陸上サークル
紫翠大学陸上サークル。
腕にスマートウォッチをつけて、走り込みをする西岡。高校生の時は中距離走全国大会に出場しベスト8まで上り詰めた好成績を残している.
大学内でも、成績は良好だ.
『西岡ー!そろそろ休めー』
『はい!』
ゆっくりペースを落としながら最後に400mトラックを一周し歩いながらベンチに戻った。
『西岡先輩。お疲れ様です!』
『ありがと。美久ちゃん。』
彼女は、大学2年生の橋添美久。
陸上部のマネージャーをしている。
美久は西岡にボトルとタオルを渡した。
ぼーっと他の練習してるみんなを見つめる西岡
すると部長が声をかけてきた.
『ずっと思ってたんだけどさ西岡ってなんでうちの大学に来たの?西岡レベルの陸上成績だったら有名私立からいくらでも声かけられてたでしょ。特待生!無返済型奨学金あり!とかで!』
『あはは〜‥まあ、少しだけ』
『それ蹴ってここに来たの?なんで?』
『そ、そうなんですか?』
その話を聞いて初耳で驚く美久ちゃん。
西岡は少し気まずそうだ。
そんなこと気にせずぐいぐい話を進める部長。
『‥言いませんよ』
『なんでだよ。あ!分かった!好きな子と同じ大学行きたかったからとか?』
『‥』
『‥え、図星?‥ヤバすぎ』
『‥別にいいでしょ!ここの大学だって国立で十分難関だし、陸上部も強いじゃないですか!ちゃんと親に許可もとったし、そんな不純な動機だけじゃないです!』
『えー!お前、すごいな‥』
『あ、でも、西岡先輩って清開高校出身ですよね?めちゃ賢い進学校です。この大学も余裕だったってことですか?』
『余裕じゃないよ!ちゃんと勉強したよ!』
『す、すみません!』
『ちょっと西岡、美久ちゃん怖がらせないで』
『ごめん‥』
『あれか!同じ学部の彼女がそれか?』
『‥まあ、そうですね。高校の時から好きだったので。』
『お前一途だなー!』
『そんなことないですよ』
『で、でも、その彼女さん一度も練習見に来たことないですよね?他の先輩たちの彼女さんは見に来てる人結構いるのに。私見たことないです.』
『‥確かに』
『‥まあでも見学されて西岡が集中できなかった困るし来ない方が良いんじゃない?』
『集中できますよ』
『どうだか、西岡って結構ウブだし。』
『失礼ですね!』
『ん、でもまって、噂をすればあれは‥』
『‥え?』
部長が指さす方向をみると、花と和紗と杏奈が立っていた。閲覧席でこちらを見つけると笑顔で手を振ってきた.
『え、花!?なんで!?』
『やっぱりあの子、花ちゃんだよね!相変わらず可愛いねー!隣の2人も可愛い!』
『‥え!!どの人ですか?』
『ほらほら、あの長い黒髪のクール系美人の横にいる小柄な女の子。髪が長いほうだよ。』
『あ‥あの人がそうなんですね』
『部長。ちょっと花たちのとこ行ってきていいですか?ここに来るなんて珍しいし何か用事があるのかもしれないです。』
『おーいってらっしゃい』
そのまま西岡は花達の元へ走っていった。
『花!急にどうした?見学に来るなんて珍しいな』
『ごめん急に来て、3人でこの辺ぶらぶらしてる時に杏奈ちゃんがここに陸上部の練習場があること教えてくれたの。ここのマネージャーさんに聞いたら見学してもいいって言うからちょっと見に来たんだ.』
『そ、そうなんだ。』
『ほらサボってないで走りなさい、』
『そうやでー!かっこいいとこ見せるチャンスやで!』
『冷やかしかお前ら』
『あー?誰がここまで誘導してあげたと思ってるねん!』
『分かってるよ!邪魔すんなよ!』
『はやくもどんなさい!』
『頑張ってね!隼人!』
『おう‥』
西岡は、戻ってくるなり上のジャージを脱いで、準備運動を始めた。
そしてまた走り込みを始めた.
『西岡気合い入ってるねー』
『そ、そうですね』
『美久ちゃんは複雑だね』
『な、なにがですか?』
『だって、西岡のこと好きでしょ?』
『なななななな』
『分かりやすいね!2人目でもいいとか野暮な考え方はやめなよ?』
『そんなこと考えてません!』
『あはは〜』
そのまま部長は去っていった。
陸上競技場の観客席から西岡を見つめる花と和紗と由奈。いつもと違う西岡の姿に少しドキドキしてる花を見て由奈はニヤニヤしてしまう。
『どう花ちゃん?西岡くんが走るとこかっこいいな?』
『そうだね‥高校の体育大会ぶりかも.』
『カッコいい?なあなあかっこいい?』
『やじるな由奈ちゃん』
『ふふ‥そうだね.かっこいいよ。』
西岡達の陸上部には四月ということもあり、練習を見学しに来る学生がちょこちょこいたり、一緒に練習に参加したりする人もいた。
『こう見ると、あいつ、足早いね』
『ほんまやな〜高校の時から早かったん?』
『確か全国ベスト8に入ってなかった?』
『え!?そうなん!?』
『そもそも、うちの高校が陸上の長距離や中距離の強豪校だったしね.』
『すごいなー!監督さん大喜びやな.』
『私立からの推薦入学蹴ってたしね』
『え、なんで?』
『知らないの?花。花と同じ大学受けるためでしょーってみんな言ってたよ.先生ですらもう止められんーって投げてた。』
『ええ‥知らなかった.』
『すご!西岡くんそんな前から花ちゃん一筋なん!漢やなー!』
『花は、高校の時はヒラマサ一筋だったもんね』
『あー、まあ、一筋っていうか、好きだった時期はあったよね.』
『西岡は報われないね〜って思ってたけど、やっと報われたよね。良かった良かった。』
『大事にしてあげてなー花ちゃん』
『うん。ありがと‥』
『でもさっきから、こっちのことチラチラ見てるあのマネージャーの女の子おるやろ?』
『ん?どのこ?』
『あのお団子ヘアーの可愛い子』
『あー、あのこ?』
『あ、ほら、こっち見た.あ、そらした。』
『西岡の彼女だから気になるんじゃない?どんな人なんだろーって。』
『あー!なるほどね!』
『んー‥なんか睨みつけられてる気がするけど』
『え、そう?』
『気のせいちゃう?』
『もしかしたら数少ない西岡ファン?』
『おもろすぎるやろ』
『ちょっと2人ともバカにしてるの?静かにしなさいってことじゃない?』
『うそうそごめんて、なるほど.静かにしまーす!』
『西岡ってキャラクターが先行してるのと、周りに北川くんとヒラマサがいるから気づかなかったけど、西岡もそこそこイケメンだよね。』
『まずまずモテそうや』
『1番不憫なのは寺倉ね』
『やめてあげて‥』
『1番モテたがってるのに』
『貪欲さがモテない秘訣なんちゃう?』
『なるほど』
1時間ほど見学して、そろそろ帰ろうかなと思った時.あちらの練習も終わる頃だった.
『あ、練習終わるって.どうする?花.西岡と帰る?』
『え、いいよいいよ。みんなと帰る.』
『なんか一声かけとけば?』
『メールで一言入れとけばよくない?』
『でもさっきから西岡くん片付けしながらこっちをチラチラ見てるで』
『‥どうしよう』
『一緒に帰ってあげなよ〜』
『なんかメール来てないの?』
『え?』
花がスマホを取り出すと、隼人からメッセージが届いていた.
《いつまでいるの?最後までいるなら一緒に帰りたい.》
『一緒に帰ろうってメッセージきてた』
『おお!さすが!』
『んじゃ私らは帰るわ!』
『またねー!花、明日は私たちとサムギョプサル食べに行く日だから忘れないでねー』
『うん!わかってる!またね!』
和紗と由奈ちゃんが帰り、1人で陸上部の練習場のそばにあるベンチに座って待つ.
『花!おまたせ!』
『隼人.お連れ様。』
『急にくるなんてびっくりしたよ.あの2人は?』
『もう帰ったよ.2人で帰りなって。』
『そうなんだ。』
『これ、お疲れ様。』
『ありがとー!』
花は、自販機で購入したスポーツドリンクを渡した.おつかれさま。かっこよかったよ.とメッセージが書いてある。横にはウサギのイラスト。
『‥もったいなくて飲めない』
『何言ってるの飲んでよ』
『花、今日は家来れる?』
『‥うーん。でもここ3週間ぐらい隼人の家行ってなかったし良いかな?』
『まじで!?やったー!何食べる?』
『うーん。そうだな。何にしよう‥チキン南蛮?』
『いいねー材料買って帰ってつくろうか!』
『うん!』
そのまま手を繋いで歩いて帰る2人を見つめる.美久ちゃん.悔しそうな表情をしていた。
次の日。
昨日は、花と一緒に帰ってご機嫌なはずなのに、なんだか落ち込んだ様子の西岡がいた。
陸上サークルでの練習中なのにどことなく上の空だ。
そんな西岡を気にかけて、美久ちゃんが声にかけて来た。
『西岡先輩。なんか元気ないですね?』
『ん?あー別に』
『‥昨日彼女さんと仲良さそうに帰ってたのに、何かあったんですか?』
『何もないよ。』
『そうですか‥』
『‥いや、こんなこと美久ちゃんに言っても仕方ないんだけどさ』
『はい!』
『俺って余裕ないんだよね。すぐ嫉妬してヤキモチ妬いて1人で落ち込んでるんだよ.いつもこんな感じでさ、器が小さいよな.』
『え、何があったんですか?まさか‥浮気とかされたんですか?』
『いやそんなんじゃないって。ただ、高校の時から仲良しの男がいて、そいつと連絡よくとってるんだよ。それ見てるとすごいモヤモヤして、昨日も家で楽しく過ごしてたんだけど、そいつからメールがポンポンくるの。内容チラッと見たけどどーでも良いことばかりで、いちいち連絡してくんのやめてほしいとか思っちゃうんだよね。何回かやんわり嫌だって言ってるんだけど、なかなかやめてくれない。』
『そ、それは、ひどいです!西岡先輩というものがありながら、他の人とそんな密に連絡を取り合うなんて、失礼ですよ!しかも、嫌だって言ってることをするなんて!』
『ありがとう〜心洗われるわ』
『それに、どんな理由があれ恋人を不安にさせるなんてひどいです。ちゃんと言った方がいいですよ!』
『心狭い漢だと思われるじゃん。』
『そんなの、』
『かっこいい余裕ある漢って思われたいんだよ。好きな子にはカッコつけたいんだよ.』
『西岡先輩‥』
『心中でこんなこと思ってたらプラマイゼロかな。』
『そんなことないです!西岡先輩はかっこいいですよ!そんなこと思ってても思ってなくてもかっこいいです!』
『あはは‥美久ちゃんありがとう。熱いね!』
『‥はい。私なら好きな人にこんな思いさせません.不安にさせるようなことしませんよ。』
『‥?そっか。美久ちゃんと付き合える男は幸せ者だね.』
『‥はい。』
『美久ちゃーん!ちょっとこっち手伝って!』
『あ!はい!!』
そのまま美久は先輩に呼ばれて、仕事に戻った。
特に気にする様子もない西岡。
この後起こることを知らないで‥




