No.2 数学の神様
翌日、数学の補習の為に石田先生がいる2組の教室へ向かった。
補修では、テストの範囲内で先生が配布した問題のプリントをひたすら解くというものだ。
たまにテストにまんまその問題が出ることがあるのでとにかく暗記する勢いで解くのが大事!
『分からない‥』
『あ、佑々木。これはだな‥』
数学の石田先生は、‥教えるのが多分下手。
作るテストも難しいので例年赤点者が後を経たない。
『こんな問題も解けないのか?』が石田先生の口癖だ。性格悪い教師。
『あの、だからこの式をここに代入する理由が分かりません‥』
『いやだからそれはここで証明できるんだ』
『???』
『はぁ‥だから』
『石田先生。』
後ろから石田先生に声をかけてきたのは、スラッと伸びた近い背丈。低いけど、通る声。サラサラのストレートヘアに眼鏡をかけている。色白の肌に切れ長の目。真緒の好きな人。
平井将生。ヒラマサだ。
同じ教室で自主的に勉強してたヒラマサが声をかけてきたらしい。石田先生に。
『お、どうした.平井。』
『なんか、大変そうなので俺でよければ手伝いましょうか?』
『いいのか?助かるよ。』
『はい。んじゃ、あいつらもう手に負えないのであっち見てあげてほしいです。』
ヒラマサが指差す方向には、泡を吹いて白目をむいている柳田雄大とその他諸々がいた。
『この人は、僕が教えますよ。』
『助かるよ、こっちはまだ話のわかる人間だから大丈夫だと思う。んじゃよろしくたのむよ。』
『え、先生!ちょっと!』
『んじゃ、佑々木はこっちの平井先生に教えてもらいな!平井先生は数学の神様だから大丈夫だぞー俺が保証する!』
『えー!ちょっと!』
『またあとで見にくるからそのプリントそれまでに終わらせておけよ〜』
石田先生は、そのまま手をひらひらさせながら、柳田たちの方へ向かって行った。
私、この人とまともに話したことないんですけど‥。
『せっかく、教えてもらってたのにすみません。雄大たちが先生呼んできてって泡吹いちゃって‥』
『‥え、あっいや‥』
『俺でよければ教えます。どこですか?』
『えっと‥んじゃ、ここ。』
『ここは‥』
‥10分後。
『解けた』
『うん。あともいけるんじゃない?』
『はい!いけます!』
ヒラマサ先生は教えるのがめちゃくちゃ上手だった。
ヒラマサは、私がプリントを解いている前の席で自分の参考書を解いていた。
分厚い数学の参考書を解いていた。
やはり頭がいいのかとても教えるのが上手だった。
正直石田先生よりずっと上手だった。
そして、思ったより怖い感じも愛想悪い感じもしなかった。キリッとした顔つきで変に中に笑わないから少し怖い印象があったが、声かけや目つきは良く見えると優しい印象だ。モテるのも分かる気がする。
さて、数学のプリントは10枚終われば、補修は終わりだ。私は30分ほどで終わってしまった。
せっかくだし、参考書でちょっと勉強して帰ろうかな。
その後も、面倒見がいいヒラマサは他の卓を回りながらみんなに数学を教えていた。
ヒラマサの他にも学年でも優秀な生徒が何人か一緒になって勉強を教えていた。
石田先生はめちゃくちゃ喜んでいた。
良い人なんだな。勉強ができるだけの愛想が悪いイメージだったけど、優しくて周りからも慕われているのが見て分かった。
特に男子生徒からの熱い視線が止まらなかった。普段から勉強を教えているらしく、その恩恵で生きてる人間が何人かいるみたいだった。
真緒の人を見る目は悪くなかったらしい。
『佑々木さん。』
『あ、はい』
『もう終わったの?』
『おかげさまで!』
『飲み込み早かったもんね。てか、なんで赤点なんて取ってんの?』
『えっ』
『これだけできるなら赤点回避もできただろうに、よほど勉強してなかったんだね。』
『なっ!』
『図星?』
『‥教えてくれる人がいなかったから、仕方ないでしょ。分かんないとこがあっても1人で悶々してたら日が暮れて終わっちゃうの。』
『なんだよそれ。塾とか行かないの?』
『うちはお金がないので‥』
うちは弟が2人いる母子家庭だ。経済的に余裕はない。
けど、わがままを聞いてもらい家の近くにあったこの私立の進学校に行かせてもらった。
その代わり、大学は国立大学以外は行かせられないと言われた。私もそのつもりだったから問題はない。
しかし、バイトしながら勉強は頑張っているもののの身の丈に合わない進学校に無理くり合格したせいか、底辺を彷徨っている。
‥なんて恥ずかしくて言えない。
『ふーん、んじゃまた分かんないとこあれば、limeしてよ。良かったら教えるよ。』
『えっ』
『先生に聞くのが一番良いかもしれないけど、ここだけの話。石田先生は教えるのが下手くそだからな。』
『え、え、』
『あ、ごめん。嫌だった?』
『‥嫌じゃないです。本当にいいの?』
『うん。これ結構色んな人にしてんだよね。人に勉強教えるの嫌いじゃないし、自分の勉強の合間に返信するからすぐには返せないけど、その日のうちには返すよ。』
『えええ‥あ、ありがとう。lime教えるね!』
『うん』
ヒラマサとlimeで連絡先を交換をしてしまった。
補足:limeとは、この世界で若者が使用してるSNS。
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その日の夜。
真緒から電話が来た。
『今日の補習組の勉強会、ヒラマサもいたんでしょ?良いな〜!』
『みんなに勉強教えて回ってたよ。』
『えええ羨ましい!私も行けばよかった!』
『真緒、数学の成績悪くないでしょ』
『そうだけどさ、モチベ上がんないよ〜。花もヒラマサに教えてもらったんでしょ?』
『‥あ、まあね。教えるのすごく上手だね。あの人。』
『いいなー!でしょでしょ?先生より上手だって有名なんだよー!』
『へー‥確かに。石田先生より上手だったかも?』
『石田先生下手くそだもんねー』
『まあ、それはそうだけどね‥実は、ヒラマサとlime交換したんだ。勉強いつでも分からないところあったら言ってねって』
『ええー!!!!羨ましすぎる!!』
『なんかでもみんなに連絡先交換してたよ、他にも色々な子に勉強教えたりしてるみたい。』
『知ってる知ってる!らしいよね!!』
『勉強できるのに面倒見も良いなんて、真緒の好きになる人だからどんな人かと心配してたけど良い人そうで安心したよ。』
『でしょー?てか、誰目線なのよ!』
『ふふ、ごめんごめん。』
『ていうかさ!ねえ今度ヒラマサと勉強とかする時、私も誘ってね!勉強会とかしよ!』
『それは私も考えてたんだ!まだそこまで仲良くなったわけじゃないし、今すぐには難しいけど、なんとか真緒とヒラマサを繋げてみせるよ!』
『頼りにしてるねー!』
『うん!まかせて!』
ヒラマサと真緒を仲良くさせてあげたい。
あわよくば、付き合ってくれたりしたら嬉しいな。
真緒が幸せそうなら私も嬉しい!




