第二十八話 墓地の決戦
「さてと、」
「兵士が来る前に罠を完成させなければいけませんね。」
墓地に身を潜めているデニスは、
配下に罠の準備を進めさせていた。
「まあ、聖女は捕らえたことですし、」
「兵士がここまで来るのには3日はかかるでしょう。」
彼は完全に油断していた。
まさか、追手がすぐに来るとは思っていなかった。
それが大きな間違いをもたらすこととなった。
「ッ!」
空から突如として光線のようなものが飛来し、
彼の肩を貫いた。
「ぐっ……」
「なんですか?」
ズドォォォン――
彼が周囲を見回すやいなや、
轟音とともに土煙が舞い上がった。
「さあ、到着しましたわ!」
煙が晴れるとともに、
ナスターシャが現れた。
その後ろには……
「でたらめな身体能力ですね。」
「ナスターシャ。」
アナスタシアがいた。
「なぜですか?」
目を丸くしたデニスは問うた。
「神託を使える聖女は捕らえたというのに、」
「なぜここが?」
「簡単な話ですわ。」
ナスターシャが答えた。
「あなたが誘拐したのは聖女ではなく、」
「その妹だったのですわ。」
デニスは呆然とし始めた。
「え?」
「妹?本人ではなくて?」
「ええ。」
短い返答であった。
「……」
しばらく口が動かない。
「……待ってください、」
「まだ準備も終わっていないことですし、」
「本日はお帰りいただくということでなんとか。」
その手はごまをする動きをしていた。
「いい天気ですし、日光浴とか……」
「ね?」
その姿は強いものにへつらう腰巾着そのものであった。
「ふ、ふふ。」
アナスタシアの口から笑いが漏れる。
「うふふ、アッハッハ!」
心の底からおかしそうな笑いであった。
「……ダメです。」
しきりに笑った後、
提案は冷酷に切り捨てられた。
「で、ですよね。」
あきらめたような言葉であった。
「できれば穏便にお引き取り願いたかったのですが……」
「仕方がありません。」
ゆっくりと構えた。
彼の肉体から渦のようなオーラが放たれ始める。
「セカンドプランに従い。」
「力尽くで倒させていただくとしましょう。」
その肩の傷が液体のように埋まっていく。
「それはこっちの台詞ですわ。」
「私もずいぶんと舐められたものですね。」
対する2人も臨戦態勢に入っていた。
「どうやらあなた方は魔物化したルイを倒したようですが……」
デニスは肩をすくめた。
「我々四天王はあんな雑魚とは格が違います。」
「見せてあげましょう、四天王の実力を。」
眼鏡をクイッと上げたその瞬間、
彼の体からムチのような流水が放たれた。
(後ろは岩、下がるのは良くないですわ。)
「避けて!」
「は、はい……!」
ナスターシャはアナスタシアの手を引き横へ飛び退いた。
「避けられましたか……」
外れた流水はそのまま進み、
ドガァァァン――
「マズいですわね……」
後ろの岩を粉々に砕いた。
「怖気づいたようですね。」
「降参するなら今ですよ。」
デニスは髪を掻き上げた。
「それとも、首でもはねられるのがお望みですか?」
「……」
ナスターシャとアナスタシアは互いの顔を見合わせた。
ニコリと微笑み合う。
「ええ、望んでいるわ。」
ナスターシャは不敵に笑った。
「あなたの首をはねて、」
「妹を助けることを!」
2人の息はここに来て完全に一致していた。
「なるほど、」
「まだ、あきらめる気はないと……」
「では、」
砕けた岩から流水が集まり始める。
それは刃を形成し、ナスターシャへと襲いかかった。
「これならどうですかね?」
「ナスターシャ、危ない!」
アナスタシアはそれに気づき、
ナスターシャの手を引こうとした。
しかし、
「残念ながら間に合わなかったようですね。」
ぐらりとナスターシャの体が崩れ
その首が地面へと落ちた。
「ッ!!」
その光景にアナスタシアは声を出せなかった。
「あなたに問います。」
「あきらめてお引き取りください。」
「このようにはなりたくないでしょう?」
勝利を確信したようにデニスは言った。
「わ、私は……」
アナスタシアはキッとデニスを睨んだ。
「妹を助けるまであきらめません!」
言い放った瞬間、
アナスタシアの首も地面へと落ちた。
「啖呵なんて切らずにおとなしく逃げていれば良かったというのに……」
「とはいえ、これで邪魔者は片付きました。」
眼鏡をクイッと上げ、
立ち去ろうとした。
しかし、
「グハッ!」
突如としてデニスの体が吹き飛んだ。
「な、何事ですか!」
慌てて立ち上がると、
目を疑う光景がそこにはあった。
「さて、第2ラウンドですわ!」
確かに首を切り落としたはずのナスターシャがそこに立っていた。
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