ヒラマサ
バイク置き場にて。
バイクに乗るためにヘルメットをかぶろうとした西岡。その瞬間。
急に大きな声で呼び止められた。
『西岡!!』
『うわああ!? ‥びっくりした!ヒラマサじゃん。どうしたの?』
『こっちのセリフだよ。どういうことだよ。』
ヒラマサは、走ってきたようなじんわり汗をかいている。顔は真剣で怒ってるようにもみえる。なぜそんな顔をしているか大体想像がついた。
めんどくせ‥ため息が出る。
『‥何が?』
『なんで佑々木と別れたんだよ。』
『‥あーそのこと?お前に関係ないだろ』
『幸せにするって約束しただろ!』
その瞬間、ヒラマサは西岡の胸ぐらを掴んでいた。ガシャッン!!
西岡の身体が自転車に当たって大きな音がした。
『その言葉を信じて俺は諦めたんだぞ!』
『知るかよ!お前が勝手に諦めたんだろ!!俺だって幸せにしたかったよ!!けど、俺じゃダメだったんだよ!!』
『はぁ?今更何言ってんだよ!』
『俺はずっと我慢してたんだ!!花の眼中にないことぐらい分かってたよ。けど、それでも良かったって思ってた、けど、もう耐えられない!』
『何言ってんだよ!!好きだったんだったら幸せにしろよ!俺のこと虫呼ばわりしてたくせに!!』
『あーそうだよ!お前がずっと飛び回ってるから別れたんだよ!!俺はお前よりずっと花が好きだったさ!!!けど、仕方ないだろ!!!お前みたいに生まれてからなんでも持ってるような側の恵まれた坊ちゃんに俺の気持ちがわかるか!!』
『なんだとッ‥!!』
『何してんだ!!お前たち!!』
騒ぎを聞きつけた学生が教員を呼んできたようで学生や先生たちがやってきた。
『!!、やばっ』
『‥チッ‥とりあえず逃げるか』
『たっく、仕方ないな‥』
ヒラマサは、掴んでいた襟元を離して、そのまま西岡と一緒に大学内から出ていった。
少し離れて、大学近くの商店街までやってきた。沈黙が走る。
先に口を開いたのはヒラマサだった。
『‥西岡。ごめん。ついカッとなって。』
『‥俺も悪かった。』
『さっき、俺のせいで別れたって言ってたけど、どういう意味?ずっと花に連絡してたから?本当にそれだけか?だとしたらもう連絡しないし、より戻してやってくんない?』
『‥それだけじゃないって。お前さ、鈍感すぎない?』
『何が?』
『あーもういい。ムカつくから何も教えてやんねー。』
『はあ?小学生かよ!』
『うるせえ。大学まで押しかけてきて、さっき俺のこと殴ろうとしただろ。どっちが子どもだよ!』
『うっ‥それは‥』
『とにかく、俺は帰る!今日は講義も終わったし、このあと陸上の練習があるんだ。暇じゃないんだよ。』
『‥もう花のことはいいのか?』
『興味ない。そんなに心配なら直接見に行けば良い。さっき講義が終わって、元軽音サークルのやつらとギターケース持って出ていったぞ。いつもみたいに中庭でギターでもひいてんじゃね?』
『興味ない割にちゃっかり見てるんだな』
『うるせえ!早く行けよ!』
『わかった。ありがと。』
そういうとヒラマサは、中庭まで小走りで走っていった。
その姿を見つめる西岡。
そのまま黙ってヘルメットを被り、陸上練習のする練習場へ向かった。
いつも通り練習着とスパイクに着替えて、準備運動をしている。
『西岡先輩!』
『あ‥美久ちゃん。どうしたの?』
『聞きましたよー?』
『な‥何が?』
はぁーだるい。ただでさえ疲れてるのに。
ただでさえ精神的に病んでるのに.
『次は私の番ですよね?』
『なんの話?』
『忘れちゃったんですか?彼女さんと別れたら次は私も付き合ってくれるって言ったじゃないですか!』
『あー‥そんな話したっけ』
『しました!忘れたとは言わせませんよ?』
『‥あのさ、まじで申し訳ないけど、俺は美久ちゃんのこと好きじゃないんだよね。それに、別れたけど、好きじゃないわけじゃないし‥しばらくは彼女とか作るつもりないから.』
『えー。でも、私のこと好きじゃないことぐらい知ってますよ?』
『‥何言ってるの』
『分かった上で言ってるんです。付き合いませんか?都合のいい女でいいんです。私のこと花先輩だと思って抱いていいですよ。なんなら耳元で花ーって呼んでもらったら返事します』
『なにいってんのやばいってありえないよ』
『ね、西岡先輩.だめですか?』
『だめだよ、そんなの』
『私、諦めないですよ?』
『はいはい。んじゃ練習するから、美久ちゃんもマネのとこ戻りなさい。』
そういうと、西岡はたちがってその場を去った。
美久ちゃんは去っていく西岡の後ろ姿を見てにやりと笑って小さな声で呟いた。
『‥絶対諦めないんだから』




