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それぞれ再スタート

4月になり、私たちは大学5年生へ。

北川くんは大学卒業し、音楽制作会社に就職した。

ヒラマサは、大学院へ進学し、宇宙工学の研究室に入り研修に明け暮れることになる。

真緒は芸大を卒業し、アパレル会社にデザイナーとして就職した。

そして、私と和紗と隼人と由奈は薬剤師臨床実習が始まった。

薬学部にいるものは、5年生の時に病院で11週間、薬局で11週間の計22週間にわたって必修の臨床実習を受けなければならない。


実習生は実際の医療現場で、調剤、服薬指導、医薬品管理、疑義照会といった薬剤師の業務を経験し、実践的なスキルと患者への対応力を身につける。実習前には、知識や技能が一定のレベルに達していることを証明する「薬学共用試験(CBT・OSCE)」の合格が必須であり

当然全員合格できた。


隼人とはあの日以降ほとんど喋らなくなったし、連絡もとっていない。


ただ前ほど険悪なムードではなくなった。


実習着として支給される白衣を着て、大学附属の病院へ実習へ行く。

夢である病棟薬剤師になる大きな一歩だ。

そして、5名から6名の実習グループが発表された。


和紗と同じグループになった。


由奈は隼人と同じグループになったようだった。


『和紗と一緒なんて心強い』

『うん。頑張ろうね』

『うん!』


『西岡くんと同じグループなんて心強いなぁ』

『それはどーも‥』


隼人は由奈ちゃんが苦手なようで気まずそうに視線を逸らした。

その時にパッと隼人と目があった。


『‥花、体調は大丈夫なのか?』

『うん。大丈夫だよ。ありがとう。』

『お互い実習頑張ろうな。』

『そうだね!頑張ろう!』


変わらず接してくれる隼人に安心した。

中絶手術を受けたことはみんなに頼んで内緒にしてもらった。知っているのは、西岡と和紗と由奈ちゃんだけだ。


そして実習が始まった。

実習はとても大変だったけれどすごく楽しかった。やっぱり私は病院でなく薬剤師の仕事がしたいと改めて思うことができた。

4月から始まった実習は、8月末でやっと全てがおらせることができた。



2024年9月


今日全ての実習のレポートを書き上げて提出し、無事終わった。


『花、かずさ。お疲れ.』

『あ、隼人!お疲れさま』

『おーおつかれ。』

『病院実習どうだった?きつかったろ』

『んー大変だったけど、すごい楽しかったよ。指導者の人がすごい熱心に丁寧に教えてくれて良かった。』

『熱量がね.すごかったね.』

『あ、あの人な。けど、めちゃくちゃ勉強しなきゃいけなかったろ?』

『それはそうだった!けど楽しかったな‥また行きたいもん。』

『うわまじか。すげえな。』

『でしょ?私はもういいかな.』

『由奈ちゃんさ、調剤薬局での実習すごい楽しそうだったよ。ずっとおばちゃんたちと喋ってた。コミュ力すごいなあの子.』

『想像できるー!』

『あ、そうだ。北川が実習終わったらみんなで飲みに行こうって言ってたんだよ。仕事が辛いらしくて気分転換したいんだってさ。』

『へー!いいね!』

『寺倉やヒラマサも誘う?』

『うん.そうしよっかなーと思って、一応声かけてるとこだよ。』

『なるほどね!いいよ!あ!真緒も誘いたい!』

『いいねー!』

『パーっと飲みに行こうか!』


実習が明けたので、みんなで飲みに行くことになった。

実習が忙しかったのもあり、ヒラマサとはたまに連絡を取り合うレベルでしか話してなかった。久しぶりだな.会うの。


当日.隼人、和紗と3人でお店に行くと、真緒や北川くんが先についていた。


『やっほー!みんな!久しぶり!』

『久しぶりだね、北川くん.』

『なんか社会人って感じの格好だな』

『会社はスーツ通勤じゃなくてビジネスライクなセットアップやシャツならOKだからね.だいぶラフだよ。けど、忙しくて頭パンクしそうだよ。』

『どんな仕事してるの?』

『レコーディングとかミキシングとかしてるよ。今は新人だからね、6月ぐらいまでがっつり研究してたよ。やっと現場入りしたりしてる。』

『へー‥なんか大変そう』

『まあ、でも楽しいよ。就きたい仕事に運よくつけたからね。頑張りたい。』

『へー、えらいね.頑張ってね.』

『学生の頃がもうすでに懐かしいよ〜』

『ねえねえ、真緒の仕事はどう?』

『うーんそうね。ひたすら雑用ってとこかな。

先輩たちの仕事の補助についたり、勉強したり、空き時間でデザイン考えて、先輩に見てもらって‥実はね、2ヶ月後にイタリアに連れてってもらえることになったの!今勤めてるとこのトップが私のこと気に入ってくれて、ファッションショーがあるからついてきなさいって!すごく楽しみ!』

『ええー!すごい!羨ましい!!』

『イタリアなんて行ったことないや』

『イタリアって行ったら、ローマやフィレンツェだよね!パスタやピッツァが食べれるじゃん!』

『私が行くのミラノだけどね!』

『ミラノ!ミラノコレクションとか聞いたことあるような気がする.』

『モンテ・ナポレオーネ通りってとこ知ってる?』

『『知らない』』

『知ってるよ.プラダとかフェンディ、グッチとかの高級ブランドがたくさん立ち並んでる日本でいう銀座みたいなとこでしょ?』

『そうそう!さすが北川ね!そこに行くの!』

『いいなー羨ましいよ。写真とか見せてね.あとファッションのこととか今度個人的に色々教えてほしい.』

『良いわよ!』


そんな話をしていると、ヒラマサと寺倉がやってきた。


『ごめんね!みんな、おまたせ!』

『遅れた。ごめん。』


『んじゃみんな揃ったし、乾杯しよー!ヒラマサと圭吾何飲むー?』

『あ、俺はウーロン茶でいいよ』

『僕はカシオレ!』


ヒラマサとは目が合う。


『佑々木、久しぶり.元気そうだな.』

『うん!ひささしぶり!元気だよ!』

『‥』


花の隣に座っている隼人は少し気まずそうな顔をしている。


『花。これ頼んだやつやろ?ピーチウーロン』

『あ、そうそう!ありがとうー!隼人は、何頼んだの?』

『俺は、バイクで来たしノンアルカクテルだよ。』

『美味しそうだね.』

『一口飲む?』

『いいの?』

『まだ口つけてないしいいよ』

『ありがとう!』


花は、隼人から一口もらってグラスに口をつけた。


『美味しいね!次これ頼む!』

『美味しいからおすすめだよ』


仲良さそうに話す隼人と花をジーと見つめる

ヒラマサ。

別れたんじゃないのか‥?という顔をしている。

そんな花がヒラマサと寺倉に声をかける。


『ねえねえ、2人とも何頼むー?もう塩唐揚げとフライドポテトと軟骨の唐揚げと頼んだよ!』

『揚げ物ばっかりだな』

『だろ?花は胃腸弱いくせに脂っこいものばかり食べたがるんだよ。』

『文句があるなら隼人だって好きなもの頼めばいいでしょ?』

『しかも、みんなが来るから天ぷら盛り合わせ2つ頼もう!とか言い出すんだよ。食い意地はりすぎなんだよ。』

『みんな好きでしょ!?』

『ちなみに俺は鶏のたたきともずく酢、チョレギサラダを注文しといたよ』

『あはは‥どっちが男か女か分かんないね』

『寺倉くんは何頼むの?』

『うーん僕は‥あ、ヒラマサ何か頼む?』

『‥』

『おーい!ヒラマサ?』

『‥あ、えっと.茄子の田楽』

『おっけー!』


仲良しそうに話す2人を見てモヤモヤするヒラマサ.別れたのに‥あんなに泣いてたのに.

なんでこんなに仲良さそうに話してるんだ?

頭にハテナがたくさん浮かんでいる。


『あ、そうだ。ヒラマサ。大学院はどんな感じなの?』

『あ、別に‥そんなに変わらないよ』

『そうなんだ。』

『変わらないことないだろ』

『まあ、ずっと研究してるって感じ。』

『まあ、理系の大学院だもんね』

『うん。』

『佑々木は?実習どうなの?』

『あ、もう終わったよ!結構楽しかった!』

『楽しかったって言ってるの花だけだけどな』

『えー、なんで?』

『まあ楽しくはなかった.勉強にはなったよね!』

『そうなんだ。どんなことすんの?』

『えっとね〜』


花はヒラマサに実習の話をたくさんした。病棟実習と薬剤実習があって、自分はとても病院実習が楽しかったのだと話していた。

ヒラマサは、それを嬉しそうに話を聞いていた。


『そっか。良かったな。将来は病院で薬剤師でもするのか?』

『うん!そうするつもりだよ!』

『そっか、病院に行って佑々木みたいな元気な薬剤師さんがいたら嬉しいな。』

『ほんと?嬉しい!』

『うん。元気でるよ.』


飲み会は21時には終わった。

みんな明日も早いようなので解散することにした。


『楽しかったね!久しぶりにヒラマサと話せて良かった!でも、私ばっかり話してたかも、ごめん。ヒラマサの話も聞けばよかったよ。』

『いいよ.俺のことは、聞いてる方が好きなんだ。』

『‥うーん.んじゃまた今度話そうね』

『うん。またなんかあったら連絡するよ。』

『面白い話聞かせてね』

『面白いことがあったらな』

『へへ‥』 


すると、隼人が声をかけてきた。

 

『花、俺このままバイクで帰るけど方向一緒だろ?後ろ乗ってけよ。1人で帰るの危ないしついでに送っていくよ。』

『あ、うん。ありがとう。』

『‥あのさ、佑々木』

『ん?』

『西岡とは別れたんだよな?』

『うん‥そうだよ』

『なのに距離近くない?』

『え?そうかな、隼人は誰にでもあんな感じだよ。女の子がいたらちゃんと家まで送ってくれるタイプだし。』

『‥そうか、んじゃ俺が送っていくよ』

『え?』

『は?』


花と隼人が声を揃えてポカンと驚いている。


『佑々木は俺が家まで送るから西岡は帰っていいよ。』

『‥あ、そう。んじゃこのまま帰るわ。』

『お疲れ.』

『え、え?え、‥ヒラマサの家ってどこ?真反対じゃない?悪いよ』

『全然いいよ。気にしないで.ちゃんと家まで送るから』

『‥あ、ありがとう』


ヒラマサの真剣な表情についドキッとしてしまい、耳まで赤くなる。

その様子をみて、ムスッとした顔で隼人がその場を去ろうとするので北川がスッと隼人の隣に行ってニヤニヤしている。


そして、花とヒラマサは2人で電車に乗った。


『花って家こっちだっけ?』

『うん。今1人暮らししてるんだよね.』

『あ、実家暮らしだったのにとうとう出たんだ』

『バイトしてお金も貯まったから、実習始まる前に学校の近くの寮に引っ越したの。家賃光熱費水道代込みで28000円だよ!』

『安っ!!女子寮?』

『違うよ、男の子も住んでる。普通のマンションみたいな見た目してるから一見すると分からないけどね、オートロックで常に管理人さんがいるから安心なんだ。』

『へー安くて安心ならいいな。』

『ちょっと狭いけどね』

『そんな好物件なのになんで今まで住まなかったの?西岡は同じアパートに住んでるの?』

『すごい人気だからなかなか空きが出なかったの。けど、去年の3月に空きが出て応募したら入れたんだー!隼人は、寮の近くの普通のアパート住んでるよ』

『そうなんだ』

『ヒラマサどこに住んでるんだっけ?』

『俺は普通のアパートだよ。学生が良く一人暮らしで使ってる駅前にある安めのアパート。花の家からだと電車使って15分くらいかな。駅の真横だから何かと便利だよ.』

『へー!誰かよく来るの?』

『人が来ることほぼないな。寺倉ぐらいだよ』

『そうなんだ。‥ちょっと遠いのに、わざわざごめんね。』

『全然いいよ。』

『明日は早いの?』

『明日は昼前から大学に行く予定。夜10時ごろまでいるよ。』

『へー‥なかなかハードだね』

『うん。4年生のフォローや指導もしなきゃいけないから。自分の研究は今ひと段落ついたから落ち着いてるよ..』

『そっか』

『データ解析の時は泊まり込みが必要で先週までは泊まり込みしてたよ。』

『そ、そんな感じなんだ』

『うん.けど楽しいよ.』

『へー』


駅に着いて降りる。

改札を降りようとするヒラマサを止めた。


『ここでいいよ。送ってくれてありがと』

『大丈夫?駅から近いの?』

『ここから歩いて10分くらいのとこだよ。人通りも多いいから平気だと思う.』

『そっか‥』

『うん!送ってくれてありがと!またね!』

『佑々木はさ、まだ西岡のこと好きなの?』

『え‥?』

『好きなのかなと思って』

『‥友達としては好きだけど、もう付き合うとかはないかな。』

『そっか‥んじゃまた一緒にご飯でも行こう』

『うん、またみんなに声かけなきゃだね』

『‥そうじゃなくて、今度は2人で行こう』

『!!』

『今度は2人で行きたい。また連絡するから』

『うん‥連絡待ってるね』


そのままヒラマサは去っていった。

花は改札からヒラマサを見送った。


どうしよう、まだドキドキしてる。

ヒラマサ、顔色ひとつ変えずにあんなセリフ吐くんだもん。何考えてるか全然分かんないよ‥。高校の時の方がまだ分かりやすかった。

ただ、2人で行きたいってことは‥そういうことだよね?

どうしよう‥

花は1人で頬を赤く染めながら急いで家まで帰った。

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