新章 社会人へ
今日からみんな4月になり、社会人になった。
花と由奈ちゃんは紫翠大学附属病院の薬剤師へ。
和紗は製薬会社の薬品開発・研究職へ。
隼人は製薬会社のMRへ。
ヒラマサは大手自動車会社サーマルエンジニアへ。
寺倉は、帝王大附属病院で研修医へ。
それぞれの道を進むことになった。
ひとり、社会人3人目を迎える北川のみ。
暗雲が立ち込めていた。
そして、一年後の2027年3月。
アパートの一室のベランダでタバコを吸う北川
部屋は荒れており、綺麗好きで整理整頓をする北川とは思えない部屋になっていた。
ぼーっと朝方の空を見つめている。
そしてそのままベランダから飛び降りた。
これはのちのお話。
7月
社会人になり、3ヶ月が経過してヒラマサとの同棲が始まった。
お互いの仕事場から近い場所を選定して、2Ld'Kのアパートを借りた。
引っ越しは実家から借りた車を運転して家具や家電を運搬して引っ越し作業を終えた。
お互いにものがそんなに多くなくて助かった。
将生の大量の本だけが大変だった。
『お疲れ。花。そろそろ休もう。』
『うん。あ、でも、ここの雑貨だけ片してしまおうなって』
『手伝うよ』
『ありがとう』
すると将生は、花の横に座りぎゅっと抱きしめてきた。
『‥手伝ってくれるんじゃないの?』
『休憩したらね』
『もう』
将生はあの日から毎日好きがあればこうしてスキンシップをとってくるようになった。
恥ずかしいけれど、嬉しいので強くやめてほしいとは言えない。
『あ、アルバム』
『高校の時のやつ?』
『うん、卒業式の写真とか現像してアルバムにしたんだよね。』
『へー‥、あ、これ花と撮った写真だ。』
『わあ!ほんとだ!懐かしいね!』
『‥昔から可愛い』
『な、何言ってるの。そんなこと言ってくれなかったでしょ。』
『当時恥ずかしくて言えなかった。この時から可愛いと思ってるし、好きだと思ってたよ。』
『‥!!』
『まさか花からボタンが欲しいって言ってもらえると思わなくて内心飛び上がるほど嬉しかった』
『ええ!?全然気にしてなさそうに見えた』
『なんで?名札交換したでしょ。』
『‥したね。』
『あれがもう告白みたいなもんでしょ』
『そ、そうなの?分かりにくいよ』
『‥告白しようとしたけど、そのあとすぐ下校時間になってタイミング遅れて今になった』
『あー‥そんなんだった気がするね。告白しようとしてくれてたんだ?』
『でも、花の合格発表まで待とうと思ったんだよ。あの時、花がストレスでどうにかなりそうな勢いだったろ?』
『大学受験はメンタルが沈んでたからね、そんなふうに気を遣ってくれてたんだ。ありがとう。』
『‥気を使い過ぎて、告白するのが遅れて今になってしまった。西岡に先越されるし‥』
『‥そ、それは。』
『‥ん?これ何?』
『あ!まって!それはだめ!』
花の声かけよりも先に将生は手に取った小さなアルバムをめくってしまった。
中には隼人と付き合ってたときに2人で撮った写真をスクラップにしたいわゆるカップルたちのラブラブアルバムになっていた。
『‥』
『あ、その。捨てられなくて‥』
『なんで捨てられないの?まだ西岡が好き?』
『いや、そうじゃないけど‥隼人とは友達の期間もすごく長かったから思い出としてとっておきたいとおもったの。』
『‥』
そういうと将生は真顔のままそのアルバムをゆっくりめくって写真を見始めた。
『‥あの、実家に持って帰るからそんなに見なくていいでしょ。』
『見たらダメなの?』
『ダメじゃないけど、将生が嫌な気持ちになるなら見なくていいよ。』
『‥』
写真は2人で旅行に行った時のものもあれば、みんなと石垣島旅行に行った時のものもある。
隼人の家で誕生日お祝いした時の写真もあれば‥あ、やばい、次のページは‥。
『ちょ、やっぱり恥ずかしいから見ない‥』
『‥』
遅かった。その写真は隼人と一緒に温泉旅行に行った時に部屋風呂で一緒にお風呂に入った時に撮ったものだ。
つまり、お互い裸だ。湯船に浸かっている写真で隼人は上半身までガッツリ映っているが、花は胸から下は見えない画角になっている。
それでも肩を引っ付けて、花は隼人の肩に顔を乗せて2人で楽しそうに笑い合ってる写真だ。
しかも、同じページにはお風呂に入ってる時に隼人が花の首筋にキスしている風の写真とある。やばい‥。こんな写真まであるなんて‥。
大学時代恐ろしい‥。
『‥』
『‥』
部屋に沈黙が走る。
『ごめん!こ、こんな写真まであるとは忘れてました!!本当にごめんなさい!こ、この写真は早急に捨てます!そして、このアルバムは実家に持ち帰ります!ごめん!』
将生からアルバムを取り上げようとしたら、将生が花がアルバムに触れないように避けた。
『な、なんで!?返して‥んん』
すると、将生は花の腰回りを抱き寄せてキスしてきた。
‥長い。口の中に舌を入れて絡めてくる。
『んん‥』
5分ほどキスをするとやっと解放してくれた。
すると、将生が真顔で静かに言ってきた。
『捨てなくていいよ』
『な‥いいよ、本当にごめんなさい。捨てるって』
『今付き合ってるのは俺だから』
『‥!!』
『これから付き合い続けるのも俺だし、これから花とお風呂に入る権利があるのも俺だから。過去のことは気にしない。』
『そ、そう?』
『クリスマスマーケット行って、イルミネーション見て、温泉旅行行って一緒に露天風呂入って、プール行って、ヒルトンホテルでクリスマスディナーする。』
『‥。』
隼人と行った、アルバムに書いてあった全てのデートコースだ。
全て同じコースを回るつもりなのだろうか‥
『あ、はい。もちろんです。』
『分かればいいんだよ』
すると将生はまたアルバムに目を落として、ペラペラとページをめくりなめるようにじっくり見始めた。
『‥恥ずかしいからもうやめて』
『嫌だ。』
『付き合ってたのは、大学2年から4年までの間で2年間だけだから‥』
『俺と付き合ってまだ一年と半年かな。』
『そ、そうですね』
『俺とのアルバムはないの?』
『‥今はもうそういうのは作ってないというか。若気の至りで作ってしまったものなので‥内容を見れば見るほど恥ずかしいものだし、も、もういいかなって。将生とも写真はたくさん撮ってるでしょ?』
『‥』
『あの‥』
全て見終えた。将生はアルバムを静かに閉じた。
『‥西岡は同じもの持ってるの?』
『‥分からない。一緒に作ってたやつだから‥でももう別れて3年以上経つしもう捨ててるんじゃないかな?』
『いや持ってる。確実に保管してる。』
『‥そ、そうかな』
『全く同じもの持ってるの?』
『全く同じではないけど、似たようなものだと思います』
すると将生は天井を見ながらゆっくり大きくため息をついた。
部屋に沈黙が走る。
すると。ゆっくりもう一度花を抱きしめたと、思ったらそのまま持ち上げた。
お姫様抱っこされてしまう。
『ちょっと!何するの!?』
『‥』
将生は何も話さない。
そのまま寝室のあるベッドに連れて行かれた。
花をベッドを置くと花の身体を覆い被さるように将生が馬乗りになってきた。
『‥あ、あの。』
『‥』
将生は何も話さない。ただ目はかなり怒っている顔をしている。
ちょっと怖いかも‥。
すると、花の首筋にキスをしてくる。
花は耳の後ろや首筋が弱く、キスをされたり触れられたりすると身体がぴくぴく反応してしまう。
『‥昔、飲みに行った時。ここにキスマークがあったの覚えてるよ』
『‥え?いつの話?』
『大学3年か2年の秋かな。』
『よく覚えてるね‥忘れてたよ』
『花、首筋弱いもんね。西岡もここにキスしてたんだ。』
『‥将生?』
『‥ごめん。ちょっと痛いかも』
『え?』
すると、将生は花をベッドに押し倒すと首筋を軽くキスをして、何度かに分けて吸ってきた。
『あ‥ちょっと‥こんなとこにキスマークつけたらみんなに見えちゃうよ!』
『‥嫌?』
『恥ずかしいって、患者さんや職場の人も見える場所だし』
『んじゃ』
すると将生は、鎖骨の下あたりにキスをしてきた。がっつりキスマークがついてしまう。
すると満足したのか、次は唇にキスをしながら花の服を捲り始めた。
『んん‥ま、将生。まだ昼だよ‥昼ごはんも作らなきゃいけないし‥』
『あとでいいよ』
そのまま2時間ほどがっつり将生とすることになり、時刻は13時過ぎになった。
まだ物足りなさそうに花に抱きつきながら。背中や首筋にキスをする将生。
『‥もうお腹すいたからご飯にしよ』
『‥もう少し』
『もう‥』
将生はこうなると赤ちゃんみたいになる。
とにかく甘えん坊で手に負えない。
正直、身体も疲れてお腹もすいた。
将生は、隼人をライバル視している。
別れて2年も経つけれど。3ヶ月前に告白をされたのもあり、将生は隼人のことをかなり警戒している。
‥隼人も物好きだな‥。
そんなことを考えていた。
でも、私も嘉代さんにヤキモチ妬いてたから一緒だよね。嘉代さんとのラブラブ写真があったやかなりショックかもしれない。
しかし、それから1週間後。
大変めんどうなことがおこった。
ピンポーン。
お互いの仕事が休みだったこともあり、コーヒーを飲みながらソファで2人でくつろいでいると、インターホンがが鳴った。
『誰だろ?何か頼んだ?』
『いや、頼んでないけど。出てくるよ。』
将生が玄関のドアを開けるとそこに立っていたのは、お人形さんのような可愛らしい女の子だった。身長160cmほどあり背が高くスタイルがいい。そこに小さな顔がちょこんと乗っている。
すると、彼女は将生をみるやいなやキラキラした瞳で抱きついてきた。
『将生お兄ちゃん!!会いたかったー!!』
『‥!!!』
『‥え、菜月?』
『そうだよ!菜月だよ!今年から大学生になって上京するって言ったでしょ?メール全部無視するんだもん!ひどい!』
『そうだっけ?てか、なんでこの住所がわかったんよ。』
『おばさんに聞いたのー!前の住所のマンションに行ったけどいなかったから、確認したら引っ越したって聞いてさー!』
『あー‥まあ、久しぶりだな。大きくなったな。』
『えへへ!‥んでさ、誰?』
すると、可愛い女の子はジト目で花を見つめてきた。
あ、これは嫌われてるぞ。
すると、将生は菜月を引き剥がして、頭にチョップをした。
『失礼な態度をとるな。俺の彼女の花だよ。花と同棲するために引っ越したんだ。』
『あ、そうなの!?彼女いるなんて聞いてないー!!』
『言ってないからな。あ、花。この子は従姉妹の袴田菜月。母さんの弟の娘なんだよ。』
『へー‥どうも。』
『どうもー。てか、そんなことより!この辺案内してよ!私、全然立地分かんないだもん!』
ノールック挨拶。
『おい!ちゃんと挨拶しろよ!』
『別にいいでしょ!そんなことより今日!案内してよ!』
『今日は無理だよ』
『なんで?わざわざきてせっかく会えたのに!どうせ今日は休みなんでしょ?』
『今日は花とゆっくり過ごすって決めてるんだよ』
『一緒に住んでるならいつでもできるじゃん!』
『あの、将生。いいよ案内してあげなよ。』
『え?』
『上京したての大学生なんでしょ?きっと色々知らなくて不安なんだよ。』
『‥でも、』
『えー彼女さん優しいー!んじゃ将生お兄ちゃんは借りて行くね!』
『うん。』
『ええ?ちょっと‥』
『私は大丈夫だから。楽しんできてよ。』
『花が言うなら‥』
『やったー!!!!』
そして、そのまま将生は連れて行かれてしまった。
嵐のような娘だった。
ただ一瞬で分かった。
将生のことが好きなんだ。
かっこいいし、頭もいいし、モテるよね。そりゃ。
あんなカッコいい親戚のお兄ちゃんいたら私も好きになっちゃうかもしれない。
モヤモヤする心が止まらないけれど、正直あの子の目が怖くて、早く出ていってほしい気持ちが勝ってしまった。
将生は、その日の夜7時ごろに帰宅してきた。
『おかえり』
『ただ今。ごめん、遅くなった。』
『全然いいよ。楽しめた?』
『そうだな、楽しんでたよ。向こうは。』
『それはよかった。ご飯は食べてきたの?』
『夜は花と食べたかったし、誘われたけど断って帰ってきたよ。お詫びに花の好きなご飯なんでも作るから一緒にご飯食べよう。』
『嬉しい。夜は1人でカップ麺で済ませようと思ってたよ。』
『‥なんで1人で食べようとしてたんだよ』
『あ、夜まで帰ってこないかと思ってて』
『メールしただろ。今から帰るから待っててって。』
『え!見てなかった。ごめん。』
『別にいいけど‥とりあえず作るから花はお風呂入っておいで。』
『ありがとう』
すると、将生が花の頬をキスしてきた。
そして耳元でこそっと呟いた。
『‥今日は1日花とイチャイチャできなかったから、今晩は覚悟してて?』
『‥はい。』
身体が熱くなる。
顔を赤くすると、ニヤリと子供っぽく微笑む将生。宣言通りその日の晩はいつもより長かった。
ただ、花の心は菜月という少女のことで頭がいっぱいだった。あんな可愛い子に好かれてたら揺らいでも仕方ない。
胸も私より大きかった気がする。
上京してきたって言ってたし、これからずっといるのかな‥嫌だな。
花の予想通り。菜月は、その日からも頻回に家にやってきた。




