石垣島旅行3
その後、和紗が来て着替えを持ってきてくれたので着替えて、そのままお風呂場で和紗と話していると、ヒラマサが覗き込んできた。
『足の傷どう?』
『あ、痛みはだいぶマシになってきたよ』
『そうか、んじゃ冷やすか。』
冷水で流してくれた。
『ごめんね。ほんとにありがとう。』
『おう』
『‥そういえば、遥香さんは元気?』
『ん?遥香?』
『あの蟹ヶ谷春香さん』
『あー!どうだろ、最近会ってないな』
『お互い忙しいの?』
『いや、別にそういうわけじゃないけど』
『付き合ってるのにそんな感じなんだ』
『‥は?』
『え?』
『付き合ってないぞ。』
『『ええ!?』』
ついその場にいる和紗も大きな声を出した。
『え、付き合ってないの?』
『うん。付き合ってない。』
『いつ別れたの?』
『??‥別れるも何も、最初から付き合ってないぞ?』
『は?』
『え?』
『花、ちょっと耳貸して?』
『はい。』
『‥あの女、付き合ってもないのに牽制するためにわざわざ付き合ってるとか嘘ついたんだよ』
『でもさ、よく考えたら付き合ってるとは一言も言ってなくない?仲良くしてるとかヒラマサのこと好きとか、ヒラマサのアパートに行ってるとかは言ってたけど、付き合ってるとは言ってなくない?』
『チッ‥あのクソ女。』
『口悪いよ‥』
『まあ、ヒラマサに直接確認してなかった私たちも悪いしね‥』
『そうだね。はやとちりしちゃってたかも』
『おーい。何話してんだ?』
『いや、こっちの話よ。』
『うん。なんともないよ。』
『遥香先輩がどうかした?』
『何もないわ』
『何もないよ』
『‥あ、そう。』
するとヒラマサは立ち上がってその場を離れた。付き合ってなかったんだ‥。付き合ってたと思って、無駄にショック受けて勝手にフラれた気になってた‥。
『花。』
『ん?』
『一応さ、もう西岡もいるし‥』
『分かってるよー!今は隼人が1番大事だから!』
『そう‥なら、よかった。』
和紗がほっとしたような笑みを浮かべた。
付き合ったりするのはタイミングだと思ってる。今は隼人が好きだし、隼人と一緒にいる時が1番気楽で安心できる。
隼人と付き合うこと以外考えられない。
ヒラマサはかっこよくて優しくて、憧れで、
それ以上でもそれ以下でもない。
『ただいまー!』
『みんな買ってきたよ!食べよー!』
北川たちが帰ってきた。
お昼ご飯にすることにした。
みんなが買ってきたハンバーガーを食べてはじめてワイワイ話してる。
隣に座ってる隼人もハンバーガーを頬張っている。
みんなで美味しくハンバーガーを食べ終わった後、そっと隼人の服の裾を引っ張った。
『‥ねえ、隼人。』
『ん?何?』
『‥やっぱり足が痛いかも』
『よし!病院行こう。タクシー呼ぶわ。』
『ごめん』
隼人は、立ち上がってスマホでタクシーを呼ぶためにスマホを持って部屋を出た。
その様子を見て心配したのか真緒が声をかけてきた。
『ん?どうしたの?花。』
『お湯から足をあげるとやっぱり痛くて、病院行ってくるね。』
『えー!大丈夫?』
和紗がすかさず花の元へやってきて足元を見た。赤く腫れてきて、若干熱を帯びている。
『確かに腫れてきてるね、西岡と行ってくる?』
『うん。みんなはご飯食べてまた海に行ってきて良いよ。私のことは気にしないで!』
『‥すぐ病院連れて行けば良かったな。ごめん』
『ヒラマサ大丈夫だよ。少し痛むだけだから!一応病院も行っておこうかなって。』
タクシーを呼ぶために電話しに行った隼人が戻ってきた。
部屋のドアを開けて、声をかけてきた。
『花!タクシーすぐ来るって。行こう!』
『ありがとう、』
立ち上がるとふらっと体がふらついた。
そのときヒラマサが身体を支えてくれた。
『あ‥ありがとう』
『佑々木、タクシーまで担いで行こうか?』
『俺がやるよ。大丈夫。』
すると隼人が駆け寄ってきて、ヒラマサと花の体を引き剥がし、花の体を抱き上げた。
『ヒラマサは、他の奴らと海行ってていいよ。病院に連れて行くだけなら俺でもできるから。』
『‥そうか、頼んだ』
『おう』
『隼人ごめんね、ありがとう』
『気にすんな、早く行こ』
そのままタクシーに乗り込んで近くの診療所まで行ってきた。
『いやーこの辺には結構ミノカサゴいるからね。気をつけるんだよ。可哀想だけど、もう海には入らない方がいいね。ステロイドの塗り薬出しておくからしっかり塗るんだよ。2週間ぐらいで腫れはひいてくるから、初期処置が良かったせいか傷口は綺麗だね。』
『ありがとうございます。』
『めまいや吐き気とかそういう症状があれば、島にある大きな病院の救急外来を受診してください。』
『分かりました。』
『ありがとうございます!』
『まあ、海潜る以外にも楽しいことあるからね、残りの旅行楽しんでね!』
『はい!』
傷口に清潔なガーゼを張ってもらい、薬と一緒にガーゼを1週間分もらった。
薬を塗って毎日張り替えるようにとのこと。
そのまま、コテージに帰ることになった。
帰りのタクシー中。
『なんともなくて良かったー!安心だね!』
『なくはないだろ。明日からどうしよっかな〜』
『隼人は気にせず海行ってきていいよ』
『いや行かないよ。花いないと面白くないじゃん。』
『でもせっかくコテージに泊まってるのに』
『大丈夫だって。他にも観光地あるだろ?』
するとタクシー運転手のおじさんが声をかけてきた。
『お客さん。良いとこは海以外にも沢山あるよ〜』
『そうですよね!』
『そうそう!優しい彼氏に甘えさせてもらいな!』
『そうっすよね!』
『‥ありがとうございます。』
『石垣やいま村にリスザルの森があるのと、シーサー農園とかおすすめだよ!』
『めちゃ楽しそうですね!レンタカー借りないとだな!』
『あの辺からなら歩いて15分くらいのとこにレンタカーがあるからそこに行ってくるといいよ。』
『色々教えてくれてありがとうございます!』
『いーえ!楽しんでね!』
『ありがとうございます!』
『ありがとうございました!』
コテージに戻ると‥
『花ー!明日、リスザル触りに行こ!』
『後、シーサー農園!』
『鍾乳洞!』
『夜は石垣牛で焼肉だ!』
みんなも同じことを考えてくれていたみたいで明日以降のスケジュールを考えてくれていた。
『ありがとう。みんな。』
『なにいってんの!私もカサゴに刺されたくないし、もう楽しんだからいっかなーって。』
『午後からゆっくりして夜はバーベキューだ!』
少しゆっくりしてからみんなでバーベキューの材料を買い出しするためにスーパーや道の駅まで散歩することになった。
道中は和紗と真緒とずっと話している。
3人でいる時間がこの旅行では一番多い。
『さっきスーパー行く時に小さい商店やお土産屋さんもあったよ!雪塩アイスとか売ってた!』
『えー食べたい食べたい』
『買いに行こうー!』
道の駅に着くと、美味しそうなアイスクリームやソフトクリーム、ご当地ジェラートやサーターアンダギーなどが売っていた。
ついつい手を伸ばしてしまう。
『私はマンゴージェラートにするわ!和紗は?何にするの?』
『そうね‥私は、雪塩アイスかな。花も何か食べる?』
『私も雪塩アイス食べたいな!』
『いいね!一個ずつ頼もう!』
『美味しいねえ!』
『うまー!』
『ヒラマサと寺倉が買ったゴーヤジェラートやばいね。』
『えー一口ちょうだい』
『めっちゃゴーヤ』
『うわゴーヤだ』
『ゴーヤすぎる』
みんなでアイスをシェアしながら食べるのは本当に楽しかった。ゴーヤジェラートなんて、ヒラマサと寺倉が選びそうなラインナップだ。ヒラマサから一口分けてもらったがあっさりした甘みにゴーヤががつんと効いていた。
そのあと、バーベキューに使えそうな材料を買い足してコテージに戻った。
『ねえねえ!見てみて!このでっかい肉!』
『やばいやばい!テンション上がる!』
『ちょっとー、スペアリブ仕込みするから台所どいてくれない?』
『はいはーい!北川料理できるのね!意外!』
『スパイスいっぱい持ってきたからね』
『なんかこういうのに凝るやついるよね』
『大人になったら味噌とか出汁とかにこだわりそうだよね。』
『糠漬けとか作るやつね!』
『そうそう』
『みんな好き勝手いうねー!けど、全部興味あるなー。』
『さすがイケメン!』
楽しそうに、北川と寺倉と真緒と和紗が料理している。
西岡と花も野菜を切っている。
『あれ、ヒラマサと寺倉どこ行ったんだろ?』
『あー、あそこにいるよ。もう木炭入れて火おこししてるよ。』
『あ、ほんとだ。』
ベランダに2人が並んで何やら話しながら、火の調整をしていた。
楽しげな雰囲気ではなく、ヒラマサは背を向けているから分からないが、少なくとも寺倉は何やら神妙な顔をしているようだった。
『大丈夫かな?』
『さあ?あと2人同じ大学で仲良しだし、なんかつもる話でもあるんじゃないか?』
『なるほど‥』
『ねえねえ!花!この大きなハラミはそのまま焼くほうがいいよね!切らないほうがいい!』
『あ、そうだね!大きいほうがいいかも』
『ほらー!花もこう言ってるじゃん!』
『誰が食うんだよ』
真緒と北川くんが喧嘩をしている。
けど2人とも楽しそうだ。
ヒラマサが心配だ。
何やら様子がおかしい。あんな感じだったのかな。大学生活疲れてるのかな。
体つきは筋肉質になっていたが全体的に線が細く減量しているようにみえた。
悪く言えばやつれていると言ったほうが正解。
顔色も会った時から少し悪そうで、甘いもの好きのヒラマサが珍しくコーヒーばかり飲んでいる。
大学の話も前はもっとしてくれたのに、聞いてもあまり話してくれない。
声も小さく、元気がない。
大学生活疲れてるのかな。
魚と泳いでる時は楽しそうだったけど、私がカサゴに刺されたからこんなことに‥。
『花?大丈夫?』
『え?あー、うん。なんか、ヒラマサ元気ないなって。』
『あー確かに。部屋で休んでる時もやたらと誰かと長電話するために部屋を出たり入ったりしてたし、無駄にラジオ聞きなら本読んだりしてたよ。寺倉曰く、家族と何か色々あったんじゃないかって。よく分かんないけど』
『え、そうなの?』
『大学でもずっとあんな感じで半年くらい前からそうらしいよ。元気ないって。』
『そ、そうなんだ。』
『心配か?』
『し、心配だけど、家族絡みなら私にできること何もないや‥今はみんなで楽しむこと考えようか』
『そうだな。』
私が色々考えたって仕方ない。
切った野菜や海鮮類を綺麗に並べた。




