修学旅行1日目『夜』
宴会会場でグループごとの夕ご飯が終わり、部屋に戻ってきた。
『ねえねえ、みんな。お風呂の時間さ、先に行った第一陣が出てくる頃だし、そろぼち風呂行こうー!』
『あ、うん!行く行く!』
お風呂の準備をして、急いでみんなの後に着いていく。
千佳と仲良くなって、最近1人で過ごすことが多かった私を修学旅行で同じ班に入れてくれた。千佳と仲良しの和紗と綾羽もさっぱりしていて優しくていい子達だ。
帰宅部の私は、運動部に所属している子たちとあまり話す機会がなかったが、千佳と仲良くなれてよかった。
3人はいつも仲良くしていたが、修学旅行の班は4人1組と決まっていた。
1人だった私はどこのグループに入れられるのだろうかとドキドキしていたが、千佳が誘ってくれて嬉しかった。
みんなでお風呂へ向かっていると、お風呂から上がった2組の人たちが広間でくつろいでいたり、売店でお土産を選んだりしていた。
すると、パッと目に入ったのは、ベンチに座ってスマホを触っていたヒラマサだった。
浴衣着てる。
元々華奢で大人びたスタイルをしていたので、艶っぽい浴衣がよく似合っている。
ヒラマサもこっちを見て目が合った。
なので急いですぐに目を逸らした。
ここで仲良く話してるところを見られると、後々面倒なことになりそうだ‥。
ヒラマサとは気まずくなりそうだが、仕方ない。
もう今更な気もするけど‥。
ヒラマサの方から視線をずらしてスタスタと黙って女風呂の脱衣所に入っていった。
『ねえ、佑々木さん』
脱衣所で待ち構えていたのは、真緒とここ最近一緒に過ごしていた亜美率いる女子5人だった。
真緒もその子たちの後ろからそっと私のことを見ていた。
『なんですか』
『なんですかって何のことかわかってるんじゃないの?』
『真緒がヒラマサのこと好きなの知っててヒラマサに近づいて頻回に連絡してるって聞いたわよ』
『何とも思わない訳?真緒と友達だったんでしょ!』
『真緒が可哀想とか思わなかったの?』
『真緒がどんな気持ちだったと思ってるの?まずは謝りなさいよ!』
案の定。言ってることはだいたい想定内だった。
『2人でカフェにいたのは、たまたまバイト先にお客さんとしてヒラマサがいて、たまたま店長がぎっくり腰で倒れちゃって、その時にヒラマサが助けてくれたから店長の奥さんがお礼にお金を渡してくれて2人でお昼ご飯食べてきてと言われたからよ。
約束して行ってたとかそんなんじゃない‥。
limeしてるのは、本当だけど、勉強教えてもらってるだけで別にそれ以上変な会話はしてないし、もう2ヶ月以上連絡もとってないよ。
真緒とは友達だと思ってるし、ヒラマサの好きなものとか情報収集できて、そこから2人を繋げられたらって思ってたんだよ‥』
精一杯反撃するが、自分で言ってて情けなくて悲しくなってきた。どんどん声が小さくなっていく。
正直もう泣きそうだ。何度も経験するこの感覚。私は何度学べば学習するのだろうか、自分で自分の頭の悪さにため息が出る。
『なにそれ』
『たまたまたまたまって、そんな都合よく色々なことが重なるわけないじゃん』
『いい子ぶってるだけでしょ』
『てか、それも嘘でしょ』
『嘘じゃない!』
『んじゃ、何で、ヒラマサと真緒を誘って勉強会とは開いてあげないわけ?普通そうするよね?』
『なのに自分は真緒との予定断ってヒラマサと二人でカフェでデートしてたんでしょ!』
『あれは、勉強会することもヒラマサに提案したよ!けど、ヒラマサが大人数で勉強しても結局勉強にならないから嫌だって言ってたから‥これからどうやって。真緒とくっつけようか考えてたとこだったんだよ。』
脱衣所に静寂が広がる。
『まあまあ、もうこの辺でいいんじゃない?花も悪気があった訳じゃないって分かったでしょ?真緒ちゃん』
千佳が駆け寄ってきて、仲裁に入ってきた。
千佳は一言も言葉を発することなく俯いている真緒をチラッと見た。それが気まずかったのか、真緒は亜美たちの裾を引っ張ってさっさと退散していった。
最後まで真緒と目が合うことは一切なかった。
ずっと友達だったのにな。
寂しい気持ちになったけれど、もう仕方ない。
自分の経験則上こうなったらもう前と同じ友達関係には戻れないだろう。
お風呂に入ると、千佳や和紗、綾羽が近づいてきた。
『いやー大変ね』
『女あるあるだねぇ〜』
どことなく3人ともニヤニヤしているような気がした。
『ちょっと面白がってるでしょ?私、困ってるんだけど』
『してないしてない』
『困ってるんだろうなって分かってるよ』
『ねえ、でもさ、ほんとにヒラマサとは何にもないの?』
綾羽が私の耳元でこそっと聞いてきた。
『何もないよ。勉強教えてもらってるだけ。』
『でもさ、さっきお風呂向かってる時ヒラマサがじーと花のこと見てたよ。』
『‥ゴホッゴホッ!!』
『あやしぃー』
『違うって、その、最近真緒のことで気まずいからヒラマサと距離取ってるの。だから、何怒ってんだろーって思ってんじゃないのかな。』
『えー!ヒラマサ可哀想』
『仕方ないでしょ‥』
お姉さんポジの和佐がやってきてスッと私の横にひっついてきた。
『でもさ、‥正直今更なんじゃないの?』
『うっ‥』
『今、ヒラマサと変に親密になるのも火に油だけどさ、真緒ちゃんもヒラマサもどっちも失うことになるのは違くない?ヒラマサも大事な友達でしょ?ヒラマサや柳田たちと花火大会行ってたんでしょ?せっかく仲良くなったのに勿体なくない?』
『確かに‥』
『そうだよ、今更距離取っても仕方ないって。
あんな怒ってんだよーもう何しようが燃える一方だよ。』
『火力強め』
『恋する女ほど怖いものはない』
綾羽と千佳が笑いながら話している。
和佐はもう一度花の目を見ながら静かに言ってきた。
『ヒラマサに謝ってきたら?
一方的に無視されるヒラマサが可哀想だよ。』
『ヒラマサ、友達少なそうだしね』
『それは言えてる』
千佳と綾羽も続いて言う。
『分かった‥修学旅行終わったら謝る。』
『お、偉い偉い!』
『偉い偉い〜』
3人が私の頭をぐしゃぐしゃ撫でてくる。
せっかく綺麗にまとめられたのに‥もう。
けど、この3人が一緒にいてくれてよかった。
正直この3人がいなければ修学旅行来なかったかもしれない。




