みんなでごはん
和紗、杏奈、西岡が静かに花を見つめる。
『‥』
『‥』
『‥』
『‥』
昼食中。花は心ここに在らずという表情で魂が抜けている。
スプーンでうどんを食べようとしてる。
『‥ねえ、何かあったの?由奈』
『あー‥多分やけど』
由奈が昨日あったことをみんなに説明する。
『はぁ?まじで?』
『うん。改札口で綺麗なお姉さんとチューしてた。ほっぺやけど。』
『‥寺倉に確認する。』
『そ、そうか‥』
『普通に彼女できただけじゃね?』
『だとしたら、寺倉から連絡が来るはずよ』
『そ、そうか‥?』
『だって、ヒラマサ。今週末に花と2人でご飯行く約束してるのよ?彼女いるのにそんなことしたら許さないわよ。』
『それはよくない。』
『てか、こんな状態でご飯行けるん?』
『うーん‥』
うどんに乗っているわかめをスプーンで何度も救おうとして、ポトンポトンと落としている。
『やばいって』
『まあ、やばいな。』
『どうすんだよ。』
すると、花がゆっくりと口を開けた。
『あのさ‥。』
『ん?どうした?花』
『今週末ヒラマサとご飯行く約束してるんだけど‥』
『うん。』
『やめといた方がいいかな』
『‥なんで?』
『彼女さんがいるのに、こういうの良くないよね?彼女じゃなくても、多分その手の人だと思うし‥』
『うーん‥私たちも一緒について行くのはどう?』
『‥そっか。それなら2人じゃないもんね』
『うん。由奈もくる?』
『え、うちも!?』
『だって、暇でしょ?』
『あー‥、そうやな。てか、失礼やな。まあ暇やけど』
『西岡くんは来る?』
『あ‥んじゃいこうかな』
『そういうふうにヒラマサに連絡してみたら?』
『そうだね。そうしてみる。』
《今週末のご飯食べに行くの、和紗と西岡も一緒にいいかな?同じ大学の由奈ちゃんってこも紹介したくて。》
《いいよ。佑々木の友達会ってみたい。》
『良いよってさ。』
『そう、良かった。』
『んじゃ、今週末ね。飲みに行こうー!』
『ソフトドリンクね!』
当日、飲み会会場へ行くと‥。
『あ!どうも!蟹ヶ谷遥香です!』
遥香先輩がいた。
寺倉と杏奈先輩もいた。
杏奈が和紗にこっそり耳打ちする。
『この人、前ヒラマサくんとチューしてた人やで!』
『なるほど。わかったわ。』
『ごめん。佑々木。この前の合宿の話しようと思ったんだけど、どうしても佑々木に会いたいって言って付いてくるんだよ。』
『あ、いいよ。全然大丈夫。』
『ごめんねー!花ちゃん!』
タンッ!!
テーブルに鳴り響くグラスを置く音。
和紗だ。
その瞬間、静まり返った空気に氷のように冷たい声がグループ内を流れた。
『無理やりついてくるなんて、図々しいんですね。蟹ヶ谷さんって。』
『あーごめんね?私邪魔だった?図々しいところが取り柄なもんでね〜』
『図々しいのは短所ですよ』
見えないばちばちが光っている。
『あ、和紗、私は別に気にしないから!』
『ほらー花ちゃんもそう言ってるし、そもそも花ちゃんが他の友達も連れてくるって言ったんでしょ?そしたら寺倉くんも行くって言うし、杏奈ちゃんも行きたいって言うし、んじゃ私もー!ってなるじゃん!』
『‥そうですか』
和紗は、気に食わない顔で睨みつけている。
『和紗ちゃん顔やばいで』
『ごめん。』
『うん。流石にやばい顔してるぞ。あーゆう女にそういう絡み方するとうまいことあてがわれて逃げられるぞ?』
『わかってるわよ。』
由奈ちゃんと西岡が必死に和紗をなだめる。
そんな和紗に寺倉が明るく声をかけた。
『和紗、何か飲む?俺は烏龍茶かな!』
『寺倉、この前メールで言ってたことは本当なのよね?』
『あ、うん。本当だよ。本人にも確認したし。』
『なら良いけど‥』
『‥まあ、積極的だなぁとは見てて思うけどね』
『そうね。』
『西岡は何しに来たの?』
『俺がいたら悪いのかよ』
『いや別にそう言うわけじゃないけど、なんか保護者みたいだな』
『保護者?』
『そう。佑々木さんの、和紗が母親で西岡が父親!』
『‥うるさい』
『面白いねー!あ、君は?』
『私は和泉杏奈です!よろしく!』
『杏奈さんね!よろしく!僕は寺倉圭吾だよ。よろしくねー!』
『帝都大医学部なんやろ?天才やな!』
『いやーそれほどでも!』
『あんまり褒めると調子に乗るぞ。』
『そうなん?』
『余計なこと言うなよ!西岡!』
各自、楽しそうに飲んでいる。
すると、早速ヒラマサが花に封筒を渡した。
『ん?これは何?』
『前言ってた合宿あるだろ。ここで撮った写真だよ。俺が編集したんだ。初めてしたやつだから下手くそかもしれないけど‥』
『え!そうなんだ!ありがとう!』
中を見るとを星空の写真が5枚入っていた。
『うわ!綺麗だね!』
『うん。すごい綺麗だったよ。猿鳥山ってとこで撮ったんだ。』
『すごいね、上手に撮れてる。プロみたい。』
『俺も父さんのお下がりのカメラをもらったから今度撮りに行こうかなって思ってて、でも写真で見るより直接みた方がずっと綺麗だから、今度一緒に行こうよ。』
『え!行きたい!行きたい!』
『うん。ここがね‥』
ヒラマサは、テーブル越しに花に写真の星の説明をする。
2人とも楽しそうでつい笑顔が溢れてしまう。
そんな仲良さそうな二人を見つめる遥香先輩と杏奈。
『‥2人とも仲良しね』
『そうでしょ?高校の時からこんな感じなのよ?』
『そうなんだ。羨ましいわ。私、高校の時の友達なんてもういないもん。』
『まあー、大学離れるともう会わないもんね。ここの子達が珍しいのよ。』
杏奈が視線をやって寺倉、西岡、和紗、由奈が楽しそうに話す姿を指さす。
『良いわね。高校の友達。』
『まぁ、あの2人は友達が問われると怪しいけどね?』
すると、遥香はヒラマサの隣に座った。
『ちょっと将生。私が編集教えてあげたんだから感謝しなさいよ?』
『あ、はい。』
『‥そ、そうなんだ』
『そうなの。将生がお父さんから貰ったカメラも少し古いやつだったから使い方分からないんですーっていうから教えてあげたのよね?』
『まあ、そうですね。』
『へー、仲良しなんですね!』
『まあ、先輩と後輩ね?』
『そうですね。』
『‥そういえば、この前将生の家で夕食に作ってもらった麻婆豆腐すごい美味しかったわ!』
『‥!!』
『あーそうですか。良かったです。喜んでもらえて。』
『プロ並みだったわよ!あれ食べた後だとレトルト麻婆豆腐じゃ満足できなくなっちゃった!』
『それは褒めすぎでしょ』
『本当だって!また食べに行っても良い?』
『あ、はい。』
『やったー!』
そういうと、遥香は将生の肩を触りながら顔を近づけた。
恋人の距離感だ‥。
気まずそうにうつむく花。
『‥あ、そろそろ私帰ろうかな?』
『え、もう帰る?』
『うん。明日も一限から講義だし‥』
うつむく花に明るく遥香先輩が声をかける。
『えー残念!またご飯一緒に食べようね!』
『はい‥』
本当は二限からだけど‥。
このやりとり生で見ると結構しんどいな。
その様子をみる和紗と西岡と由奈。
ヒラマサが花の様子を気にするように、声をかける。
『家まで送って行こうか?』
『良いよ。ヒラマサ。俺が送ってくから。』
ヒラマサの声を遮るように西岡が花の横にやってきた。
『花は俺が送って行くよ。』
『え‥』
『え、いいの?西岡。』
『おう。帰ろうぜ。俺も明日早いしな。ほら、行くぞ。』
『う、うん。んじゃお先です!』
『うん!またねー!』
西岡は花の手をとって、引っ張った。
お金を置いて、店を去った。
黙って俯く。花。
『‥』
『落ち込みすぎな?』
『ごめん』
『‥まあ、でも。あんなマウント連発されたらメンタルにくるよな。』
『やっぱり付き合ってるのかな。付き合ってないって言ってたけど、もう直ぐ付き合うんじゃないかな』
『まあ‥有り得なくはないけど』
そういうと花の目からポロポロと涙が出てきた。
『ええ!?大丈夫か?‥コンビニでアイスでも食べて帰ろうぜ!』
『そ、そうだね。ありがとう!アイス食べてやる!』
『おう!こういうのは甘いもん食ってスッキリするのが一番だぞ!』
『ありがと!西岡!』
『おう!ほらほら!あそこにちょうどコンビニがある!パフェ奢ってやるよ!』
『ええ!?』
『ほらほら行くぞ!置いてくぞ!』
『ええ!待ってよ!ちょっと!』
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残されたメンバー。
和紗、由奈、ヒラマサ、寺倉
和紗は重い腰をゆっくりとあげて、由奈に声をかけた。
『‥私たちも帰ろうか。由奈。』
『そ、そうやな。』
すると、チラッとヒラマサを見て低い声で話しかけた。
『ヒラマサ。』
『‥なに?』
『もう知らないから』
『え‥』
そして、由奈を連れてその場を去ってしまった。
杏奈が遥香の背中をパシッと叩く。
『なにしてんのよ!遥香』
『ええ!?なに!?』
『何じゃないって!てか、将生とそんなに仲良くなってたの知らなかったんだけど‥』
『あ、ごめんごめん!知らなかったか!』
気まずそうに皿に残された料理を寺倉が黙ってつまんでいる。
杏奈がヒラマサの顔を見つめながら声をかけた。
『将生、あんたもう花ちゃんいいの?』
『‥追いかけてくる。』
『え、将生くんちょっと待って。』
そのまま店を出る将生と将生を追いかけて遥香が出て行ってしまった。
『‥ねえ、圭吾くん。遥香がなんとなく将生に好意を寄せてるのは知ってたんだけど‥こんなことになるなんて』
『‥そ、そうですね。』
『大丈夫かしら。花ちゃん。』
『うーん‥』
『ていうか!将生の家に遥香が行ってるなんてが知ってた!?』
『知りません!知りません!僕は何も知りません!』
その様子を見て、何も知らなかったのだと思った杏奈は詰め寄るのをやめた。
『仕方ないわね。これ全部食べるわよ』
『ええ!?2人でですか?』
『何言ってんのよ。人呼ぶわよ!』
すると杏奈は、スマホを取り出して知り合いに片っ端に連絡をし始めた。




