卒業式と合格発表
試験が終わり、大学試験も終わり、
受験が終わった。
先に私立大学組の合格発表があった。
真緒は希望していた私立の美術大学に無事合格できた。みんなに合格を伝えてお祝いをすることを提案したけれど、みんなの合格発表まで待ちたい。と言ってくれた。
そして、卒業式を迎えた。
半分くらいは、受験を終えていたが、もう半分ぐらいは受験を終えていなかったので卒業式が終わっても国立組は煮え切らない様子で過ごしている人が多かった。
不合格を確信して、もぬけの殻になっている人、そもそも卒業式に来ない人もいた。
私も合否が気になってはいたが、高校生活が終えることが寂しく名残惜しい気持ちもあった。
真緒と出会えて、友達になれた。
ヒラマサと出会えて、恋もできた。
他にも友達がたくさんできて、色々辛いこともあったけれど、充実した高校生活が送れたと思う。
みんなと離れ離れになるのがとにかく寂しかった。ヒラマサと何か約束しないともう会えないのだと思うと、《会う》という行動一つが一気にハードルが上がる。
もう気軽に姿を見ることもできないんだと寂しくなった。
『わーん!もう花と離れ離れとか無理‥』
『真緒‥私も寂しいよ』
『ねえ、花。』
『なに?』
『‥本当にごめんねー!!もう私は‥あんなに‥たくさんひどいことしたのに‥また友達でいてくれてありがとーー!本当にごめんなさい!!!』
大きな声で叫びながら真緒は号泣し出した。
『ええ!?ちょ、ちょっともう良いよ。気にしてないよ!』
『花の優しさに甘えてばかりでごめんなさいーー!わーん!!!』
『えええ!?ちょっとー!』
『おやおや、感無量ってやつだねえ』
『あのプライドの高い真緒ちゃんがこうやって謝罪できるなんて成長したね』
『うん』
千佳や和紗達がその様子を微笑ましそうに見ていた。真緒は泣きながら私に抱きついて来た。
『花と離れたくないよ‥これからもたくさん遊んでね‥私のこと忘れないでね‥』
『ふふ、忘れないよ。これからもたくさん遊ぼうね。』
『‥うん!!』
真緒がたくさん泣いてる姿をみて、なんだか私も少し涙が出た。
そして、最後にヒラマサ写真を撮りたいと思って、ヒラマサを探すがなかなかいない。
あ!ヒラマサいた!
ヒラマサは、中庭にある桜木の下に立っていた。声をかけに行こうとすると、どうやらもう1人の女の子と一緒にいるようだった。
つい陰に隠れてしまう。
『平井くんこことがずっと好きだったの
私と付き合ってほしいです。』
おお‥こっ告白だ。
さすが密かにモテるだけある‥。
『そうなんだ。ありがとう。ただ、俺は好きじゃないから付き合えない。ごめん。』
『そ、そうだよね。ごめんね、こんなこと言って‥私の気持ち気づいてた?』
『ごめん、全然知らなかった。』
『そう‥んじゃせめて、制服のボタンひとつだけ私にくれない?』
『あ‥うん。ボタン。』
するとヒラマサは、その子にボタンをひとつ渡した。
『ありがとう!』
『うん。いいよ。』
『平井くんも新しい場所で頑張ってね』
『うん。ありがとう。』
するとその子は泣きながら走り去っていった。
1人中庭に残されたヒラマサ。
『あ、あの‥ヒラマサ。』
『ん?あ、佑々木か。』
『‥あ、あのさ。せっかくだし一緒に写真撮らない?』
『いいよ、撮ろう。』
そういうと、ヒラマサは桜の木の前で花と2人で写真を撮ることにした。
『あそこの石畳におこうかな‥』
スマホをどうやって配置するか悩む。
せっかく初めて二人でヒラマサと撮る写真だ。良い写真にしたい。
『手に持って撮ればいいじゃん』
『それだと後ろの桜の木が入らないでしょ?』
『そうか?佑々木じゃなくて俺が持てば入るだろ。』
するとヒラマサは、スマホを持って手を伸ばした。内カメにすると腕が長く身長が高いヒラマサがカメラを持つとしっかり桜の花も画角に映り込むことができた。
『流石!んじゃそのまま一緒に撮ろ!』
『うん』
2枚、3枚ほど撮ってくれた。
『ありがとう!めちゃ良い写真だー!』
『だな、俺にも後で送っといて』
『うん、わかった!写真撮ってくれてありがとう。大切にするね。』
『‥いいよ。俺も佑々木と写真撮りたかったから、ありがとう。』
『ほんと!?』
『うん。卒業したらもう会えなくなるもんな』
そう言われると、ドキッとした。
嫌な方のドキッだ。
やっぱり会えなくなるのかな‥
『もう同じ学校で会えないもんね』
『大学が別だからな』
『受かりそう?』
『受かると思う。佑々木は?』
『私も‥頑張ったからね。けど、自信ないよ』
『そうか?俺は受かると思ってる。』
『本当?なんで?』
『だって、勉強頑張ってただろ。判定率も合格圏内だし、余程のことがなき限り大丈夫。』
『ありがとう‥そう言われると心強いよ。ねえ、ヒラマサ。お願いがあるんだけど。』
『なに?』
『わ、私にもヒラマサのボタンくれないかな?』
『え』
『だめかな‥?』
沈黙が走る。よくよく考えたらボタンくださいって。好きです!って告白してるようなもんだよね!?え、やばいこと言ってる!?
も、もう会ってくれなくなったらどうしよ‥
全身に冷や汗が出る。
『あ、あの‥今のはやっぱり』
『ごめん』
『‥え』
『ボタンあげられない』
あっさりフラれた‥。
さっきの子はボタンもらえてたのに‥。
口をポカーンとあけたまま口から魂が抜けそうになってしまう。
涙も枯れて出そうにない。
『さっきあげたやつで、最後なんだ。もうボタンないんだよ。』
『え‥えええ!?』
するとヒラマサは、ブレザーを見せると確かにブレザーを止めるセンターボタンから袖についてるボタンまで全てなくなっていた。
『‥モテモテ』
『ごめん、まさか佑々木からそんなこと言われると思わなかったから何も考えずに全部渡した。本当にごめん。』
ヒラマサは、本気で焦った顔をしていた。
ポケットの中身を探りながら何かあげれるものはないか探している。
『あ、いや‥いいよいいよ!それなら仕方ないもん!』
『けど‥』
『ほんと全然!あったら欲しいなーくらいだったからさ!』
『‥あ、んじゃこれは?』
ヒラマサは、名札を指さした。
『‥良いの?』
『うん。』
『あ、ありがとう!』
『その代わり‥』
『‥ん?その代わり?』
『‥佑々木のやつと交換したい。』
『え、私の名札?』
『うん。嫌か?』
『全然いいよ!ヒラマサの名札貰えるなら!』
そして、胸についてる名札をとって、ヒラマサに渡した。私はヒラマサから名札をもらった。
『嬉しい。ありがとう。』
『うん。』
『なんか、卒業式って感じだー!』
『そういうもんか?』
『うん。そういうもん。』
ヒラマサからもらった名札を大切にバッグにしまった。
『あのさ、佑々木』
『ん?』
『俺、佑々木のこと‥』
その瞬間。強い風が吹いた。
下から巻き上げるような突風だった。
思わずスカートを押さえた。
ヒラマサも身を屈めた。
『うわ、びっくりしたね!』
『‥そうだな。』
『んで、何を言おうとしたの?』
『え‥あー、‥頭に桜ついてる』
するとヒラマサは頭についてる桜の花びらをとってくれた。
『あ‥あぁ!そうだったんだ!ありがとう!』
やばい、告白されるのかと思った。
恥ずかしいー!!!
‥告白することも考えたけど、フラれて下手に気まずくなるくらい今の友達の距離感を保っていたい。真緒たちとのグループラインにヒラマサも入っている。
またみんなで出かけると言っていた。
もう会えなくなるわけじゃないもんね‥。
『おーいお前たち。そろそろ門閉めるぞ。
帰りなさい。進路相談や自習室が必要な人以外はみんな帰らないとだめだぞー。』
おじいちゃん先生が声をかけて来た。
『あ、はい。』
『か、帰ります。』
『気をつけて帰りなさいねー』
『‥帰ろっか。』
『そうだな。』
そのまま2人で門へ向かった。
その様子を西岡は影からじっと見つめていた。
西岡は卒業前に花に告白しようと決めていたが、そのタイミングが訪れることはなかった。
受験発表当日。
西岡と和紗と‥北川くんもいた。
『北川くんも同じ大学受けてたんだ』
『学部は違うけどね。』
『へー‥学部どこ受けたの?』
『理工学部だよ。』
『へー‥』
『合格の確認に来ただけだから。確認したらすぐ帰るよ〜』
『はぁー、余裕ですね』
『99パーセント受かると思ってるからね!』
『羨ましい自信です‥』
『みんな受かってるよ!』
『ほらほら、もうすぐ時間だよ!』
掲示板に大学教員たちが続々とやってきた。
大きな紙を掲示板に貼った。
必死に自分の受験番号を探す。
『きゃあああ!!!!あったー!!』
『俺も合格してた!!』
『私もあったよ!』
『俺も当然の結果だな』
無事みんな合格できた。
涙が溢れてくる。嬉しい。嬉しい。嬉しい。
西岡が肩を叩いてきた。
『良かったな!佑々木!言ったろ?合格するって!!』
『うん‥!!嬉しい!みんなで春から大学生になれるね!』
『おう!!嬉しいなー!!頑張ったな!!』
『みんな頑張った!!!』
『お母さんに連絡しなきゃ!!』
『私もお母さんに連絡しなきゃ』
お母さんに合格の連絡をした。
けれど、お母さんは仕事中だからメールを見るのは昼休みの時かな‥。
プルルル!!!!
『!?‥あ、もしもし!』
『よく頑張ったね!!!よく頑張った!!良かったね!!本当に良かった!!お疲れ様!』
『お、お母さん!?仕事は!?』
『そんなのどっでもいいよ!!おめでとう!』
『‥ありがとう‥!!』
『ここがゴールじゃないからね?勉強頑張るのよ!!』
『うん、わかってる!頑張るね!』
『うん!まあ、とにかくもう安心だ!今日はお祝いねー!食べたいものメールしといてね!仕事終わりに買って帰るわよ!』
『やった!ありがとう!』
『うん!あ、はーい!すぐ戻ります!んじゃごめんね!仕事に戻るわね!んじゃ気をつけて帰ってくるのよー!』
『はい!』
『んじゃあね』
電話を切った。周りを見るとみんな合格の連絡をしている。家族や親戚、友達にしている。
プルルル
電話が来た。ヒラマサからだ。
『あ、ヒ、ヒラマサ?どうしたの!?』
『合格してたか?』
『うん!合格してた!ヒラマサは?』
『俺も合格してたよ。おめでとう。』
『良かった!!おめでとう!』
『ああ‥大学離れても仲良くしてくれよ』
『もちろんだよ!またみんなで遊びに行こうね!』
『ああ、あ、そうだ。寺倉も受かってたよ。』
『あ、そうなんだ!良かったね!!こっちもみんな受かってるよ!和紗も西岡も北川も!』
『そうか、よかったな!』
『うん!』
『赤石には連絡したのか?』
『あ、まだだ!連絡しなくちゃ!』
『早くしてやれよ。あいつ、合格してからもずっと国立組の合否がわかるまでびっくりするくらい大人しくしてたぞ?』
『ふふ、そうだね!みんなで遊びにいかなきゃだね!』
『ああ、また連絡取り合って予定合わせよ』
『うん!』
『んじゃまた』
『うん、また』
嬉しい。今私はとても幸せだ。
受験勉強頑張って良かった。
『ねえねえ、せっかくだしみんなで写真撮ろうよ。記念に!』
『良いね!とろとろ!』
『俺のスマホでいい?ほらほら入ってー』
『みんな入る?』
『入る入る』
『俺も入っていいの?』
『当たり前じゃん!早くこっち来なよ北川!』
『んじゃ遠慮なくー!』
『行くよー!ハイ!チーズ!』




