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バレンタイン

バレンタインデー。

和紗と由奈ちゃんと真緒と一緒に買い物をするために街の中をぶらぶらと歩いている。


『そういえば、もうすぐバレンタインね。』

『ねー!私は、好きなブランドのチョコを予約したのよ!』

『真緒ってチョコ好きだったの?』

『私じゃなくて、彼氏にね。』

『あ、噂のイタリア人やろ?』

『ハーフね!イタリアと日本のハーフ!』

『イタリアのチョコレートなの?』

『ううん。彼はチョコレートはドイツのやつが好きなのよ。』

『へー。』

『花ちゃんはひらまさくんに何かあげるん?』

『え?』

『え?じゃないでしょ!ヒラマサ甘いもの好きだし喜ぶんじゃない?』

『あー‥確かに。』

『確かにって‥西岡と付き合ってる時は何かあげなかったの?』

『あ、隼人にはチョコレートケーキとかあげてたかも。』

『なら何かあげないと可哀想じゃん』

『そうかな?』

『そうでしょ!』

『そーやろ!』


そのまま何をあげるか考え込む花。

それを見つめる由奈ちゃん。


『なあなあ、花ちゃん。うちと一緒に作らへん?チョコレートケーキ!』

『ええ!?いいの!?』

『え!由奈ちゃん作れるの?』

『え!知らないの?和紗。』

『由奈ちゃんの実家、ケーキ屋さんだよ。由奈ちゃんもお菓子作りすごい得意なんだから』

『ええ?そうなの?なんでみんなそんなこと知ってるの?』

『えへへ♪ムンスタにケーキとかクッキーとか手作りスイーツの写真たくさん載せてるからやな。和紗ちゃんムンスタしてないもんな。』

『あ、なるほど。それで知ってるんだ。』

『え!それなら私も教えてほしい!』

『高級ドイツチョコと一緒に渡すの?』

『わ悪いの!?彼は、手作りがいいって言うのよ。けど、私は料理が得意じゃないから‥。でも由奈ちゃんが一緒に作ってくれるなら心強いわ!』

『ええよ!みんなで作ろう!和紗ちゃんも』

『え?私も?』

『うん!』

『私は別に、渡す人いないし‥』

『パパに渡したら?』

『あ、パパね。なるほど‥それは喜んでくれるかも』

『由奈ちゃんは誰に作るの?』

『大好きなバンドマンがおるねん。ライブ行く時にその人にあげるんやー♪』

『へー!そういえば由奈ちゃんバンドマン好きって言ってたよね』

『うん!それぞれみんな好きな人に作ろう!』

『うん!楽しみー!』


その流れで後日、同じ寮に住む由奈ちゃんの部屋に待ち合わせすることになった。


『そういえばここって寮なのに、以外もゆるいよね。普通、もっとさ、来客禁止!とかないのの?』

『ここはあんまりないよね。』

『うん。近所迷惑にならなければOKやで。』

『ゆる』

『附属病院に勤めてる職員や大学教員も利用してるアパートだから半分社宅みたいなもんだよ。寮にしては比較的プライベートは保たれてるのね。』

『へー!いいわね!それでいて家賃安いんでしょ?』

『敷金礼金なし。学生は家賃光熱費水道代込みで5万円!』

『やっす!』

『大人は?』

『家賃光熱費水道代込みで7万だよ。』

『ほんと!?安いね!この辺なら安くても1DK10万からでしょ?オートロックとインターホンモニターと管理人付きでこれは破格だ。』

『由奈ちゃんの部屋はよく来るからご飯一緒に食べたりしてるよ。』

『うん。花ちゃんきてくれて嬉しかったなあ』

『ちょっとそんなことよりチョコレートケーキでしょ?』

『あ、そうだった。』


由奈ちゃんはキッチンでボウルや泡立て器、ヘラなどの調理器具を準備し始めた。


『みんな、前日に送ったレシピ通り、材料買ってきた?』

『買ってきたよ』

『よし、ほんなら作ろうか!』


みんなでケーキを作ることになった。

由奈ちゃんのレシピは間違いなく美味しいので、みんなで手作りを頑張って綺麗なケーキを作った。


『可愛い!すごい!私天才かもしれない!』

『真緒の自己肯定感の高さは異常ね』

『低いよりいいでしょ』

『あはは、でも真緒は手先が器用だから周りの飾りもめちゃくちゃ綺麗だよ。』

『花、ありがとうー!』

『みんな綺麗やなー!花ちゃんのも可愛い』 

『ありがとう。』


ハートの型に入れて焼いたハートのチョコレートケーキにイチゴで作ったソースを添えている。


『こっちも焼けたで〜』

『あーー可愛い!!!!』


クマの形をしたオートミールのクッキーだ。


『食べちゃおうかな♪』

『コラ。彼に渡すんでしょ?』

『わかってるわよ‥』

『ラッピングしよう♪』

『うんうん!しよっー!』


ラッピングも完了して無事作ることができた。


『‥お腹すいた』

『出前でも取る?』

『ピザ食べたい!』

『ピザいいねー!』


お昼は、出前でピザを頼んだ。

みんなで楽しくワイワイして夕方に各自解散することになった。

由奈ちゃんは夕方から好きなバンドマンのライブへ行くために準備を。

真緒は、彼に会いに行く。

和紗はパパにチョコケーキを渡すために今日は実家に帰るようだ。

花は、夜にヒラマサが家にくるのでその時にこれを渡そうと思っている。


飲み会でのやり取りがあってからというのも、ヒラマサは、週3回、4回の頻度で家にやってくるようになった。週に2回は泊まっていく。

けれど、1度も身体に触れたことはない。

ベッドで寝てる時も床に布団を敷いて寝ているし、食事も買ってきて上手に作ってくれる。

訪問ヘルパーを受けてる気分‥。

いつも助けてくれるしお礼として渡せばいいよね‥。


夜6時過ぎになり、食事を作っているとヒラマサがやってきた。


『あ、お疲れヒラマサ。』

『うん。お邪魔します。』

『どうぞ』


ヒラマサはいつも通りの雰囲気だった。


『あ、佑々木。来週から研究室にしばらく篭りきっりになることになったんだ。データ整理とか入力作業に入るから‥1週間は来れないかも。ごめん。』

『あ、全然いいよ。むしろこんな毎日来なくていいよ』

『‥そうか。あれから発作は起きてないのか?』

『そうだね。特に何もなく過ごせてるよ。』

『今日は午後からみんなと遊ぶって言ってただろ。なんともなかったのか?』

『あ、真緒達ならちょっと身体に触れるぐらいだったら全然問題なく過ごせるようになったよ。』

『そうなんだ。』

『うん。カレーあるけど食べる?』

『食べる。ありがとう。』


ヒラマサがが手を洗って食事を食べる。

テレビを見ながら2人で話をしながら食べる。

花にとって、これが何気に1番安心する時間だ。

‥来週から1週間来ないのか。寂しい。

でもこんな高頻度で来られる方がまず珍しいよね‥マウンテンバイクで片道1時間弱かけていつもきてくれてるし感謝しなきゃ。


カレーを食べ終わって、皿をシンクへ持っていく。そろそろ渡そうかな‥。


『なあ、さっきから何をソワソワしてるんだ?』

『え?』

『落ち着かなさそう。体調悪いのか?』

『そんなこと全然ないよ!』

『そうか?ならいいけど‥』

『ヒラマサ!』

『なに?』

『ちょっと向こう行ってテレビ見てて!』

『ええ?』

『いいから向こう行ってて!』

『分かったよ。』


冷蔵庫からケーキを取り出してさらに綺麗に盛り付ける。

ヒラマサは、言われた通りテーブルの前でタブレットを触っている。

花が気になるようでチラチラと花を見てる。



『ひ、ひらまさ、』

『ん?なに?』

『これ‥良かったら食べて』


そういうと花は、さらに綺麗に盛り付けたハートのチョコレートケーキを出した。

横にはラッピングしてあるクマのクッキーも置いてある。


『‥美味しそう。どうしたのこれ?』

『今日みんなで作ったの。バ、バレンタインだから。』

『‥!!佑々木ってバレンタインの文化知ってたんだ。』

『なっ!バカにしないでよ!』

『いや、だって、高校から大学まで見てきたけど、一度もバレンタインに便乗してる姿を見たことなかったから。』

『あります!高校の時は校内での手作りお菓子のやり取りは禁止だったから、友達とお菓子交換したりしてたよ。大学の時は、隼人にはチョコ作って渡してたし‥』

『あ‥なるほど。』

『だから、食べて!ケーキは初めて作ったから上手くできてるか‥でも、レシピは由奈ちゃんの指示通りに作ったから美味しいのよ!美味しくなかったとしたら私の腕がなってなかっただけの話だから!』

『初めてケーキ作ったのか。』

『うん』

『そうか‥嬉しいよ。ありがとう。』

『うん!食べて!』

『‥』

『‥食べないの?』

『いや、勿体無い。食べるの勿体無いからこのまま液体窒素で凍結させて保存させたい。』

『いや食べてよ』

『勿体無い。』


そういうと、ヒラマサはタブレットを開いて写真をかしゃかしゃと10枚ほど撮影した。


『‥』

『もう食べないなら私が食べる』

『食べるよ!食べるから!』

『‥早く食べて』

『はい。』


そういうと、ヒラマサはそっとフォークを取ってケーキを食べた。


『すごい美味しいよ。今まで食べたケーキの中で1番美味しい。』

『それは褒めすぎでしょ‥』

『いやほんとに。ほんとに美味しい。』

『バレンタインだからね』

『‥バレンタインだから好きな人に渡したってことでいいの?』

『‥うん。そうだけど。そもそも義理チョコとか作らないし‥。』

『んじゃ、佑々木は俺のことが好き。』

『‥そ、そうだよ。』

『そっか。』

『‥いつもありがとう。ヒラマサのこと好きだよ。本当に。』

『‥うん。俺も好き。』

『これからもよろしくね』

『うん。よろしく。』


付き合って、1ヶ月経ったが、一度もヒラマサに触れていない。

ヒラマサのテーブルに置いてる手にそっと手を伸ばした。

ヒラマサの手に触れてみる。


『‥佑々木』

『大丈夫だよ。』

『そうか、ならよかった。』


‥息切れも拒否反応もない。ただ‥ドキドキする。これは、動悸じゃなくて、緊張してるだけだ。

ヒラマサの手は、細くて長くてとても綺麗。

少し骨っぽく男の子っぽい手でもある。

花よりひとまわりぐらい大きな手をしている。


すると、ヒラマサは花の手を握り返してきた。

指を絡めて恋人に握りをしている。


なんだか恥ずかしくなってきた。


『佑々木。大丈夫?顔赤いけど』

『‥恥ずかしいから顔見ないでよ』

『ごめん』


ヒラマサは手を離す気配がない。


『‥いつまでこうしてるの?』

『しばらくこうしてる。』

『そっか‥』

『佑々木の手小さくて可愛い』

『‥ヒラマサの手が大きいんだよ』

『そうでもないけど、ただこうしてると心地良いんだ。』

『私も、安心する。』

『一緒だな』


そのまま2人は噛み締めるようにずっと手を繋いでいた。

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