。
マンションのエレベーターホールで花の腕を掴んだ。
『花!ごめん‥。違うんだって。』
『‥何が?見てたよ。将生から菜月ちゃんに馬乗りになってキスしてたよね。』
『‥それは』
『菜月ちゃんってまだ未成年だよ。菜月ちゃん上の服はだけてたし、将生のズボンだってベルト外して緩んでたし‥二人で何しようとしてたの?』
『‥それを今から説明しようと』
『もういいよ。』
『え?』
『私、今日は仕事で疲れてるんだよね。だから、あんなことしてる家に帰りたくたいの。今日はホテルに泊まるから。』
『まって、なら俺も一緒にホテルに泊まるよ。』
『将生の顔も見たくない。早く離して。』
花の顔を見ると涙で溢れそうな目をしているが怒りの感情が見てとれた。軽蔑の眼差しをむけている。
『‥大切な妹のところに戻ったら?』
『‥!!』
そういうと花はそのまま上がって来たエレベーターに乗り込んで下に降りていった。




