ライバル出現
あの飲み会から三日後。
サークル内で北川くんといると千葉先輩が声をかけてきた。
『うさちゃん!本当にごめんね!俺、あの日のこと全然覚えてなくて!なんか気悪いことしたよね!?ごめんね!!』
『あ、全然ですよ‥次から気をつけてくれれば良いので。』
『そうっすよー先輩。気をつけてくださいね!せっかくのイケメンが台無しっすよ!』
『北川もごめんな!てか、まじかー!北川に褒められると照れるなー!』
『全然褒めてないっス!』
北川くんに言われた、あの時の言葉を思い出す‥
本当に覚えてないのかな?
『ごめんね!当分酒は自粛しろって他のメンバーからも怒られたんだよね。禁酒するわ!』
『そうしてくださーい!』
『そうなんですね。頑張ってください。』
先輩はある程度話すと、満足した様子でその場を去っていった。北川くんが千葉先輩との間に入って適当に相槌をうってくれたおかげでスッと離れて行った。
『千葉先輩、反省してるって言ってたね』
『まあ、口だけならなんとでも言えるからねー』
『‥そ、そうだよね』
『騙されちゃダメだよー』
『はい‥』
そうだ。騙されちゃだめだ。
けど、今日サークル内で他の先輩たちに聞いた千葉先輩の話に悪い話はなかった。
優しくて明るくて元気があっていつもみんなをまとめてくれるコミュ力の高い人。
話が上手だから女の子にもモテる。
サークル内でも千葉先輩のことが好きな人が何人かいたぐらいだった。
悪い人ではないのかな‥。
千葉先輩は、その日から本当に飲み会を断っているようで、他のメンバーから飲みに誘われても断っていた。
ギターを練習していて、サークル内でも花にも丁寧に教えてくれていた。
そのおかげで気になったいたテンポの速い曲や練習してた曲が3曲ほど弾けるようになった。
教えるのもとても上手だ。
北川くんはあーいってたけど、勘違いされやすいだけで悪い人ではないのかも‥。
《4月から3ヶ月が経ち7月になった》
3年の先輩たちが主流になって大学の軽音サークルが所有している専用ライブハウスでライブが行われることになった。
一年生の私たちは、照明や音響、楽器や運搬作業やチケット販売、ドリンクを用意したりするのが主な仕事だが、先輩達の演奏を見て自分たちの演奏に生かすことが目的だ。
みんなで同じTシャツを着て、楽しげな雰囲気の中で準備する。
『すごいね!ライブハウスなんて初めてきたよ!ドキドキしちゃう!』
『あ、そうなんだ!俺はよく来てるよー何回か演奏もしたことある。』
『え!さすがだね!』
『まあね〜今日は俺、音響担当させてもらうし、うさちゃんと杏奈ちゃんは受付だよね?頑張ってねー!』
『うん、北川くんも頑張って!』
髪の毛をポニーテイルにして、杏奈ちゃんと先輩と一緒にチケットを売って、ドリンクを渡す。ライブは大盛況で、学生以外にも大人や一般のお客さん、他の大学の生徒も観にやって来た。
『ねえ、君たちもサークルで音楽してるの?』
杏奈と2人で受付で仕事をしていると、1人の男性が声をかけて来た。二十代後半ぐらいの男性二人組だった。
『はい、一応サークル内で活動してます』
『俺たちOBなんだよね!』
『可愛いね?何年生?』
『あ‥一年生です』
『えー!てことは19歳?18歳?』
『ヤバいって犯罪じゃん!』
‥だるい。だるすぎる。
『あの、まだ仕事があるので‥、ドリンクをもらったら中に進んでもらっても良いですか?』
『えーなんでよ!もっと話そうよ』
『若い子のパワー欲しいなぁ』
『いや‥』
気持ち悪い。どうしよう。
杏奈ちゃんも困ってる。ここは私が‥
『あれー?どうかされましたか?』
『ん?あ、千葉じゃん!』
『あーどーも!千葉です!お疲れ様っす!』
『元気そうじゃん!』
『なに、きみ?千葉?学生なの?』
『そうだよ、千葉って言って俺の後輩なんだよね。』
『はい!千葉っていいまーす!ちなみに、俺んちディズニーランドなんすっよ!』
『なにいってんの?』
『すぐこれ言うんだよー』
千葉先輩が来て、間に入って来てくれた。
大人の2人をひきつけてくれている。
そのまま目が合うと、目配せしながら向こうに行くように言われた。
そのまま杏奈と一緒にその場を離れて、仕事に戻った。
『千葉先輩、助けてくれたんかな?』
『そうだね‥』
『やんな!良い人やなー!』
『そうだね‥』
そして、先輩たちのライブパフォーマンスが始まった。楽しそうに演奏をして、ボーカルとしても圧巻の演奏をする千葉先輩はしっかりカッコよかった。
『ちょっとかっこいいね』
『やっぱりステージに立つとかっこええな!』
『うん‥!!』
『私らもいっぱい練習して早く立ちたいな!』
『そうだね!頑張ろう!』
千葉先輩はとても人気者で、ライブパフォーマンス後は人だかりが出来ていた。
『花、片付け終わったよ。どう?帰れそう?』
『あ、うん‥こっちもうすぐ終わり‥』
『花ちゃん!なんか、佑々木ちゃんに会いに来たっていう人たちがおるんやけど‥』
『え?私に?』
『うん。平井くんって人らしい』
『え!?ひ、ひらい!?』
杏奈ちゃんに言われて、急いでスタジオの外に出ると、ヒラマサと寺倉と杏奈さん、そしてもう1人知らない綺麗な女の人が立っていた。
『ヒラマサ!来てくれたの?』
『ああ、うん。姉ちゃんがここで紫翠大学軽音サークルのライブ演奏があるって聞いたみたいで行きたいって言うから‥』
『久しぶりね!花ちゃん!』
『あ、杏奈さん!』
『僕もいるよー』
『寺倉君もみんなありがとう。私のライブじゃないけど‥』
『いや知ってたよ。けど、佑々木が元気にしてる姿見れて良かった。頑張ってたな。』
『!‥まあね!!ヒラマサも元気そう!』
『へー!この子が佑々木ちゃんね!可愛い子ね!』
杏奈さんと一緒にいた綺麗な女性がヒラマサの肩を持ってピョコっと飛び出して隣にやってきた。
『あ、どうも‥佑々木です。』
『将生くんと同じ帝都大学2年の蟹ヶ谷遥香です!よろしくね!佑々木ちゃん!』
『よ、よろしくお願いします。』
『ふふ、噂通り可愛い子ね?将生くん』
『別に噂してたのは先輩たちだけでしょ』
『あっ、そかー!ごめんごめん!』
なんか‥距離近いな。
そのまま遥香先輩は将生の肩を持ってもたれかかりながら楽しげに話してる。
将生も嫌がるようなそぶりがない。
『私ね、将生くんと同じ天文学サークルに入ってるの。いつも静かな場所で空ばっかり観てるから、こういう音楽バンドは初めて観たわ!楽しかった!ありがとうね!』
『あ、いえ‥』
ヒラマサもサークルに入ったんだ。
天体観測好きだもんね‥同じサークルの先輩なんだ。
『ちょっと!遥香!グイグイ行きすぎ!花ちゃんはちょっと人見知りしてるでしょ!』
『あーごめんごめん!』
『‥佑々木。』
『ん?なに?』
『また佑々木が演奏するときに観にくるし、連絡してよ。』
『うん!またきて!』
『楽しみにしてるよ』
『ありがとう』
『ねえねえ、俺も呼んで良いよ?』
『あ、寺倉も連絡するね!』
すると後ろから、北川くんと和紗もその様子を見て駆け寄って来た。
『あー!なになに!ヒラマサ来てくれたの?』
『寺倉もいるじゃん』
『あ‥北川もいたのか』
『一応 僕は、音響や照明、設営もしたし何度かステージの上にも立ったんだけどー!』
『そうなのか、全然気づかなかった。』
『あ、そう!正直者だね!』
『木村さんだ、変わらないね!』
『そりゃ卒業して半年しか経ってないし変わりようがないでしょ。』
『そ、そうだね!』
みんな久しぶりに会って、楽しそうに話している。
すると、遥香さんが話しかけて来た。
『ねえねえ、私もまた来るからさ、杏奈のこと杏奈さんって呼ぶなら私も遥香さんって呼んでよ!花ちゃん!』
『え‥あ、はい。遥香さん。』
『やったー!ありがとう♪』
『いえ‥』
『あ、そうだ。花ちゃんってさ、将生くんと付き合ってるの?』
『え!』
耳元で小さな声で聞かれた。
びっくりした。
『そ、そんなまさか!付き合ってないですよ!』
『へーそうなんだ!』
急に変なことを聞かれたのでつい赤面してしまう。
『んじゃさ、今度相談乗ってくれない?将生くんの好きなものとか教えてよ。友達なら』
『え?』
『私ね、将生くんのこと気になってるんだよね』
『‥え』
『付き合ってないならいいでしょ?』
『‥あ、はい。私の知ってる範囲なら‥』
『ほんと?嬉しいー!んじゃまた会いに来るから教えてね?』
『は、はい。』
『ちょっと、遥香。何話してるの?』
『へへ、秘密ー!私と花ちゃんの秘密ね!』
『なによそれ』
『んじゃまたね〜花ちゃん!』
そうすると、杏奈さんと遥香さんは手を振って来た。その様子を見て、一緒に寺倉とヒラマサも帰るようだった。
『んじゃ、佑々木またな。』
『あ、うん。またね!』
ヒラマサは軽く手を振ると、そのまま帰っていった。
遥香さん、少し苦手かもしれない。




