隼人と美久ちゃん
大学に来たので、せっかくなので佑々木の顔も見に来たヒラマサ。
長い髪を切るぐらいショック受けてるんだ。
あいつ自殺するんじゃ‥
よからぬことを思い浮かべてしまう。
西岡はあーいってたけど、花は西岡といる時は本当に幸せそうだった。
探しているとギターの音色と共に聞き覚えのある歌声が聞こえてきた。
声のする方に向かって歩いていくと大学内の裏庭にある人気のない大きな木下にあるベンチにアコギギターを持った花が座っていた。
1人でイヤホンをしながらギターを弾いている。
表情は少しくらいが顔色はいい。
鼻歌を歌っている。
『‥大丈夫か?佑々木』
ヒラマサが花に声をかけた。
花は誰かに声をかけられたと思い、ゆっくり振り返ると、そこにはヒラマサが立っていた。
『え!?ヒラマサ!?なんで!?ここ紫翠大学だよ?なんでいるの!?』
『いや‥心配でやってきた。』
『ええ?‥寺倉から聞いたの?』
『まあそんな感じ』
『あはは〜ほんと振られまくりで失恋ばっかでバカみたいだよね。恋愛に振り回されてばっかり‥もう当分恋愛はしないって決めたんだ。』
『そうなんだ。泣いてるけど』
『ああ、これはちょっと‥流石にまだ傷心中なもので‥あはは』
『西岡のことまだ好きなの?』
『‥別にもう知らない。あんなやつ。他に好きな人ができたから別れてくれとか言ってきてさ。ほんと意味わかんない。』
話しながら涙がポタポタ止まらない。
『‥なあ、』
『大丈夫だよ。来年度から病棟実習もスタートするしヒラマサも院試控えているしお互いに勉強頑張らなきゃだね。』
『うん。佑々木。』
『うん?』
『また連絡して良い?話聞くし‥』
『‥うん。そうだね!もう別れちゃったし!隼人、他の男と連絡するなーっていつも怒ってたの、隼人いなくなったし、いつでも電話かけてきていいよー!』
涙をこらえながら空元気のように笑顔を振りまく花を見ると胸がギュッと苦しくなる。
『‥ありがと。佑々木の声聞くと元気出るんだ。』
『‥あはは、そうなの?うれしいなぁ』
辛いはずなのに、ヒラマサの笑顔を見るとドキッと胸が高鳴る音がした。そんな時に隼人に言われた言葉を思い出す。
《『‥俺と付き合ってからもずっとヒラマサしか見てなかったくせに、何いってんの?』》
ぬるっと冷や汗が出た。そうなのかな‥。
『‥私ね』
『うん』
『‥いや、なんでもない。』
『え、いいの?』
『うん。』
ギターをショーケースに置いた。
『しばらくは、恋愛はせず。残り2年間の大学生活は勉強と就活と国試に全集中しよっかなとおもって。』
『あー。なるほど。んじゃ俺も勉強と研究に全集中しよっかな。』
『一緒に頑張ろう!』
『おう。‥俺もしばらく恋愛は良いかな』
『‥恋愛してたの?』
『恋愛っていうか、2ヶ月だけ同じ大学の人と付き合ってたんだよね』
『ええ!全然知らなかった!なんで別れたの?』
『うーん、告白されてさ。あんま話したことなかったんだけど、とりあえず付き合ってみようかなって。みんなに勧められて‥けどよく分かんなくて、そしたら、2ヶ月くらいで将生くんつまんない!って言われてフラれた‥ダサすぎてあんまり人に言えないけど。』
『えーそうなんだ‥ヒラマサも大変だったんだね。』
『いや‥大学に入ると付き合うってみんな当たり前にしてる人多くてさ、だから俺もしてみようかなって思ったけど、よく分からなかった。』
『うん。それは私ももうよく分かんない。』
『‥佑々木と俺って実はちょっと似てる?』
『えー、そうかな?違う気がするけど』
『またさ、‥連絡取り合おう。』
『うん。いいよ。』
『前みたいにどこか出かけたりしよう』
『そうだね』
『現状報告しあってさ、みんなと旅行行って飲みに行って、勉強も就活も頑張ろう。』
『うん!がんばろ!』
ーーーーーーー2023年10月ーーーーーーーー
西岡が講義が終わり、練習場に行かずにアパートに帰って寝ている。
熱っぽくて体がしんどい。
熱出そうだな‥休んでよかった.
てか、あのヒラマサ.めちゃくちゃ怒ってたな、あいつが怒ってあんな感情的になるとこ見たことないかも‥。
あいつのせいで別れたのに、呑気なやつ。
きっとあのあと、花のところに行って、2人ともいい感じになって、数ヶ月もしない間に付き合うに決まってる。
俺なんて都合のいい当て馬じゃん。
だるすぎ‥。
そんでもって風邪引いて、倒れて、もう散々じゃねえか。もう嫌すぎる。
その時
ピンポーンと鳴った。扉を開けるとそこに、美久が立っていた。
『あ!西岡先輩♪』
『‥なんで家知ってんの怖いって』
『練習サボりですかー?』
『違うよ。風邪引いてしんどいの。熱も少しあるし、休んでるんだよ。ほら帰れ.』
『え!私、看病しますよ。』
『いらないよ』
『させてくださいー!』
『いらないって!』
『えーだって、西岡先輩.彼女さんと別れたばっかりでしょ?寂しいんじゃないですか?』
そういうと、美久ちゃんは人差し指で隼人の胸あたりをつっついた。
『‥美久ちゃんには関係ないでしょ』
『関係おおありです。約束破られそうで困ってるんですよ。』
『なんの約束だよ。』
『彼女さんと別れたら、付き合ってくれるって言う約束です。』
『そんな約束してないね。付き合う気はない。』
『んじゃ寂しさや心に空いた穴を埋めるための都合のいい女でもいいですよー?』
『なにいってんだよ。帰れ.』
『あ!でも、おしっこいきたいですー!トイレ貸してください!じゃないとここで漏らしますよー?』
『はぁ!?もうトイレだけだぞ』
『やったー!隼人先輩愛してる!』
そのまま美久ちゃんは隼人の家に入った。
トイレから出てくると、隼人はベッドでぐったり寝ていた。
『隼人先輩.本当に風邪引いてるんですか?』
『大学生にもなって仮病使うかよ』
『お粥でも作りますよ』
『‥はぁー。作ったら帰って。』
『はい♪』
すると、美久ちゃんはお粥をささっと作り、部屋に散らばってゴミを捨てて、コロコロで綺麗にした。
隼人はその間しばらく眠ってしまった。
目が覚めると、氷枕が首の後ろに引かれており、汗をたくさんかいたせいか少し熱が下がってる感覚があった。体のだるさもすこしましになったようだ。
起き上がると、テレビを見ながらくつろいでる美久ちゃんがいた。
『まだいたの‥』
『あ、西岡先輩やっと起きた♪調子はどうですか?』
『‥おかげで少し楽になったよ.ありがとう.
なんか部屋も綺麗にしてくれたみたいで、たすかったよ。』
『いいえー!良かったです!』
すると、美久ちゃんは起き上がって隼人の寝ているベッドに座った。
『お粥食べます?』
『うん。お腹すいた.』
美久ちゃんが作った卵粥を食べると、体に沁みた。花と別れてからしんどいことを理由にほとんど自炊しなかった。割引シールの貼ったコンビニ弁当やおにぎり、スーパーのお惣菜で済ませることが多く誰かの作ったものを食べるのは久しぶりだった。
『ありがとう、おいしかったよ』
『いーえ!お粗末さまでした!』
そういうと美久ちゃんは食器を片づけだした.
その姿に花を思い出させる。
‥花、元気かな。風邪引いたのなんて何年ぶりだろ。2年ぶりぐらいかな。花がいたら花が看病してくれたのかな。
そんなことを考えながらぼーっとしていると、美久ちゃんが戻ってきた。
『隼人先輩。汗たくさんかきましたね.シャワー浴びきてきていいですよ。』
『‥そうだな、そうするよ。美久ちゃんはそろそろ帰らないとダメだろ.もうすぐ日が落ちるし.』
『私、ここに泊まります!』
『‥は?何言ってんの?』
『さ、さ、早くシャワー浴びてください!私はもう隼人先輩が寝てる間に浴びたので!』
『こ、こまるって!』
『とにかく早くシャワー浴びてきてください』
シャワーを浴びながらプチパニックな隼人
どう言うことだ.なぜこんなことに‥。
最初に追い返しておくべきだった.
でも、美久ちゃんがいたからお粥も食べられたし、看病してくれたおかげで少し楽になった.部屋も片付いたし、悪いことばかりじゃないか
シャワーから出ると部屋は電気が消されており、ベッドの枕灯だけがついた状態になっていた。室内は薄暗い。
その中で美久ちゃんがビーズクッションの上でくつろぎでいた。
確かに言われてみれば、来た時と服装が違う気がする。髪も若干湿っている。
まじで寝てる間にシャワー浴びたんだ‥。
やばい女だな本当に‥。
隼人が戻ってくると、嬉しそうに駆け寄ってきた.
すると、腕に抱きついてきた。
『困るって‥』
『なんでですか?』
『‥本当に申し訳ないけど、花のことしか考えられないよ.今は.美久ちゃんのこと考えてる余裕ないし無理だから、帰って.』
『‥別にいいですよ?花さんだと思ってもらって良いです。』
すると美久はぎゅっと抱きしめてきた。
‥こいつ!ノーブラじゃないか!
花よりも一回りほど大きな胸を腕に押し付けてきている。
『あのね、美久ちゃん.そういう体の売り方は良くないから.誰にでもそんなことしないほうがいいよ。まじで。』
『隼人先輩にしかしません。好きなので』
『‥はぁ。あのさ、』
すると美久ちゃんは、隼人の体を引っ張って自分の体を下にしてベッドに倒れ込んだ。
ベッドで隼人が美久ちゃんの体に馬乗りになるような体勢になった。
『抱いてくれません?』
『‥無理だよ.』
『本当に?』
すると美久ちゃんは隼人のTシャツの裾を軽くめくって直接皮膚に触れた.
綺麗に割れた腹筋が見える。筋肉の走行に沿って指で皮膚をなぞっている。
隼人の身体がすこピクッと反応する。
『‥したくないですか?』
『‥花とならしたい。』
『‥私のこと花さんだと思ってください』
すると、美久ちゃんは枕灯を消して部屋を真っ暗にした.もう何も見えない.
そして、隼人にキスをした。
『これなら、何も見えないでしょ?』
『‥もうやめてくれ』
隼人は、美久ちゃんを押し退けて布団を頭まで被って、背中を向けた。
美久ちゃんは頬をむすっと膨らませて不服そうだ。




