クラス替えと進路
三年生からは、クラス編成がガラリと変わる。
学力と受験する大学のレベルや全国模試の結果で分けられ、三年制の1学期で三年制で受けるべきカリキュラムは全て修了し、残りの二学期三学期では全て受験勉強に充てられる。
ハイレベルな大学や医学部を受験するSランク組は、全て1クラスにまとめられる。
そして、次に地方国立や私立大学を受験するメンバーをAランク組として3クラス。
標準レベルの私立大学受験を目標にしているクラスをBランクの3クラス
専門学校進学や就職、成績不良であるがとにかく進学を目指す人がCランク1クラスだ。
私は国立を目指すため、一応Bクラスに入れたので、3つのうちの1クラスに分類される。
真緒は、成績優秀生徒のためハイレベルなSランククラスに配属された。もちろんヒラマサも真緒と同じSランククラスだ。
『花と離れるの無理‥』
『そう言わないの。大学受験終わったらたくさん遊ぼ!』
『そうだよね‥うん』
なんだか元気がない。
そりゃでも受験を控えている進学校の生徒なんてこんなもんだろう。
特進クラスは殺伐としている。優秀な学生が揃っている。みんな誰もが知っているような有名大学に進学するような人たちだ。
『でも、毎年落ちて浪人する人が5分の1いるって言うしね‥』
『うわ!びっくりした!』
花の背後からヌッと現れたのは千佳だ。
真緒のことをニヤニヤしながら見つめている。
『そんなこと言わないでよ!』
『事実だもん』
『そういう千佳は進路どうするの?』
『私は、身の丈にあった地方国立狙いかなー?』
『同じだ!だから同じクラスなんだね!』
『そうなのー!嬉しいよね!今年もよろしくね!』
『よろしく!私も嬉しい。和紗と綾羽は?』
『和紗は同じクラスだけど、綾羽は隣のクラスなんだよねー!』
『あー、綾羽いないの寂しいね』
『一応クラス編成的には同じグループにいるのにね!残念だわ!』
『何よ!私と離れたことも残念がってよ!』
『真緒ちゃんは私たちとは住む世界の違うSランク様だからね〜勉強頑張ってねー!私たちは仲良くみんなで授業受けますね!』
『んんっ!むかつく!』
『おーこわこわ。ほらもう先生来るよー!違うクラスって言っても教室隣じゃん!早く行こうー!』
『あ、もう!!一緒にお昼ご飯食べてね!』
『はいはい!またあとでねー』
すれ違いで大きな背中にぶつかった。
『あ、痛っ!ごめんなさい!』
『ごめん‥あ、佑々木か。』
『あ、ヒラマサ、久しぶり!なんか身長伸びた?』
『うん。まあ、ちょっと伸びたかも。よそ見して歩くなよチビ。』
『なっ!』
『んじゃな。お互い受験がんばろ〜』
そのまま手をひらひらさせながら教室に入っていった。
年々伸びていってるヒラマサは噂に聞くと身長183cmを超えたらしい。でかい。
教室に入って席に着くと、隣の席にいたのは
『あ!佑々木じゃんーよろしくー!』
『西岡!よ、よろしく‥』
席で単語帳を読んでいたのは、西岡だった。
朝練終わりのせいかまだ肌寒い春なのに半袖Tシャツとハーフパンツを着ている。寒そう‥。
我が校は校則は緩く、指定のTシャツやズボン、華美でなければ制服を多少着崩したりしても問題ない。
なので、真緒もバッチリメイクをしてスカートの丈は膝上だし、ピアスも派手でなければ暗黙の了解でOKになっている。
『同じクラスだなよろしく』
『‥うん。西岡って進路なんだっけ?』
『俺は、国立薬学部狙いだよ。薬剤師になりたいんだよね。父親が薬剤師だから。』
『あ、へー‥結構薬学部志望多いね』
『そう?医学部に比べたら目指しやすいもんな』
『どっちもどっちな気がするけど‥。』
『佑々木は?』
『私は‥とりあえず国立狙いで‥』
『へー薬剤師になりたいんだと思ってたわ!』
『え、なんで!?』
『だって薬学部の大学資料請求してただろ?一年の頃』
『‥よく覚えてんね』
『おうよ〜!で、もう変更したんだ?』
『‥まあ、考え中かな‥』
『‥え、3年だろ?』
『わかってるよ!』
そのまま椅子に座りおもむろに教科書やノートをバッグから取り出す。
進路がまだ決まらない。とにかく勉強はくまなく頑張ってる。けど、決まらない。焦っている。
‥いや本当は決まってる。
けど、勇気が出ないんだ。
そういえば、みんなの進路を聞いてない。
真緒が何を目指してるのかさえ知らない。
ヒラマサは何になりたいんだろう。
あんなに勉強できる二人は、何を目指すんだろ。
そうしてるうちに昼休みになった。
『花ー!やっとお昼ご飯だねー!食べよ!』
『本当に来たの!?』
昼休みになると、お弁当を持った真緒が満面の笑顔でやってきた。
『え!だめ!?』
『ダメじゃないけど‥びっくりした。真緒は友達多いから他の子と食べるかと思った。』
『いやーやっぱり花と話したくなっちゃう』
『ふふ、ありがとう。』
『さあさあ、食べよ!』
『さあさあ!食べよ!』
『さあさあ〜食べよ!』
真緒が私の横に座ると、にっこり笑顔の和紗と千佳も隣にやってきた。
『千佳と和紗も一緒に食べるのー!?』
『私はいいよ.みんなで食べた方が楽しいし!』
『ケチくさいこというなよ真緒ちゃん』
『あからさまに嫌そうな顔するなよ真緒ちゃん』
『し、してないわよ!みんなで食べた方が美味しいもんね!うんうん!』
『んじゃ真緒ちゃんのお許しも出たし、食べますかー!』
『いただきまーす!』
というわけで
4人でご飯を食べることになった。
『特進クラスってどうなの?勉強早い?』
『んーまあまあかな。私は塾と予備校で2年の終わりで3年の範囲は終わらせてたから走りでも問題ないわ。他のみんなもそんな感じだったわね。』
『へーさすが特進だね』
『花たちのクラスも国立狙いだし、一学期で3年の範囲全部終わらせるんだから同じでしょ?』
『うーん、速さは同じだけど、問題の質がそっちの方が難しいよね。応用も多いし、先生たちの気合いの入り方も‥って感じ。』
『へー‥』
『今年はヒラマサと寺倉を筆頭に帝都大学現役合格できそうなメンバーが揃ってるもんね。』
『それはそう!やっぱり賢いなーって思う。』
『同じクラスでもそう思うんだ』
『そりゃそうでしょ』
『真緒は、どの大学目指すの?』
『あー‥実は、私。元々言われてた大学辞めようと思ってるんだよね。』
『え!?なんで!?』
『真緒クラスになると下手な進路変更は先生が許さないんじゃない?』
『優秀な生徒ばかりに囲まれて早々に心折れたか?』
『酷い言いようね!勉強には別に困ってないわよ!
けど‥元々目指してた叡智大学は親の出身校なの、それもあって受けろって言われてたからとりあえず目指してたけど、他になりたいものができたの。』
『‥え、何?』
『デザイナーになりたくて‥常陽美術大学に進路変更する予定。』
『‥えぇ!?』!
『親は許してくれたの!?』
『なんとかね、ファッションやメイクが好きなことは知ってたし、普段から自分で服とかも作ってたしね。三学期に入る前に家族会議で話し合って、パパも最終的には根負けして〜って感じかな。でも後悔したくないの。』
『‥かっこいいよ!真緒!』
『花、ほんと?』
『うん!めちゃくちゃかっこいい!真緒がそんなふうに考えてるなんて思わなかった!』
『えへへ、ありがと。』
『でも、美大なら画塾とか行かないといけないんじゃないの?今から間に合う?』
『専門試験にはデッサン以外にも小論文とプレゼンテーション面接っていうのがあってね。そっちならなんとか形にできるんじゃないかって塾の先生も言ってた。』
『高校の先生には話したの?』
『今日二者面談だからその時話す予定‥』
『うわぁ‥緊張だね。』
『うん。でもせっかく親にも認めてもらえたし、全力で頑張る!』
『すごい!頑張ってね!』
『うん!頑張るぞー!』
『応援してる!』
『みんなありがとう!!この話したの友達では花たちが初めてだよ!ちょっと緊張しちゃった!よーし、気合い入れるぞ!』
『うんうん!和紗と千佳は?』
『私は元々教師を目指してるからね、国立大の教育学部を目指してるよ。小さい時の夢だからね、変わりないよ!』
『千佳はずっと目標がブレなくてかっこいいよね!応援してる!』
『千佳は先生っぽいもんね!お節介やきなところがさ!』
『和紗は?』
『私は、研究職に就きたいし、化学が好きだから薬学部を目指す予定。国立大学なら学費も安いしね。』
『‥やっぱり薬学部って国立なら安いの?』
『うん。6年間で大体350万円ぐらいかな。私立だと1000万円以上かかるし‥、親にも国立にしてくれって言われてる。』
『その分難易度もめちゃ上がるけどね』
『うん。でも、自分のためになるし勉強は嫌いじゃないからね。それに、私も昔から憧れてた職業だから。』
『和紗かっこいいー!』
『やっぱりなりたいもの目指したいよね。人生一度きりだもんね!』
『やらぬ後悔よりやる後悔だね!』
『‥そうだよね。』
『花は?』
『え?』
『花は何になりたいの?』
『私は‥』
バタン。
『ただいまー‥って、まだ帰ってないか』
『あ、姉ちゃんおかえり!』
『お母さん今仕事終わって帰ってくるって夜ご飯焼肉がいいって言ったら無理って言われたわ』
『そりゃそうでしょ。何言ってんのよ。』
『その代わり、早く帰ってきた俺たちで夕ご飯を作ったんだぜ?』
『姉ちゃん受験生のくせにバイト漬けだもんなー?』
『え、そうなの?ありがとう‥確かにいい匂いがする。カレーライス?』
『正解!』
『肉がないからウインナー入れた』
『うまそうだろ?』
『やるじゃん!てか、もうバイトはそんなにしてないし。』
『え、今日もバイトだろ?』
『今日は違う。週2回ぐらいしか働いてないよ。他の日は学校で勉強してるんですー。』
『んじゃ今日も勉強してたの?』
『まあね』
『さすが、受験生!』
『どうもー。んじゃ私はお風呂洗ってくるね。』
『もう洗ってあるよ』
『あとは沸かすだけ』
『あんた達シゴデキ過ぎ!!』
『あざっす!』
『今日は部活休みだったから暇だったんだよね』
『んね、だからスペシャルカレーだぜ!』
お風呂を沸かして先にお風呂に入った。上がってくると、お母さんが帰ってきていた。
スーパーに寄ってきたようでエコバッグに入れてる食料品を冷蔵庫にうつしていた。
『お母さんおかえり』
『ただいまー!ご飯も作ってお風呂も沸かしてくれるなんてシゴデキな子供たちね!』
『私は何もしてないよ。朝陽と夕陽だよ。』
『何言ってんのー!花も遅くまで勉強頑張ってたんでしょー!お疲れ様!』
『‥ありがとう』
『そんで、何?話でもあるの?』
『え?』
『なんか話したいことあります!って顔してるわよ!あとでゆっくり聞くでもいい?』
『‥うん。ありがとう。』
夕食を食べ終わってお母さんがお風呂から上がってきた。
朝陽と夕陽は2階へ上がっていった。
リビングには花とお母さん二人だけになった。
『お母さん‥話なんだけど』
『ん?なに?なに?』
『実は、進路のことでね。』
『うん。』
『国立大学に行くって話だったんだけど』
『うん』
『希望大学はそのままなんだけど、学部を変更したいの!』
『おー!なになに?』
『や、薬学部に行きたいの!薬学部って6年生で、四年制の一般学部より学費も100万円ぐらい増えちゃうんだけどね。そこで私がバイトで貯めたお金がこれだけあるから‥、』
花は、通帳を開いて取り出してお母さんに渡した。すると、お母さんは中身の金額を確認せずに通帳を閉じて花の手に返した。
『花。そのお金は自分のために使いなさい。学費は私が全額出すから大丈夫。』
『でも』
『さすが私立はキツイかな‥けど、国立大学の学費なら出せるよ。ちゃんと貯めてる!安心しなさい!』
『だって私の下には朝陽と夕陽もいるし』
『花は勉強ができるから、塾代がほとんどかからなかったし、その分貯金に回せたのよ。あなたが一人で勉強を頑張ってくれたおかげ。朝陽と夕陽の分も心配しなくて大丈夫。
ちゃんと一人ひとりお金は貯めてるのよ。』
『‥んじゃ』
『国立大学薬学部はかなり難しいよ?勉強全力で頑張りなさい!バイトももうやめなさい。それだけ貯金があれば残り1年間も楽しく過ごせるでしょ?』
『お母さん‥ありがとう』
『何言ってるの。当たり前でしょ!子どもなんだから遠慮しなくていいの。子どもが進学したいって言ってるのよ?学費を親が払うなんて当たり前じゃない!こんな時ぐらい大きな顔させてよ?』
『ありがとう‥!』
『勉強頑張ってね!』
『うん!』
母親にも話を通した。あとは夢に向かって努力を重ねるだけだ。




