久しぶりのヒラマサ
お風呂から上がって、自販機でコーヒー牛乳を買った。やっぱりお風呂上がりはこれだよね。
旅館の貸し出し用の浴衣を着ている。
女子は三色の中から好きな色が選べた。
なので、水色にしてみた。
和紗と千佳と綾羽は、お土産コーナーで色々みているようだ。私も3人のところへ向かおう。
すると‥後ろから声をかけられた。
『佑々木。』
『え』
自販機の前で声をかけてきたのは、ヒラマサだ。
『な、何』
『ちょっと話があるんだけど』
『え‥え、今じゃなきゃダメ?』
『今言わないと、忘れるかも』
『わ、忘れるようなことは忘れてもいいことなんじゃない?大事なことは忘れないでしょう』
『それもそうか‥けど、一応確認おきたいから』
『‥な』
遠くから背中に千佳達の視線が刺さる。
絶対笑ってる‥!!
ヒラマサと2人で旅館の広間から少し離れた中庭に出た。気まず、こんなとこ人に見られたらそれこそ終わりだ。もうダメだ。
『‥あのさ、佑々木っていじめられてんの?』
『へ』
『いや、さっき風呂から出てきた2組の女子達が佑々木が女子複数人から一方的にいじめられてるのを見たとか、ここ最近友達がいなくて1人で飯食ってるとか言ってたから。』
『はっ‥失礼な!ご飯くらい一緒に食べる友達はもういるもんね!』
『そうなの?』
ヒラマサの顔は愛の告白をしそうな甘い表情ではなくいつも通り死んだ魚の目をしていた。
その姿を見て少し安心した。
『んじゃ、さっき風呂場で女子4人にいじめられてたのは本当なのか?泣いてたって聞いたけど。』
『‥いじめとかじゃないよ。すこし揉めてるだけの話し合いです!泣いてません!ちょっと感情的になってしまっただけで‥』
『ふーん』
『な、何』
『別に、最近避けられてる気がしたから。俺が何か悪いことしたかなって思ってただけ。それに最近、赤石と一緒にいるところも見ないし、そんでもって赤石から嫌がらせ受けてるとか話も聞いたから俺が原因かなって。』
『え、自覚あるの?』
『やっぱり俺なの?』
ヒラマサは、ため息をつきながらベンチに座り込んだ。
『赤石って一時期、付き纏い行為がひどくてかなりきつめに注意したんだよね。迷惑だって。』
『ええ‥それっていつの話?』
『割と最近かな、2週間前ぐらい』
『‥』
なるほど、それが真緒達の怒りにさらに油を注ぐ結果になったのか‥。
『俺、悪い?』
『いや‥』
ヒラマサの言ってることは正論だ。
好きでもない女性から付き纏い行為をされることは迷惑行為以外の何者でもない。
実際私が受けてきた好きでもない人たちからの好意も、気持ちのいいものではなかった。
ただそれが真緒達の行動をエスカレートさせているのは事実だろう。
『‥ヒラマサは、悪くないよ。悪いのは私。』
『そう。』
『うん。いつもこうなんだよね。良かれと思ってやったことが裏目に出てトラブルになること多くてさ、トラブルメーカーって小さい時から呼ばれてるし‥』
『確かに、佑々木って結構バカだもんな』
『‥もういい』
『けど、最近はそこまでバカじゃない気がする』
『そ、そう?そうでしょ!最近は数学テストの点数も80点以上を維持してるの!』
『誰のおかげかな?』
『うっ‥それはもう、ヒラマサ様の‥』
『んじゃそのお礼に俺にもコーヒー牛乳くれ』
『なっ!さっき自販機にいる時に言ってよ!今から買いに行くのちょっと距離あるし!』
『確かに。んじゃ、それでいいよ。』
『え?』
私の片手に持っている開封前のコーヒー牛乳を指差した。
『こ、これは私のよ。』
『えー』
ヒラマサは手招きして、ベンチに座り、ベンチの横をトントンと2回ほど叩いた。
『まあまあ、佑々木さんよ。ここに座りたまえ』
『え、何怖い‥』
ヒラマサに言われるがまま、隣に座る。
『コーヒー牛乳』
『どれだけ欲しいのよ。もうぬるくなってるし美味しくないよ?』
『俺は冷えたものを飲むとお腹壊すからぬるいのがちょうどいいんだよ。佑々木はキンキンに冷えたのが好きなんだろ?また買えばいいじゃん。』
『うーん、確かに‥んじゃ、いつも勉強教えてくれてありがとうございます。』
頭を下げながら両手でヒラマサにコーヒー牛乳を渡す。
『分かればよろしい。』
ニヤリとイタズラに笑うヒラマサを至近距離で見ると不覚にもドキッとしてしまった。
『これで俺のことを一方的に無視してたのはなかったことにしてやろう。』
『うっ‥気にしてらっしゃったんですね』
『突然友達に無視されて気にしないやつとかいんの?』
『それは確かに‥友達‥‥友達ッ!?』
『何?』
『私たち、友達!?』
『違うの?』
‥友達、友達‥。
『いえ!友達です!とても友達です!無視して、本当にすみませんでした!これからもよろしくお願いします!』
『‥おう』
友達が少ない私に良い感じの友達ができた。
とても嬉しい!!!
ヒラマサは、私の友達なんだ!堂々としても良い!
友達に死ぬほど飢えていた私にとって、ヒラマサのそのセリフは何よりも救いだった。
私、真緒と和紗と千佳と綾羽以外にも友達いたんだー!!




