隼人と花ちゃん
西岡が大学のキャンパス内にあるカフェで勉強してると美久ちゃんが駆け寄ってきた。
西岡の向かいの席に座った。
『西岡先輩〜』
『おつかれ、何?』
『関係性が深くなってから素っ気なくなりましたね?』
『‥都合のいい雑に扱われる女がいいって言ったのはそっちだろ。というか関係性も深くないだろ。』
『えーでも、西岡先輩の家で2人でお粥食べたりしましたよね?』
『それだけだろ』
『キスもしました!』
『一度だけな。お前が無理やりしたやつな。』
『それ以上のことも‥』
『してません』
『いいんですよ?しちゃっても‥??』
『‥』
『無視!!ひどーい!!』
美久は、以前アパートまで無理やり押しかけてきた。むしゃくしゃしてた時だったので、キツく言って追い返そうとしたものの何度きつく言っても帰ることがなくそのまま部屋の中に入ってきた。
それ以降こんなふうに絡みにくるようになった。
何度も家にやってきて夕ご飯を食べて泊まって帰っていく。
付き合ってはいない。体の関係もない。
まさか、大学に入ってこんなのに付き纏われる日が来るとは‥ただ、花のことを思い出して辛い日や花に会いたくて仕方ない日に美玖ちゃんと話してると少し楽になる。
西岡に美久が引っ付いてどこからどうみてもカップルのような二人組。
そんな2人に1人の女の子が声をかけてきた。
『‥西岡くん。デート中か?』
『あ、由奈ちゃん。どうしたの?』
『花ちゃんと別れて1ヶ月立ってないのにもう彼女できたん?しかも、その子、噂の裏サイトの子やん。いつからできてたん?』
『どーも!文学部2年美玖です!』
『どーも。』
『‥別に付き合ってるわけじゃないよ。てか、何か用事?』
『西岡くん、‥花ちゃんから聞いた?』
『‥??。なにを?』
『はぁー‥やっぱりちゃんと言えてないやん。和紗ちゃんの言う通りやな。』
『え、なに?』
由奈ちゃんは、向かいの席に座っている美玖ちゃんに聞こえないように西岡の耳元で小さな声でつぶやくそうに告げた.
『花ちゃん。妊娠したんよ。』
『‥は?』
『産婦人科で診断受けて、逆算すると事が起こったのは2ヶ月前くらい。心当たりあるやろ?』
隼人はその場から立ち上がった。
『‥花は?今どこにいるの?』
『今日は大学休んでるねん。‥病院の場所教えようか?』
『教えて』
『はい。和紗ちゃんがちゃんと西岡くんに伝えるように花ちゃんに言うてたけど、花ちゃんの顔見てたら、きっと言えへんやろうなーって2人で話してたんよ。当たりやな。』
『いいから早く教えてくれ!頼む!』
『たっく‥しゃーないな。』
西岡は、由奈ちゃんから産婦人科の場所を聞くとリュックを持って、走り出した。
『ちょっと!隼人先輩!』
『今日はもう解散、帰れ』
そのまま追いかけてくる美玖ちゃんを振り切って自転車置き場まで行き、言われた病院までバイクで飛ばしていった。
クソ‥なんでそんな大事なこと言わないんだよ。あのバカ。
前、伝えたい話があるって言ってたのは、これのことか‥!!
いや、何か言おうとしてたけど、俺が遮って態度悪く無視して去ったんだ。やってしまった!
やばい、急いで行かないと!!
そのまま走って、病院まで向かった。
病院まで着くと、急いで受付にいった。
『あのすみません!今日ここで手術を受けにきた。佑々木花さんって方、いますか?』
『あー‥あの失礼ですが、ご関係は?』
『元彼氏です‥お腹の子は俺の子なんです。お願いします。会わせてください!』
『‥少しお待ちください。』
15分ほど待つと、看護師さんが呼びに来た。
『あなたが佑々木花さんの元カレさん?』
『はい‥!!』
『お名前お伺いしてもよろしいですか?』
『西岡隼人です.』
『‥わかりました。佑々木さんから面会の許可が出たのでお通ししますね。』
『ありがとうございます‥!』
部屋に案内されるとベッドで横たわって休んでいる花がいた。こっちは一切見ずに窓の外をボーと見つめている。
目は赤く腫れている。泣いていたのだろう。
『‥花、手術は?』
『もう終わったよ‥あと30分くらい休んでから帰ってくださいって。』
『‥なんでもっと早く言わないんだよ!』
『言えないよ。もう気持ちがない人に妊娠してるなんて言われても困るでしょ。』
『それとこれとは話が別だろ!!そもそも、こういうのって俺の同意も得てからするものだろ!?』
『別に、正常妊娠じゃなくて異所性妊娠だったの。卵管で着床してたから、すぐに手術して取らないと大量出血のリスクもあるって説明受けた。一応、あの日伝えようとした時にそのまま産婦人科まで一緒に行ってもらおうと思ってたけど‥用事あるって言ってたでしょ。』
『‥!!。こんなことになってるって知ってたらキャンセルするに決まってるだろ!!!』
『‥』
花はずっとうつむいたまま動かない。
隼人とは一度も目が合わない。
隼人は、そのままベッドで横になって静かに涙を流している花の頭に触れた。
『‥もう好きじゃないのになんで来たの』
『‥責任は取らせて欲しい。』
『責任って何‥』
『中絶に関わる費用は全額俺が払う。』
『‥。』
『あと、花のメンタルが落ち着くまでいくらでも、そばにいるから。』
『‥それが責任なの?』
『花が望むことならなんでもする』
『好きな人がいるんじゃないの?いい感じなんじゃないの?こんなとこ居てもいいの?』
『‥良いよ。好きな奴なんていない。』
『‥嘘つきじゃん』
『ごめん‥』
隼人はその後、30分ほど手を握って病室で静かに一緒に過ごしてくれた。




