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夏期講習と新学期

既読がつかない‥。


あれから真緒に何度か連絡をしているが、全く既読がつかない。絶対無視されてる。


明日、夏期講習だし、その時に話しかけてみよう。


しかし‥。


あからさまに避けられている。

教室に入った瞬間わかった。

真緒は亜美たちと同じグループに入っており、楽しそうに談笑していた。

私の方をチラッとみてそのまま知らんぷりした。

亜美たちは、元々真緒と仲良しだった少し派手めなグループ。

私があまり得意とする分野の人間じゃない。


真緒は明るくてお洒落で美人なので、亜美たちのグループにいても華になる。


元々、亜美は真緒のことが好きでいつも声をかけてきていた。

私のことはあまり好きじゃないようでいつもツンとした態度しかとられない。

お気に入りの可愛い女の子と自分より仲良くしてる私が気に入らなかったのだろう。

そして、今の亜美の表情は勝ち誇った顔をしており、明らかに私のことを鼻で笑っている。


思い出される。中学生の時の記憶。


下駄箱に入れられた大量の泥と砂と石。


体育の授業から帰ってきたら制服が埃まみれになっている。


お弁当はもちろん1人で食べていた。


教室の色々なところからクスクスと笑う陰湿な笑い声。

すれ違いざまに低い小声で囁かれる悪口。


『ブス』『チビ』『ぶりっ子』『キモい』『◯ね』

『学校くんな』『菌がうつる』『ウザイ』


何をしたわけでもない。

きっかけはささいなことだった。

クラスのリーダー格の女の子が好きだった男の子に告白された。

その次の日から壮絶ないじめが始まった。

卒業するまで続いたいじめ。


この学校にいる誰も行けない進学校へ行こう。

ここにいる人たちが誰もいない。

私のことを知ることを誰もいない。

静かな場所へ。

平和なところへ。

ここにいる奴らより努力して、努力して、学力の高い学校へ行ってやる。

こんなやつに負けない。


親にいじめられてることを言えずに、毎日黙って学校に通い続けた。

学校に行くのが嫌で、毎朝通学通路にある排水溝に嘔吐しながら登校した。

負けん気だけで生きてきた。

何か言い返す勇気もない、やり返す行動力もない。

ただひたすら耐えて耐えて、いじめられる度に大きくなっていく憎しみや怒りを勉強への動力に変えて、ひたすら努力してきた。


その結果、全国屈指の進学校に入学できた。


今更何になる。無視されるぐらい。

平気だ。

今までずっとひとりぼっちだった。

またひとりになったりだけ。

気にすることじゃない‥。


けど、やっと手に入れた。友達。

友達の隣は自分が想像するよりずっとずっと、居心地が良かった。

真緒がいなくなったことが何より悲しかった。

怒りや憎しみよりも、悲しみや後悔や自分の今までの行いを振り返って何がダメだったのかを考えて、自己嫌悪になる。

消えていなくなりたい。ぼっちじゃん‥。


けど、塾に行ってない私は学校の夏期講習を受けることでしか模試の対策の術はない。


気持ちを切り替えよう。勉強!勉強!

午前中だけだし!すぐ帰るし!


来る日も来る日も同じような日が続いた。

こんなにも学校に居心地の悪さを感じたのはいつぶりだろうか‥。中学校の時以来の疎外感だ。


夏期講習は無事終わった。


『辛かった‥もういいや‥けど、夏休み明けの授業が嫌すぎて吐きそう‥。』


学校なんて始まらなければいいのに。そんなことを考えていると学校というのはすぐにでも始まるものだ。


2学期。登校日。


私はしっかりぼっちになった。


亜美たちと仲良しのグループの女子は陰でコソコソ私の悪口を言っている。

チラッと聞こえてきたのは、裏切り者、友達を裏切る最低な人間、性格悪いなどの言葉だった。


花は、とてもつもない負けず嫌いで、下手なところで謎の根性や意地っ張りなとこはあるが、極度の豆腐メンタルだった。


‥ううぅ‥もうすでに帰りたい。

お弁当も1人で食べる羽目になるんだろうな‥

とほほ‥。


『ちょっと、佑々木さん』


亜美を含む仲良しグループの3人組が声をかけてきた。3人とも腕を組んで眉間に皺を寄せている。

まるで虫でも見るような目をしている。

一軍女子は派手だしノリも合わないから苦手だ。

嫌な視線だ、帰りたい。

けど、ここで逃げたら負けだよね‥。


『‥はい。何ですか?』

『なんでこんなことになってるか分かってる?』

『‥何ででしょうか』

『本当にわかってないの?』

『‥真緒と何も話せてないので』

『その前にまずは謝罪でしょ!?』

『そうよ!真緒に謝りなさいよ!』

『そんなこと言っても、何について謝れば良いの?』


シーン‥。

教室が一気に静かになる。

男子はその様子を見ながら女子怖〜という顔をしている。


『ありえない』

『本当に分かってないんだよ』

『まじで無理だわ』


女子たちが私に軽蔑の視線を送る。


『はいはーい。そこまでね!』


私と女子3人の間に入ってきたのは、陸上部の千佳だった。


『当事者同士で話し合うべきなんじゃない?部外者のあんた達が花に何言っても無駄でしょ』

『あんたに関係ないでしょ!』

『そうよ、私は真緒の友達なの!』


亜美を筆頭とする女子3人組はものすごい剣幕で千佳にも食ってかかってきた。


『友達なら何にでも首突っ込んで良いわけ?』

『‥っ!』

『大事なことなら真緒と花の二人で話せば良いじゃん。あんた達が首突っ込む理由ないでしょ。ほらもう早く向こう行きなよ。教室で変な揉め事されるとこっちも空気悪いんだけど!』

『なにそれ感じ悪』

『良い子ぶってるじゃん』

『何でも良いから、ここでの話はおしまい!』


千佳は大きく手を叩いて、その場を集結させた。


『そうだそうだー!』

『ここで女子バトルなんてやめてくれー』

『教室の空気悪いよー』


男子達が変なヤジを飛ばし始めた。

そのせいか、3人はバツが悪くなったのかそのまま教室から出て行った。


『千佳、ありがとう』

『別に良いよ。それよりも、花。一緒にお昼ご飯食べない?綾羽と和紗も良いよーって言ってたし、一緒に中庭行こう。』

『え?ありがとう!』

『うん!ほらほら、元気出してー!いくよー!』


千佳に連れられるがまま中庭へ走って行った。


そこには、バレー部の綾羽と陸上部の和紗がいた。千佳とはよく話すが、この二人とはあまり話したことがない。


『お!千佳ちゃん花ちゃんこっちだよー!』

『抜け出せたんだ。』


ショートヘアで人懐っこい性格。ぴょんぴょこ飛び跳ねてるのが綾羽。

長いロングヘアーで長身でスタイルが良いクール系美人が、和紗だ。確か種目はハードル。


『ごめんね、3人ともありがとう。』

『いいえー!それにしても花ちゃん二学期から波瀾万丈だね!』

『あはは‥』

『夏期講習らへんからなんか空気悪いなーって思ってたけど、二学期に入ってからがっつり出てきた感じするね。』

『そうなんだよね‥』

『まあ、大丈夫よ!うちらは、花の味方さ!』

『ありがとう千佳ちゃん。』


『にしても、どうしたの?真緒ちゃんなんて花ちゃん大好きだったのに』

『何かあったの?喧嘩?』

『喧嘩にしては大々的すぎるでしょ』

『どうだろ‥夏休みからなんか様子がおかしくて、limeしてるんだけど既読もつかないの。心当たりはあるっちゃあるけど‥。』

『えー』

『恋愛関係のもつれ!三角関係だ!』

『てか、私が思うに亜美が変なこと吹き込んでるんじゃないの?元々亜美は自分のグループに真緒のこと入れたがってたじゃん』

『あーありえる!亜美ちゃん気強いもんね!』

『独占欲も強いって聞くし』

『あー‥亜美からは嫌われてるのかなってずっと感じてたから不思議じゃないかも』

『なるほどねー』

『ほとぼり冷めるまでほっておくしかないね』

『真緒と直接話す機会がなさそうなのが辛いね。』

『この前も亜美と真緒が腕組んで歩いてるところ見たよ。亜美が幸せそうな顔してたわ。』

『どんなやつだよ』

『うーん‥もういいよ。3人ともありがとう。しばらくこうやってたまにでいいから一緒にご飯食べてくれると嬉しいな‥。』

『‥何言ってんの?これから毎日食べれば良いじゃん』

『そうだよ!気にすんなって!』

『私たちも花が悪い人じゃないって分かってるから誘ったんだよ。気にしないで。』

『ありがとう‥』

『ちょっと泣いてるじゃん!』

『泣かないでー』


安心したのか涙が溢れてきた。

これからもう学校に行けないかもしれない。

そんなことも頭をよぎった。

この三人が声をかけてくれてよかった。

私の居場所はもうないのかと思った。怖かった。


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