別れ
結局、あのまま隼人は朝まで眠ってしまったので花も隣で一緒に眠った。
朝起きると珍しく、まだ隼人が寝ていた。
『珍しい‥いつも早起きなのに』
昨日の隼人のことを思い出す。
また何か不安にさせるようなことしちゃったのかな。
『ごめんね』
そう言って、隼人の唇にキスをして、またそのまま眠ってしまった。
そして起きたのは11時前だった。
約束通り台所へ行ってオムライスを作る。
そうするとモゾモゾと隼人が起きてきた。
料理をしている花を後ろから抱きつきながら覗き込んできた。
『‥おはよ、ご飯作ってくれてるの?』
『おはよう。そうだよ、オムライスだよー!』
『やったー』
すると寝ぼけた様子の隼人はそのまま頬にすりすりと顔を押し付けてきた。
『くすぐったいよ』
『‥うーん』
『なんか昨日からお疲れ様だね。向こうで休んでていいよ?』
『‥うん。』
そういうと隼人は頭をかきながらそのままベッドに倒れ込んだ。
相当お疲れのようだった。
『隼人!お待たせー!食べよ!』
『‥おう。ありがとう。』
『美味しくできたよ!』
『‥いただきます。』
ベッドでまだ寝ている隼人を起こす、今日はなんだか元気がない。
しかし、食欲はあるようであっとういまに食べ終わった。
『隼人、今日元気ないね。疲れてる?風邪引いた?大丈夫?』
『‥なあ。花。』
『ん?』
『俺さ、もう花と一緒にいたくない。』
『え‥』
『別れたいんだ』
夏の暑さが体に染みる。
外から蝉の鳴き声が聞こえる。
夏と暑さとは違う、じっとりした汗が額をつたっていく。
『‥えっと‥なんで?』
『‥他に好きな人ができた』
『‥本気?』
『ああ、』
『‥』
『別に良くない?2年も付き合ったし、十分だろ。』
『‥十分じゃないよ』
『てか、シンプルに冷めたんだよね。好きな子できて今その子といい感じだし、もう別れて欲しいんだよ。』
『‥そんな素振り全然なかったじゃん』
『そりゃ気付かれないようにするに決まってるじゃん。そういうとこだよ。頭の中、お花畑なんだよね。ガキっぽくて、冷めた。』
『‥ッ!!』
『そんなんだから、恋愛依存から抜け出せないんだよ。いつもいつも。男に振り回されすぎ。
一回1人で頭冷やした方が良いじゃね?』
頭にカッと血が昇ってしまった。
パァンッ!!
部屋に高い音が響き渡る。
気がついたら西岡の頬を平手打ちしていた。
『‥最低っ!!』
涙が溢れていた。
『‥ッ!!‥てか、付き合い出したのも花が成り行きでうちに来たせいだろ!その時の勢いとノリで付き合っただけだし!!』
『もういい!!』
そのまま立ち上がって荷物をまとめた。
自分の衣類や化粧品、財布やスマホなどの貴重品をカバンに勢いよく突っ込んでいる。
全身から怒りの感情が湧き出てくる様子の花に恐る恐る近づく隼人。
『‥んじゃ別れるってことでいいの?』
『良いも何も気持ちがないなら一緒にいたって仕方ないじゃん!別れます!』
『なんだそれ‥気持ちがないのはお互い様だろ』
隼人の言葉に花の動きはピタッと止まった。
おそるおそる振り返り、隼人の顔を見つめる。
目に涙が溜まっていて、震えているようだ。
『そんなふうに思ってたの‥?』
『‥俺と付き合ってからもずっとヒラマサしか見てなかったくせに、何いってんの?』
『‥!! そ、そんなこ‥』
『ほら図星だろ。もういいよ。出てってくれ
もう顔も見たくない。』
『‥言われなくても、出て行きます!
これも、返すから‥!!』
花は、左手にはめていた指輪を外しテーブルに置いた。
そのまま隼人の家を飛び出した。
帰りの電車の中で自然と涙が出てきた。
付き合って2年と8ヶ月。
あっけなく終わってしまった。
隼人に別れを切り出されたのに、それを必死に止めることもしなかった。
なんならカッとなって手まであげてしまった。
感情に任せて人に暴力を振るったのなんて生まれて初めてだった。
右手が赤くなってまだヒリヒリする。
頭の中で違う人を想ってることも完全に強く否定できなかった。
そんな自分も情けない。
けど、隼人のことが好きだったことも事実。
ずっと一緒にいられると思っていた。
まさか好きな人が他にいたなんて‥。
舞い上がって馬鹿みたいだ。




