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距離

結局朝まで何もなく終わってしまい。

朝ごはんを食べてから

いつもの私服に着替えた。


‥無駄だった。何もかも。

いつも通りぐっすり寝て、朝ごはんを食べて、コーヒーを飲んで優雅に過ごしてしまった。


『佑々木、そろそろ出かけようか。』

『あ、うん。』


今日はヒラマサが大学の研究室に寄ってから、みんなと合流して飲み会に行く予定だ。

ヒラマサの大学の前まで行き、大学内のベンチに座りヒラマサを待っている。


すると、ひとりの女性が声をかけてきた。


『あの、将生くんのお知り合い?』


声をかけてきたのは、眼鏡をかけた穏やかで優しそうな女性。柔らかいシルエットと整った顔立ちをしている綺麗な女性だ。

‥将生くん。下の名前呼びってことはそこその親しいのかな。


『はい。一応‥。』

『もしかして、彼女さん?』

『そ、そうです。』

『やっぱり。通りで綺麗な子がいるなぁと思ってたんです。』

『あ、いやいやそんなことないですよ』


女性はニコニコを笑いながら微笑んだ。


『付き合って長いの?』

『あ、そうですね。1年と2ヶ月くらいです。』

『へー‥随分と長いのね。実はね、私も彼と付き合ってたの。』

『え?』

『私、村田嘉代っていうの。彼と同じゼミで研究しててね。私が付き合ってたのはほんの数ヶ月だけよ。』

『そ、そうなんですね。』


‥元カノ登場!?こんなところで、こんな人に会うなんて‥早く帰ってきてよ‥。

めちゃくちゃ気まずいんだけど‥。


『彼、どんな感じなの?あなたといる時』

『‥そうですね。優しいです。』

『うん。わかる。優しいよね。他はどう?』

『え、他ですか!?うーん‥カッコいいとか?イケメンですよねスタイルも良いなって。』

『わかる!モデルさん見たいよね。大学でも彼すごくモテてたのよ。』

『あ!そうなんですか!』

『うん。イケメンでスタイル良くて、優しいからそして勤勉で優秀で教授たちからもすごく信頼されてたの。』

『そうなんですね。すごいですね。』

『うん。私もそんな彼が大好きだったの』

『へー‥な、なんで別れちゃったんですか?』

『‥うーん。そうね。体の相性が悪かったってことにしとくわね。』

『‥へ?‥?』

『そう言うことにしておくわね』

『‥え』


一年2ヶ月付き合って何もありませんなんて恥ずかしくて言えないんですけど、キスすらしてないんですけどッ‥!!!


『えっと‥まあ、そ、そうですねー』

『‥』

『まあまあってとこですかね!』

『‥』

『‥』


やばい。なんか勘付かれたかもしれない。

この村田さんって人鋭い目をしている!!


『そうね。彼って結構、強引でしょ?』

『そ、そうですね‥??』

『体力もあるから朝まで大変って言うか〜』

『‥はぁ。』

『腰が痛くて痛くて、もう耐えられなかったわ。』

『よ、夜の相性が合わないっていうのはそういう理由ですか?』

『そうね、そんなとこかな!』

『‥へー。』


私には何もしてこないくせに!!!!!

数ヶ月しか付き合ってないこの女の子にはそんなことまでしてるの!?

確かに、私より体も程よく肉付きが良くて胸も多い大きいし腰回りもなんか女性らしくて‥

こういう身体つきが好みってことなのか‥


『そ、そうですね。私も困ってます(白目)』

『よね。でも、一年と付き合ってるってことはきっと身体の相性も良いんでしょうね!羨ましいな。お幸せにね!』

『あはは‥』


初対面なのにこんなアダルトな話してくるなんてなかなかキツイなこの人。


『‥佑々木、おまたせ。』

『あ、ヒラマサ。おかえり。』

『あれ?嘉代さん。久しぶりですね。』

『将生くん。久しぶりね。先生達に会いにきたの?』

『うん。嘉代さんは?』

『私もそんな感じだよ。将生くんは相変わらず元気そうだね。』

『あ、うん。まあ‥』

『可愛い女の子がいたからナンパしちゃった。』

『俺の彼女ですよ、変なこと言わないでください』

『‥!!』


急に真剣な顔でそんなことをいうヒラマサ。

花もドキッとしてしまった。


『ふふ、ごめんね。大切な彼女さんなのね、妬いちゃうな〜。』

『‥??』

『んじゃバイバイ、将生くん。元気でね。』

『バイバイ』


そのまま嘉代は大学の校内へ歩いて行った。


『待たせてごめん佑々木。なんか食べに行こうか。』

『あ、うん‥全然良いよ』


ヒラマサに手を繋がれてそのまま外へ出た。

いつも通り優しく笑うヒラマサを見ても少しモヤモヤしてしまう。

私には何もしてこないのに‥豊胸も考えた方がいいってことなのか‥。


お昼にうどんを食べに言ったけど、あまり味がしなかった。

いや、でもここはもっとしっかり食べて、胸に脂肪を蓄えないと‥けど、食べても食べても脂肪は胸に行かずにお腹周りにいってしまう。

あーもう最悪。


『佑々木、大丈夫?さっきから何か考え事でもしてるのか?』

『‥別になんともない』

『そうならいいけど』


なぜ私のことを抱かないのか!なんて直球な質問できない。普通に淡々と返答されたら悲しくて受け入れられないだろう。

早くみんなに会いたい‥。


『‥あ、そういえば。ヒラマサの家ってこのへんだよね?』

『そうだよ。』

『行ったことないから行きたいな。』

『‥え、佑々木が?』

『そ、そうだけど‥』

『‥』

『‥』


え、何、この沈黙。私の家には何回も来てるのに自分の家に私が行くのはダメなの?

ヒラマサの顔を見ると口元に手を当てて少し考えている。そんなに嫌なのか‥!!

まさか、浮気相手を隠してるとか‥?

身体の関係がある綺麗なお姉さんと同居してるとか‥??ありえる‥だってさっきの女の子がヒラマサのこと、激しいだの強いだの言ってたし、きっと、豊満な肉体女性が好みの絶倫男なんだ!!!!


『‥いいよ。来ても。』

『え?いいの?家に誰もいないの?』

『どう言うこと?一人暮らしだけど』

『‥一人暮らしなの?』

『前からそう言ってなかったっけ?』

『‥誰か遊びに来たりとかしないの?』

『圭吾はよく来るよ。』

『あ、そうなんだ‥他は?』

『他?‥来ないな。家族も滅多に来ない。』

『‥そう』


まあ、言わないよね。

いいさいいさ、別に。付き合い始めも、ヘルパーみたいなことしかしてなかったし、ヒラマサ優しいからほっとけなくて義務感で付き合ったのかな。

まあ、いいさ。行ってその証拠を探してやる。


『行ってもいいの?』

『うん、いいよ。』

『んじゃ行きたいな。』

『‥分かった。』


覚悟を決めたみたいな顔してる。

いいよいいよ、別に。

今頃きっと浮気相手の証拠隠滅をどうするか考えてるか、浮気がバレても良いと腹を括ってるに違いない。

けど、私は探し出してみせる。

その女を連れ込んでる証拠をな‥!!


そして、ヒラマサの家の前に来た。

ヒラマサの家は1LDKの普通のマンション。

実家がお金持ちのせいか、マンションもそこそこ良さげなマンションでサラリーマンの人と何度かすれ違った。


『お邪魔します!』

『‥何もないよ?』


中に入ると、生活感がなかった。

台所は調理器具など置いてあるが整理整頓されており、全て戸棚に収納されていた。

シンクの中には水滴一つ付いていない。


リビングらしきところには、シンプルなデスクワークが1つとワークチェア。

大きな本棚が壁を埋め尽くし、大量の本が置いてあった。本棚の側にも山積みになった本がある。

壁付されたテレビ。小さなサボテンとパキラの観葉植物が飾ってある。

部屋の中心にネイビーのラグがひかれており、その上に小さなちゃぶ台が置かれている。

ソファやクッションはない。

隣の部屋にセミダブルサイズのベッドが置かれており、そこにもカラーボックスの中に大量の本が積まれていた。



『‥本以外何もないね』

『だから言ったでしょ』

『ベッド大きいね!』

『‥まあ、そうだね。佑々木のとこシングルだもんな。うちはセミダブルだから』

『ええ!いいなー!しかも、私のと違って高級寝具メーカーの湯川布団のマットレスだ!』

『よく知ってるな。母さんがそれにしろって、睡眠は大切だからって。』

『良いなー!ちょっと寝ても良い?あ、まって、‥潔癖?』

『いいよ、潔癖じゃないし、俺もよく風呂入らず寝てしまうこともあったし。』

『やったー!』


花はルンルンでベッドに座りに行った。

ヒラマサは、寝室横のリビングからそれを見ている。

上質なマットレスにふかふかの羽毛布団。

天国か‥花の家にあるお値段相応の安価なメーカーで購入したマットレスとは違う。

そして、ヒラマサの匂いがふわ〜と香ってくる

全然臭くないや‥良い匂い。


『‥天国。』

『そりゃよかった。何か飲む?』


ヒラマサはそれを見て、キッチンの方へ行った。

‥はっ!何か探さねば!!

女を抱いているとすれば、このベッドなんだから!けど、このベッドからはヒラマサの匂いしかしないな‥。

枕をひっくり返したり、シーツをめくったりするものの何もない。

なんならホテルのような真っ白なシーツだが、シミひとつない。髪の毛一本もない。

次は体を起こしてベッドの下を覗き込む。

埃しか見えず、女性もののピアスなどのアクセサリー類や長い髪の毛なども落ちてなかった。


『うーん‥』

『‥なにしてるの?』

『うわあ!』


後ろから声をかけられてドキッとしてしまった。這いつくばってベッドの下を見ていたのがバレた。


『べ、べつに!』

『汚かった?最近掃除したんだけど、ベッドの下まで掃除できてないんだよね。ごめん。』

『いやいや私の部屋の方が汚いから』

『‥そんなことないと思うけど、何か飲む?』

『あ、んじゃなにかお茶で!』

『紅茶もあるよ』

『あ!んじゃ紅茶で!』

『はいはい。』


そのまま台所の方へ行くヒラマサ。

仕方ないので、ベッドから降りる。

‥浮気してないのかな?

この大量の本の中にエロ本とかないのかな?

弟たちの部屋からも発掘したことないけど。

本棚の近くに行って本を見るも難しそうな宇宙力学や天体に関する本ばかりだった。


『‥ないな。』

『何がないの?』

『はっ!なにもありません!』

『‥?』


ヒラマサが入れてくれた紅茶を飲む。

上質な紅茶の味がする。とても美味しい。


『美味しいねこれ』

『圭吾がいつも手土産に持ってくるんだよ。紅茶とかお菓子とか、食べて良いよ。』


すると、フランスの老舗洋菓子店の有名なクッキーが出てきた。


『すごい。こんな高級なやつ手土産で持ってくるんだ。』

『あいつの家、お金持ちだからな。親が買ってくるんだとさ、それをいつも消費しきれないからってここに持ってくるんだよ。』

『へー‥』


さすが、帝都大学。生徒の8割が実家富裕層っていう統計データがあるという噂は伊達じゃないね‥。


『すご、美味しい。』

『そりゃよかった。』


静まり返る部屋の中。気まずい。

隼人の部屋と違って、綺麗に片付いており、生活感もあまりない。

本がたくさんあるビジネスホテルみたいだ。


『‥さっきの女の人。ヒラマサの友達?』

『え、ああ、うん。』

『へー‥』


元カノって言ってたのに。ヒラマサ嘘ついてる?いま一瞬気まずそうに視線を逸らした。


『付き合ってたって言ってたよ』

『‥一時期少しだけね』

『そうなんだ。綺麗な人だったね。』

『そうか?』

『そうでしょ。』


今は午後13時半だ。

みんなと飲み会で集まるのは、18時から。

あと4時間とちょっとある。

みんなと会う場所まで行くのに30分かかるとして、あと3時間。

ちょっとヒラマサと2人気まずいかも。


『‥佑々木の方が綺麗だと思うけど』

『‥へ?』

『佑々木の方が嘉代さんより綺麗だし、可愛いと思うけど。』

『‥そんなことで私の機嫌とろうとしてるの?』 


ボソッと小さな声で嫌味っぽいことを言ってしまった。大人気ない。


『え?』

『‥別になんともない』

『佑々木、なんか変なこと言われてない?』

『別になにも言われてないよ』

『‥なら良いけど。』

『あんな綺麗な人と付き合ってたなんて、ちょっと妬いちゃうかも』

『え?』


私のことは抱いてくれてないしね‥。


『佑々木』

『ん?』


すると、ヒラマサはぎゅっと抱きしめてきた。


『‥可愛い』

『な、そんなので機嫌取らないで』

『そんなつもりじゃないけど』


ヒラマサの花を抱きしめる力がいつもよりすこし強い。少し苦しい‥。


『んんッ‥ヒラマサ』

『佑々木‥』


ヒラマサの吐息が耳元にかかって、くすぐったい感覚もある。

ヒラマサの表情は見えない。何を考えているのか‥わからない。

ただ、今言えることは‥。


『ちょっと、力強いよ‥苦しい』

『あ!ごめん!!!』


ヒラマサは驚いたのか珍しく大きな声を出して、急いで花を離した。

表情が少し焦っているようにみえる。

額に汗が見える。


『そ、そんなにびっくりするなんて思わなかった。ごめん。』

『いや‥俺もごめん。ちょっとトイレ行ってくる。』


すると、ヒラマサはそのまま洗面台の方へ足早に行ってしまった。

‥気分悪いのかな?大丈夫かな。

なんかこの家に来てからヒラマサの様子がおかしい。体調悪い?

今日飲み会いけるのかな?


暇になったので花がスマホを見ている。なかなかヒラマサはトイレから出てこない。お腹痛いのかな?


ピンポーン


インターホンが鳴った。


するとトイレから出てきたヒラマサがそのまま玄関の方へ行った。ドアを開けると、そこには、寺倉が立っていた。


『やっほー!飲み会まで少し時間あるはず一緒にあそぼーよ!』

『‥圭吾か。』

『ん?他にも人がいるの?珍しいね』

『ああ、佑々木がいる』

『佑々木さん!?ごめん!俺帰る!』

『待て。』


ヒラマサは急いで帰ろうとする寺倉の腕を掴んだ。


『なんだよー!今からイチャイチャするんだろ?』

『しない。』

『なんでだよ!気まずいじゃん!』

『いてくれないと逆に気まずい』

『どういう意味だよ!』

『‥とにかく。頼むからいてくれ。』

『嫌だよ!帰るよ!』

『圭吾!』


そのままヒラマサは、寺倉の腕を引っ張って部屋に引き入れて、扉を閉めた。

そしてそのまま寺倉に壁ドンした。

小柄な寺倉と高身長なヒラマサの身長差も相待ってカップルのような雰囲気になっている。


『頼むから帰らないでくれ』

『‥なに言ってんだよ』

『これ以上我慢するのはきつい』

『はぁ?』


『‥何してるの?』


寺倉に熱い視線を送りながら壁ドンして顔を近づけるヒラマサを見て唖然としている花が玄関に立っていた。


『あ!佑々木さん!ごめんね!』

『‥そういうことか』

『何が!?何かとんでもない勘違いしてない!?!?』

『‥佑々木、ごめん。圭吾が来たんだ。手土産も持ってるし、飲み会まで少し時間あるから3人でトランプでもしよう。』

『いや俺かえ‥』


するとヒラマサは、足で圭吾の側の壁をドンとたたいて、逃げられないようにした。

ヒラマサが寺倉を睨みつける。

寺倉は大型猛獣に睨まれた小動物なようになってしまった。


『いいよ!寺倉も一緒に遊ぼ!』

『いやいやそんな小学生みたいなノリで何して遊ぶの!?意味深だよ!』

『トランプとかに決まってるだろ』

『トランプって何!?そういうプ‥』


すると、ヒラマサは寺倉の口を塞いだ。


『変なこと言ったらもう2度と家に入れない。お前が親からマンションを追い出されても、泊めてやらないぞ。』

『すみません。なんでもします。』

『よし。』


耳元でボソボソと話す2人を見て花は確信した。さっきの壁ドンといい、ヒラマサの頬の熱ってた表情といい。

ヒラマサは確実に寺倉とデキている!!!

今は女の子じゃなくて、男の子なんだ‥。

でも確かに寺倉はどちらかというと可愛い系の顔をしているし、小柄で女の子っぽいといえばそうかもしれない。

でも寺倉に比べると私の方がまだ肉付きはあると思うけど‥。

肉付きが全てじゃないのかな‥。


そのまま寺倉が持ってきた、洋菓子を食べながら3人でトランプをしたり、本を読んだり、アニメを見たりして過ごした。


そのまま、飲み会の時間になり3人で飲み屋さんの場所へ向かった。


お店の近くまで行くと早めに来てぶらぶらしてきた真緒と会って合流し、花と真緒は2人で楽しそうに話していた。

その様子を見た寺倉がこっそりヒラマサに声をかける。


『‥ねえ、佑々木さんと何かあったの?』

『何もない。』

『んじゃなんであんなことになってるのさ』

『‥何もしないようにしてるんだ。佑々木はまだ心身ともに体調が整っていない。そんな状態で変なことできないだろ‥。』

『何もしないって‥まさか、一年以上付き合ってるのに本当に何もしてないんじゃ‥?』

『してない。』

『は!?本当!?‥キ、キッスも?』

『してない。』

『すごい‥修行僧じゃん』

『‥仕方ないだろ。嫌われたくないし。』

『うーん‥でもさ、逆効果な気もするけど。なんか変に勘違いしてそうだったよ?』

『勘違い?』

『‥禁欲生活してるのは、将生だけじゃないってことだよ。女の人からそういうの言い出しにくいし、将生から様子見て少しずつ手を出さないと逆に失礼なんじゃないの?』

『‥そういうものなのか?』

『うん。分かんないけど。』

『難しいな。』

『だって、手繋いだりはしてるんでしょ?嫌がる素振りなくて発作もないならもうちょっと進展してても良い気がするけど‥』

『‥。』

『まあ、2人の問題だから僕が口出すものじゃないしね。2人のペースでゆっくり仲良くしていけば良いよ。仲悪いわけじゃないならそれで良いじゃん!』

『‥そうか。考えておくよ。』

『うんうん。』


仲良さそうに話すヒラマサと寺倉を見る真緒と花の2人。

花は真央の耳に耳打ちした。


『ね?言ったでしょ?なんか距離近いと思わない?』

『まさかとは思ってたけど‥嘘でしょ?』

『でも、一年以上も付き合っててキスもないなんておかしいでしよ。』

『まあ‥それは‥、でも花のこともちゃんと好きだと思うけど』

『好きの種類が違うんじゃないかな?私への好意と寺倉への好意は別物な気がするの。寺倉を見つめる目はこう‥熱い想いを感じさせるものがあったわ。私がいるのに、玄関で『もう我慢できない』『行かないでくれ』って寺倉に言ってたの。頬を赤く染めながら!』

『‥それは、本当だとしたら修羅場すぎる。でもヒラマサが寺倉のことが好きだとしたら花と別れてから関係持つんじゃないの?』

『私たちの場合、付き合ってるっていうか、ヒラマサが私の保護者というか介護者というかそういうイメージの方が強いのよ。だから、責任感が強くてこうなっちゃってるとかじゃないかな。ヒラマサって誰にでも優しいからさ自分の本当の気持ちに気づいたけど、私のことも友達として見捨てられないんだと思う。』

『なるほど‥そういわれるとそうも見えてくるわね』

『でしょ?』

『仮にそうだとして、これからどうするの?』

『‥もし本当にヒラマサが寺倉のことが好きなら私は身を引くよ。このままずるずる関係を続けても仕方ない。』

『まあ、そうね‥正直私もキスとかそういう愛情表現がないと耐えられないタイプだから花の気持ちもすごく分かるわ!』

『でしょ!?』

『でももう少し様子みた方がいいんじゃない?時期尚早な気もするし‥』

『わかった‥もう少し考えてみる』

『私も念の為、注意深く観察しておくわ』

『ありがとう!』

『まあ、でも!男は星の数ほどいるわ!それに、もしもヒラマサがダメでも西岡とより戻すのもありなんじゃない?』

『ええ?もうないよ。隼人も私じゃなくてもすぐに彼女できるだろうし。』

『でもさ、花のこといつも気にかけてくれ

てるじゃない。好意がないとそんなことしないって!』

『うーん‥』

『まあ、ゆっくり考えなよ!私は花達の恋愛模様見ながら一杯飲むね〜』

『一杯じゃなくて、いっぱいでしょ?』

『バレた?』


そのまま4人で楽しくお店まで行った。

お店に行くと和紗と隼人と北川が先に入って3人で飲んでいた。


『あ!ちょっと!早くない?』

『あんた達がくるの遅いんでしょ。』

『えー!私もビール!』

『はいはい。』


北川くんと隼人が座っており、真緒が隼人の横に座ったので、真緒の横に座る花。

和紗の横に寺倉とヒラマサが並んだ。

飲み物が運ばれてきたので乾杯し飲むことになった。


花以外はそこそこお酒が入って楽しい雰囲気になっている。花は定期薬は今は飲んでいないが、症状があった時のための予備薬を常に持ち歩いている。なので、まだアルコールは飲めない。


ヒラマサが寺倉と楽しそうに話してる姿を見て、少し寂しい気持ちになった。


仕方ないよね‥。


真緒が立ち上がってヒラマサの隣に座った。


『ちょっと!ヒラマサ!ちゃんと花と仲良くしてるの?大丈夫なの!?』

『してるよ。てか、酔っ払い臭いんだけど。』

『はぁー?』

『ちょっと!酔っ払い!ウザ絡みはやめなさい!』

『大丈夫じゃないから聞いてるんだっての!』

『は?』

『はいはい回収しますねー』


和紗が真緒の横に行き、真緒に水を飲ませた。

真緒‥寺倉とのこと言わないかヒヤヒヤしちゃう。酔っ払うとちょっとやらかしそうで怖いな‥。

ヒラマサは真緒から解放されると、だるそうにトイレに行くために立ち上がって席を立った。

ヒラマサがいなくなると、隼人が声をかけてきた。


『花。体調は大丈夫なのか?』

『あ、うん。大丈夫だよ。元気!』

『そっか』

『卒業式以来だね!今、隼人は何してるの?バイトとか?』

『いや、もうやめたよ。今は次の職場に向けて勉強したりとか北川と遊んだりして過ごしてるんだよね。』

『へー!さすがだね!私も勉強しなくちゃいけないな‥。』

『ヒラマサとは仲良くしてんの?』

『んー‥まあまあだよ!。』

『‥ふーん。何かあればいつでも話聞くからまたメールしてよ。』

『ありがとう。でも隼人も彼女とかできたら申し訳ないし、連絡は大丈夫だよ。』

『いやいや、俺彼女いないから!それにもう女の子ともほとんど繋がってない!』

『そうなの?なんで?』

『まあ、ご縁がないせいで‥?』

『へー。んじゃまた相談乗ってもらおうかな』

『おう、まかせろ!』


その様子を頬杖をつきながら見つめる北川


『隼人は、花ちゃん大好きだね〜』

『はあ!?なに言ってんだよ!急に!』

『別に。』

『‥別にそんなんじゃないって。』

『ふーん。そう?』


するとヒラマサが戻ってきて、またみんなで話していた。どんどんお酒が回って楽しくやってきたのかみんな声が大きくなっていく。

隣に座っていた隼人がとても楽しそうに飲んでいた。仕事に対する意気込みを熱く語っているので面白かったので動画にとってまた後日送ってあげることにした。


『ちょっと!花!動画撮っただろー!』

『あ、バレた?面白くって』

『俺は真面目にしてんだぞ!消しなさい!』

『えーどうしよっかな〜』

『このやろうー!』


すると隼人が一度勢いよく花に抱きついてきた。顔がお互いの頬がつきそうなくらいひっついてきて少し焦った。

隼人は気にする様子はなくそのまま花のスマホを取り上げてきた。


『はーい!回収します!消去ー!』

『あっ!ちょっと‥!』


ヒラマサは、そんな2人を睨みつけるようにジーーと見つめている。

隣にいる寺倉はヒヤヒヤしてるが、それをみてる北川くんはニヤニヤが止まらない。

2時間ほど飲み食いして、そのままお会計になった。


ヒラマサと真緒と和紗がお会計のところで話してるので、真緒にお金を渡して、先に店の外に出た。すると、自販機で隼人がひとりで水を買っていた。かなり酔っているようで頭を抱えて自販機のそばでそのまま座り込んでいる。


『隼人。大丈夫?』

『あ、花。ごめん。ちょっと飲みすぎた。』

『気持ち悪いの?』

『うん』

『向こうに座れそうな場所あるよ。あそこまで歩ける?そこで休もう。』

『ありがとう。』


花は隼人の背中をさすりながら、2人で腰掛けられそうなとこまでやってきた。

そこに2人で腰掛けて、花からもらったペットボトルの水を開けて、飲む隼人。

花はそれを黙って見つめている。


『‥恥ずかしいわ。こんなとこ見られて。』

『飲み過ぎだから!なんであんなに飲んだの?』

『最近ずっと家で過ごしてたからみんなに会えてテンション上がっちゃったんだよね。』

『それでもだよ。ちゃんと自制しないと。もう社会人になるんだから。』

『そうだよなー頑張るよ。』

『しっかりしてよね。』

『‥そういえば、花さ、ヒラマサと喧嘩でもしてるの?』

『え?』

『さっき、大石がヒラマサに何か言ってたの聞いちゃったし、なんとなく2人に距離があるように感じたから。』

『そんなんじゃないよ。喧嘩はしてない。』

『喧嘩してないなら‥何かあったの?』

『‥喧嘩することもないね。1年以上付き合ってるけど、特に何も進展ないし、お互いに本音でも話し合えてない感じする。少し距離があるというか‥』

『あー‥なるほど。ってどういう意味?全然愛情表現がない的な?確かにあいつそっけなさそうだもんな』

『そうね、付き合ってるけど、手を繋ぐ以上のことは何もしてないの。』

『‥!!』

『びっくりし過ぎでしょ。』

『いや、え、え‥なんで?』

『分かんない。最初の方に私の体の調子が悪かったんだよね。そのせいで遠慮させちゃったのかもしれない。』

『‥な、なるほど。』

『私に魅力がないだけの話かもしれないけど‥』

『いやいや!それはない!それはないって!本当にない!』

『いや言い過ぎだよ、言いすぎて逆に嘘くさい』

『いやいや!!だって、んじゃどうやって言えば良いんだよ!花は可愛いし!綺麗だし!美人だし!優しいし!ご飯も美味しいし!努力家でいつも笑顔で頭も良いじゃん!』

『‥褒めすぎ』

『あ、ごめん‥。』


するとポタポタと花の目から涙が溢れてきた。


『えっ‥ちょっと待て、ごめん。俺が大きい声出したから?本当にごめん。』

『いや違う。なんか、虚しくなってきた。』

『え?』

『‥もう別れようかな。こんなことで悩んでるなんて、情けないよね。本当に好きな人にはなかなか好きになってもらえない。‥ヒラマサも他に好きな人いるのかなーとか思えてきた。』

『え‥そうなの?』

『誰かは言えないけど‥他にも、元カノさんとかと話した時も、数ヶ月しか付き合ってないのに、すごく仲良さそうだった。なのに私には何もしてなくて、何度もお泊まりしてるのに。私にはどこかよそよそしくて‥』

『‥うーん。んじゃさ、いっそ俺ともう一回付き合う?』

『え‥?』

『全然俺は良いぜ!』

『‥隼人から振ってきたのに何言ってんの』

『いや!それは‥その、花がヒラマサのことが好きだと思って身を引いたというか‥』

『当時の私、そんなこと一言も言ってなかったでしょ。』

『そうだけど‥』

『勝手なこと言わないで。好きだの嫌いだの、隼人に振り回されるのはもううんざりだわ。』

『あ、えっと‥なあ、花。』

『何?』


いきなりの告白に苛立ったように顔を背ける花の焦る隼人。

花が隼人の方を向いた瞬間だった。隼人は花の腕を引っ張って抱きしめようとした。

それを花は隼人の胸を押し返して抵抗した。

キッと隼人を睨みつける。


『‥!!』

『‥ごめん。』

『やめて』

『‥ごめん、でも俺さ、まだ花のことす‥』


『何してんだよ。』


隼人と花が声をする方を向くと、ヒラマサが立っていた。その少し後ろに北川くんが立っていて、隼人と花にウインクしながらごめんごめんと相槌してる。

ヒラマサは、いつもの甘い優しい声とは違う。聞いたことないような低く冷たい声をしていた。隼人の方を見る目は、鋭く冷たい。

怒っていることがしっかり伝わってきた。


『あの、ヒラマサ。これは‥』

『何してんだって言ってんだよ』


花が隼人の前に立とうとすると、ヒラマサがそれに被せるように声を出した。


『‥別に。』

『佑々木から離れろ』

『‥そ、そんなことヒラマサが言う権利あるの?』

『は?』

『ヒラマサが不安にさせるようなことしてるんだろうが!こんなふうにするなら別れろよ!俺が付き合う!』

『‥話にならないな。少なくとも別れるかどうかはお前を挟む必要ない。佑々木と俺の問題だろ。それが抱きしめようとしても良い理由にならない。』


ヒラマサは、怒った様子で西岡の前に立つと、西岡の胸ぐらを掴んだ。

西岡は175cmくらいあるがヒラマサは185cmある。見下ろしながら胸ぐらを掴むと結構な迫力がある。


『ちょっと、ヒラマサやめてよ!』

『西岡さ‥お前何考えんの?』

『‥俺は謝らない。お前が悪いんだろ?隙だらけなんだよ。付き合ってるからって、花がいつまでもお前に黙ってついていくとと思って気抜いてんじゃねえよ。』

『は?』


そんな2人の間に北川くんが仲裁に来た。


『ヒラマサも隼人も一回落ち着こう。まず、この手を離そう。ヒラマサ。』

『‥。』


するとヒラマサは西岡の胸ぐらを離した。

そのときに少し背伸びしていた隼人はやっと息ができるかのようにゴホッゴホッと軽く咳き込んだ。


『佑々木。もう帰るぞ。』

ヒラマサは、そんな隼人を見るとため息をついて、花の方へ体を向けた。 


『‥ごめん。』

『今はいい。話は後で聞くから早く行こ。』

『違う‥‥ヒラマサとは帰らない。』

『‥は?』

『私、今日は1人で家に帰る。』

『なんで?』

『ヒラマサと一緒にいたくないから。』

『‥本気で言ってるの?』

『本気だよ。ヒラマサもそうでしょ?』

『‥あのさ、さっきから何言ってんの?』

『帰るね。』

『ちょっと‥』


そのまま花はヒラマサの腕を振り払って足早にその場から立ち去った。

追いかけようとするヒラマサの腕を掴んだのは、西岡だった。


『何?』

『‥1人で帰るって言ってんだから1人でいさせてやれよ。』

『何言ったんだよ。お前が佑々木に変なこと言ったんだろ。』

『‥花、自分に女性としての魅力がないって落ち込んでたぞ。』

『‥は?どういうこと?』

『ヒラマサとは距離があるって、本音で話し合えてないって。花に手を出さないのはヒラマサなりの配慮なのかもしれないけどさ、それで不安にさせてちゃ意味ないだろ。』

『‥』

『それに、元カノ?らしきひととは、なんか数ヶ月しか付き合ってないのに、ラブラブだったとか‥』

『‥は?』

『いや別に!過去のことまで遡るのはどうかと思うよ?そりゃ俺も花とそりゃ‥深い関係にはなってたし?ヒラマサにもそういうひとが過去にいても全然不思議じゃないけど、そういう人がいるのに、自分だけに手を出してこないっていう状況がより一層花を不安にさせ‥』


『‥待て、それは佑々木が言ってたのか?』


テンパりながら話す隼人の言葉に疑問を隠せない様子のヒラマサ、隼人の声を遮るように話した。


『え、それっていうのは?』

『元カノと‥ラブラブだったっていうのだよ』

『ああ、言ってたよ。この前大学で元カノと会ったらしくて、その時に知ったらしいぞ。元カノ本人から聞いたって言ってたけど』

『‥なるほど。わかった。』

『な、何がだよ!話は終わってないぞ!これからも花のことをあんなふうに扱うなら俺が付き合うから花と別れろ!』

『別れるわけないだろ。佑々木は色々と勘違いしてる。誤解をとかないといけない。』

『はぁ!?』

『西岡。次、佑々木に変なことしようとしたら本気で殴るからな。あと、当たり前だけど酒の勢いで抱きつくのも禁止だ。』

『未遂だろ!って‥抱きつく‥そんなことしたっけ?』

『未遂なら許すとかないから。しらばっくれても無駄。それいうなら酒も禁止にするからな。』

『はあ!?』

『んじゃ、悪いけど佑々木の家に行くから』

『な‥!ヒラマサ!花に女としての魅力がないとか言ったんじゃないだろうな!』

『‥言うと思うか?』

『‥思いません。』


死ぬほど重たく冷たい視線を向けられて、静かに黙る西岡。


『けど、不安にさせてたのは事実だ。謝らなきゃいけない。』

『そ、そうだ!そうだ!』

『‥二度と佑々木に手出すなよ?』

『それはどうかな。花がもうヒラマサと別れたいって言ったら俺がもらうよ。次付き合えたら、もう別れない。』

『俺たちは別れないよ。』

『花のこと飼い殺しにしてるくせにか?もう今会いに行ってもどうせフラれるのがオチなんじゃねえの?』

『‥それでも勘違いされたままでいられるのは嫌だからな。簡単に諦めないよ。何年片想いしてたと思ってんだよ。』

『‥!!』


そういうと、ヒラマサはそのまま走って花の家まで向かった。

ヒラマサのキリッとした表情を見て、少し怖気付いた様子の隼人。走っていくヒラマサの背中を黙って見つめていた。


そして、そんな隼人の肩に手を置いて。


『ま、飲み直しますか?』


とニコニコしながら北川と横には真緒と和紗と寺倉もいた。

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