虫除け
またヒラマサ、寺倉、真緒、和紗、花、西岡、北川とみんなで会って飲み会に行くことになった。
ヒラマサももちろん参加していたが、西岡は自分も参加して見張る!と意気込んでおり、一緒に参加することになった。
北川はもうすでに完成されており、みんなと一緒に飲むことを感慨深そうに語っていた。
北川、ヒラマサ、寺倉、真緒と和紗の5名が来ている、
『いやーみんな各自、留年することなく進級できてよかったね!』
『ほんとだねー』
『ヒラマサは院試の準備で忙しいだろうけど、きてくれてありがとね!』
『あー‥まあ。別に。』
そこに遅れて、西岡と花がやって来た。
『あ!みんな!もうきてる!久しぶり!』
『きゃー花!きたきた!この座り!』
『俺もいるぞー』
『西岡ときたんだ!さすがカップル!』
『ごめんね。遅くなっちゃった。』
中に入って、花と隼人は隣の席に着く。
向かいにはヒラマサが座っていた。
『久しぶり』
『‥うん、久しぶり。』
隣に隼人もいるしちょっと気まずい。
『俺も久しぶりだな』
『ああ、西岡も。元気そうだな。』
『ヒラマサは院試の準備で忙しいんだろ?』
『まあ、そこそこって感じかな』
『へー。頑張れな!』
『ありがとう』
『花、何飲む?』
『あ、えっと‥』
隼人と話してると、その様子を見た真緒が大きな声で反応してきた。
『あー!!花の手に指輪はめてる!すごい!まさかそれって‥婚約指輪!?』
『あ‥まあ、そんな感じ?』
隼人の顔を見ると隼人も顔を赤くしていた。
『えーおめでとう!』
『大学在学中に婚約とかすごすぎ!』
『結婚式呼んでね!』
『もちろんだよー!』
『でも二人とも薬学部だから6年制だし、あと3年大学生活あるの大変だよね』
『ああ、卒業できたら籍入れるつもりだよ。』
『すごい憧れるう!』
向かいに座るヒラマサと目が合う。
『すごいな、おめでとう』
『‥ありがとう』
『今日は、お祝いだな。』
『そんなつもりでつけてきたわけじゃないよ。気にしなくていいって!』
『花、なんかついてる』
すると隼人が髪の毛に触れてきた。
『あ、ごめん。なについてた?』
『うんー?わかんない』
『???』
『それより花、大石が呼んでるよ。隣座ってくれば?』
『あ、そうしよかな!ありがとう!』
花は立ち上がって、真緒たちのところへ行った。
『‥西岡。分かりやすいな。そんなにあからさまに避けなくていいだろ。』
『別に、お前に言われたくない。』
『‥まあまあ、二人とも。二人とも何飲む?』
バチバチとした雰囲気に寺倉が気まずそうにしている。
『プロポーズなんて思い切ったな』
『変な虫がつかないようにするためにな、虫除けだよ。』
『俺は虫か?』
『虫だろ。』
『お前、佑々木の前で猫被りすぎだろ』
小柄な寺倉はどんどんどんどん小さくなっていく。
『‥あのぉ。』
『俺はハイボール』
『俺も』
『‥はーい。』
気まずさに耐えられなくなったのか寺倉はそそくさと北川のいる方へ体を寄せていった。
沈黙が走る。
お酒が運ばれてきたので、静かに飲む。
ここだけお通夜のような雰囲気だ。
『西岡』
『ん?何?』
『佑々木のことよろしくな』
『別に言われなくても』
『大事にしてやってほしい。』
『‥分かってるよ。』
『もう、佑々木には電話しないよ。』
『‥そうしてもらえると助かる』
『おう。』
すると、酔っ払った北川と真緒がやってきた。
『おいおいここだけお通夜やってんぞ!』
『二人とも陰気なんだから〜!』
『うるせえ!酔っ払い!』
『触るな。男にベタベタされる趣味はないぞ!』
その後はみんなで楽しくワイワイ飲むことができた。
楽しんで飲み終わってから、店を出る。
もう3月なので桜が咲いていた。
『佑々木』
『ん?‥ヒラマサか〜』
『西岡と仲良くしろよ』
『もちろんだよ〜』
少し酔っ払ってるのか、頬が赤くすこしフラフラしている。
『‥そんなんで家に帰れるのか?』
『うんー今日はこのまま隼人の家に泊まるの〜!だから大丈夫!』
『ふーん、そっか。』
『桜が綺麗だねえ〜』
『そうだな。』
『‥この前急に電話して悪かったな。西岡にも謝っといたから。』
『あー!うん!うん!大丈夫だよ。何か大事な用事があったの?』
『いや、別に‥大したことじゃない』
『そう?ならいいけど』
『‥なあ。佑々木ちゃんと幸せにしてもらえよ』
『‥うん。ありがとう。』
『愚痴なら聞くから』
『ふふ、愚痴ることなんてないよ。』
『‥そうだよな。それが一番だ。』
『なんかお父さんみたいだね』
『そうか?』
『うん。昔からヒラマサは、優しくていつも私のこと心配してくれたよね。ありがとう。』
『‥ああ』
『あ!そうだ!ロケット飛ばす夢頑張ってね!』
『覚えてたんだ』
『当たり前じゃ〜ん!』
『佑々木、またしばらく会えないな元気でな。』
『うん。ヒラマサもね。』
ヒラマサが佑々木の顔に手を伸ばそうとすると、ふわっと風が吹いた。
髪の毛がふわふわと揺れて、首筋にある赤くなった傷のようなものがみえた。おそらく西岡がつけたキスマークだ。
『‥虫除けか』
『ん?虫?もうそんな季節?』
『‥んーまあ、そうだな。西岡によろしく。』
『うん‥ヒラマサも元気でね』
『おう』
『応援してるね』
『ありがとう』
そのまま、花は西岡と手を繋いで帰っていった。このまま手を引くのがきっと最良なんだろう。それなのに、心の中ではなかなか諦めきれなくて、歯痒さを感じてしまう。
自分の諦めの悪さに嫌気がさす。




