甘い時間
花はいつも通り大学に行っている。
今日は由奈ちゃんが風邪をひいてしまい、休みだ。和紗は就職する会社でのインターンがあるらしく大学を休んでいる。
1人で大学で講義を受けて、ゆっくりしている。みんないないから寂しいなぁ‥。
食堂へ行くために歩いていると廊下ですれ違いざまに肩がぶつかった。
男子生徒3名ぐらいだ。
‥今、わざとぶつかってきた。
『あ、すみませーん!』
『よそ見してました〜』
『ちょ、お前やめろよ、』
ニヤニヤしながらくすくす笑っている。
めんどくさい‥。
気持ち悪いので、その場を無視して急いで去ろうとする。
『え、無視ですかー?』
『‥』
『そういえば、佑々木先輩ですよね?』
『噂より可愛いっすね!』
『なんなんですか‥』
『もう学校来れるくらい元気なんですかー?』
『俺らとも一緒に遊びません?』
おそらく他学部の2年か3年だろう。
チャラい雰囲氣で花が最も苦手とする人間だ。
『おい。お前ら何してんだよ』
『‥!隼人!』
隼人が花の後ろに立っていた。
今まで見たことないくらい怖い顔をしており、聞いたことないほど低い声をしている。
『え、なんすっか?彼氏?』
『彼氏いるって聞いてないけど』
『別に肩がぶつかったから謝ってただけですよー。ついでに一緒に遊びませんか?ってお誘いしてただけっすよ。綺麗な人だったんで。』
『そうそう、ただのナンパだけど?』
『そういうのは間に合ってるから、いちいち絡みに来るんじゃねえよ。』
『は、だる』
『めんどくさ、行こうぜー』
そういうの男子学生は去っていった。
『隼人、ありがとう。』
『大丈夫?』
『うん。助かったよ〜ちびで舐められやすいせいで、あーゆうのにたまに絡まれるんだよね。和紗達がいない時だと特にさ。情けないー』
『‥今日は由奈ちゃんも和紗もいないのか?』
『うん。和紗はインターンで、由奈ちゃんは風邪ひいて休んでる。』
『んじゃ俺が一緒にいるよ。お昼ご飯は食べたの?』
『え、いいの?ありがとう‥今から行こうと思ってたの。』
『んじゃ一緒に行こう。』
隼人と一緒に食堂に行き、ご飯を食べる。
『そうえば、隼人、あれから彼女とか出来てないの?私と一緒にいて大丈夫?』
『出来てないよ。彼女どころか女子ともほとんど話さないな。和紗と由奈ちゃんと花だけだよ。あと、大石か。』
『そ、そうなんだ。意外。』
『なんで?』
『隼人って意外とモテるでしょ?』
『‥意外ってなんだよ!』
『ふふ、別に。もっとモテてもいいし、素敵な彼女がいでいいのになって思うだけ。』
『‥もうしばらくはつくんないよ』
『私に遠慮してるなら本当に気にしなくていいよ。美久ちゃんのことも隼人のせいじゃないし、気にすることないよ。』
『そう言ってくれると助かるよ。‥花はヒラマサとどうなの?付き合ったの?』
『あ‥まあ、一応ね』
『そうなんだ。上手くいってんの?』
『うーんどうだろうね。まあまあかな。』
『そっか。幸せそうでなにより。』
『ありがとう。』
『どこかでかけたりしてんの?』
『うーん、あんまりしてないかな。てか、ほとんど行ってないよ。私の家に来るか、近所ぶらぶら散歩するかのどっちかだよ。』
『へー‥花の家ね。』
『なによ?』
『別に。行ったことないな〜と思っただけ』
『隼人と別れた後に引っ越してきたからね。仕方ないよ。』
『ふーん、大丈夫なの?男が出入りしててさ、管理人さんとか何も言われないの?一応寮だしさ。』
『近所迷惑にならない限り特に何も言われないよ。寮っていっても、大学教員や附属病院のスタッフも使ってる社宅も兼ねてるし』
『あ、そうなんだ。』
『うん。ヒラマサが来てもご飯食べて、そのまま勉強して、気づいたら寝てるし。ヒラマサ静かだからなんともないよ。この前由奈ちゃんが部屋でバンド仲間と楽器演奏してたらさすがクレーム来たって言ってたけど』
『それは由奈ちゃんが悪い』
『だね〜』
『‥ヒ、ヒラマサとはどこまでいったんだ?』
『ん?何が?』
『いや‥だから、どこまで?』
『どこまでって何?』
『だから‥その、キ、キスとか?』
『はぁー?』
『なんだよ。』
『別に、手繋いだだけよ。』
『‥え?家で泊まってんのに?』
『うん。そうだけど?』
『‥ヒラマサは別に何もしてこないのか?』
『してないこないけど‥??』
『‥』
『‥何よ?』
『別に‥』
『なんなの?』
『いや、偉いなぁと思って。』
『何が?』
『ヒラマサが』
『ん?なんで?確かに‥すごい手伝ってくれるけど。ご飯作るのとか。ここ1週間は、研究が忙しいみたいで来てないけどね。』
『うん、まあ、そうだな』
『‥我慢させてるって言いたいの?』
『‥別に。ヒラマサは、花のことを思っての行動だろうし、凄いな。愛されてるなって言いたいんだよ。』
『‥そう。』
『俺ならすぐ手が出てしまう。好きな子が同じ空間にいたら我慢できないね。』
『隼人は、性欲強すぎだから』
『なっ‥!!』
『んじゃ、もう行くよ?』
『あ、待てよ!』
そのままお盆を返しに行く花を追いかける隼人。
その後2人は、同じ講義を受けて、一緒に帰ることになった。
『もー寮まで徒歩15分なんだから帰れるってば!!』
『なんだよー心配だから送っていくよ』
『いつも1人で帰ってるし!』
『朝の馬鹿みたいなやつに絡まられたらどうするんだよ!』
『大丈夫だって』
『だって、ヒラマサも今忙しいから来れないんだろー?』
『そうだけど、1人で生活できるから問題ない。』
『あ、花。頭に何かついてるぞ』
『ん?』
隼人が花の頭に乗った桜の花びらをとった。
『あ、ありがとう』
『桜が綺麗だな』
『そうだね。4月には散っちゃうもんね』
『またみんなでお花見とか行きたいな〜』
『あ、いいね。また声かけようか』
『おう。風月来てくれるかな。』
『北川くん?』
『そう。最近忙しいみたいだから』
『へー。隼人は北川くんと仲良しだもんね』
『そうだな‥今度ライブ行くんだよ。一緒に行くか?』
『あ、いいね!一緒に行こうかな!』
『あれ、花。あそこに立ってるスーツの人』
『ん?』
花が大学の門の前を見ると、スーツ姿のヒラマサが立ってこっちを見ている。
『あ!ヒラマサだ!』
『やっぱり。』
隼人と2人で駆け寄ると、ヒラマサはいつも通りの澄ました顔をしている。
『どうしたの?研究は?』
『とりあえず落ち着いたよ。今日は教授と一緒に民間のロケット開発してる企業を見学に行ったんだ。』
『へー‥就活?』
『まあ、そんなとこだよ。んで、なんで西岡いるの?何してんの?』
『えっ、別に一緒にいただけだけど』
『朝、嫌な男子学生に絡まれちゃって隼人が助けてくれたの。今日は和紗も由奈ちゃんもいなかったから隼人が一緒にいてくれたの。』
『そうなんだ。悪いな、ありがとう。』
『いや、別にいいよ。悪いことなんかないし』
『‥花。一緒に帰ろうってメールしたけど返信なかったな。忙しかったのか?』
『え?そうなの?ごめん全然気づかなかった。』
『んじゃ帰ろう。』
『あ、うん。』
『んじゃ俺は邪魔みたいなので俺も帰るわ!んじゃな!花!ヒラマサ!』
『うん。ありがとうね!』
『またな。』
そのまま、隼人は帰っていった。
ヒラマサと2人きりになる。
すると、ヒラマサが花の頭に触れてきた。
『‥ん?何?何かついてる?』
『別に。帰ろ。』
『うん。』
するとヒラマサは、手を差し出してきた。
『‥ん?』
『手‥繋ごう』
『あ、うん。』
ヒラマサの手を握る。
するとそのまま家に向かった。
家に着くと、花は荷物を置いた。
ヒラマサは、スーツのジャケットを脱いで花に渡されたハンガーにかけた。
『‥ヒラマサのスーツ姿って新鮮だね』
『確かにあんまり着ないしね』
『カッコいい‥』
『‥そう。』
細身でスタイルがいいヒラマサがスーツを着るとシャキッと着こなせているのもありすごくかっこいい。様になっている。
リクルートスーツなのに、めちゃくちゃ良さげなスーツに見えてくる。ヒラマサマジック。
『佑々木。』
『ん?』
『‥西岡と仲良しだな』
『そ、そうかな?まあ、友達だしね。同じ大学だから過ごす時間も比較的長いよね。』
『なんの話してたの?さっき』
『え?』
『なんの話してたの?』
『別に普通に、日常会話だよ‥?普通の話』
『例えば?』
『‥別に大したこと話してないよ。』
花がお茶を注いだコップを持って、テーブルに置いた時。
ヒラマサが花の手を握って顔を近づけた。
『‥俺には言えない話なの?』
『‥!!
だから‥みんなでお花見行きたいね、とか、北川くんのライブ活動の話しとかだよ。』
ふと隼人と話した言葉を思い出す。
‥我慢させてる。ヒラマサは優しいから花のことを想って触れるのを我慢してるんだ。
それを思い出した顔が赤くなる。
『‥何?何か思い出したの?』
『ヒ、ヒラマサ‥のこと話してたの』
『俺のこと?』
『ヒラマサは、優しいから‥きっと色々我慢してるんじゃないかって‥。』
『‥我慢?』
『‥そうだよ。ヒラマサは優しいから、無理させてるんじゃないかって思って、でも隼人はヒラマサは花を思ってしてることだから甘えてもいいんじゃないかって‥』
『‥はぁ。』
『え?なに?』
『‥別に何もないよ。』
そういうと、ヒラマサは花の手をそっと離して、近づけてきた顔を離した。
『え?なになに?』
『‥ごめん。ちょっと妬いた。』
『え』
『あんまり他の男と仲良くしないで欲しい』
ヒラマサは手で顔を覆いながらそう呟いた。
頬は赤く染まっている。
気まずそうに視線を逸らしている。
『‥ヒラマサがヤキモチ‥??』
『‥悪いかよ。』
『‥可愛い‥。』
『‥うるさい。1週間ぶりに会うのに佑々木は寂しくなかったのか?』
『さ、寂しかったよ』
『んじゃあ‥』
そういうと隼人は、手を握ってきた。
すると、その手に指を絡めてきて恋人繋ぎにそれを自分の顔付近に近づけて花の手の甲に軽くキスをした。
『これぐらいしても許されるよね?』
『‥!!!』
な、な、な、何をしているんだこの男!!
今まで女の子と付き合ったことないんだよね?
なのになんでこんなに王子様みたいなことできるの!?
心臓バクバクするんだけど!!!!
耳まで顔が赤くなる。
『うん‥、』
そのまましばらくヒラマサと手を繋いでいた。




