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第二十七話 奪還作戦

「さて、ブレーセン王国に告げます。」


デニスはゆっくりと口を開いた。


「聖女を返してほしければ、」


「わたくしの居場所を探しなさい。」


ニヤリと口元を歪めた。


「まあ、罠が怖くなければですけどね。」


そこから漂うのは自らの策に対する絶対的な自信。


挑発するような言葉と共に彼は姿を消した。


「ああ、」


アナスタシアはその場に崩れ落ちてしまった。


「アリサ……アリサ……」


妹の名前を連呼し、


先ほどまでの不敵さはどこへやら。


「せ、聖女様!」


近くにいた神官が慌てて駆け寄る。


「お気を確かに。」


「中止して……」


アナスタシアの体は震えていた。


「ナスターシャの連行は中止して、」


「アリサの捜索を行いなさい!」


その声には怒りが滲んでいた。


「は、し、しかし。」


神官は渋る。


「あなたは家族が誘拐されたのにメンツを優先するのですか?」


圧を感じる言葉であった。


「わ、わかりました。」


「お前たち!」


「ナスターシャの連行は中止だ!」


迅速に指示が出された。


「承知しました。」


ナスターシャを連行していた神官はナスターシャを離した。


「私は神に聞き、大まかな位置を探ります。」


「あなたたちはそれに従って探しなさい。」


「承知いたしました。」


アナスタシアは目を閉じ、


意識を集中させているように見えた。


(大変なことになりましたわ。)


一方のナスターシャは少々置き去りになっていた。





「神託が降りました。」


数分が経過した後、


アナスタシアは目を開いた。


「ここから南の山岳地帯、」


「その墓地の付近に彼は潜伏しています。」


彼女自身は落ち着きを取り戻しているように見えた。


「なるほど、では早速そこへ。」


「しばしお待ちを、準備いたします。」


神官たちは大慌てで遠征の準備を開始していた。


対するナスターシャは考えていた。


(アナスタシアと友だちになる。)


(この目的を果たすためなら今しかありませんわ!)


逡巡の末、


ナスターシャは駆け寄った。


「話は聞かせてもらいましたわ。」


「アナスタシア。」


そして、肩を叩いた。


「おや、」


「これはこれはナスターシャ、」


「まだここにいたんですか?」


すでに興味のなさそうな表情であった。


「見ての通り、忙しいのですが……」


「何か用事でしょうか?」


どっか行け、という心の中が見え透いていた。


「いいえ、そうではなくて。」


ナスターシャは首を振った。


「……」


「私もアリサの救出に参加させてくださらない?」


「はあ?」


意味がわからない、


そう言いたげな聞き返し。


「私はアリサを友だちだと思っていましたわ。」


「友だちが連れ去られたのに無視なんてできませんわ!」


(さあ、アナスタシア、どう出て来ますの?)


「……」


アナスタシアは数秒ほど黙っていた。


「あなた……」


「何か企んでいませんよね?」


疑惑の目であった。


「いいえ、」


「神に誓ってやましいことなんてありませんわ。」


(本当はあなたと友だちになることを目論んでますけど。)


異様なほどに澄んだ声であった。


「どうやら、」


「本当らしいですね。」


「しばらくよろしくお願いします、ナスターシャ。」


渋々といった様子の承諾であった。


「ええ、」


「こちらこそ、アナスタシア。」


ここに、聖女と悪役令嬢による奇妙な同盟が成立したのであった。

ここまで読んでいただきありがとうございました。



次回の投稿に関してですが、

数日ほど忙しくなるので、明日明後日の投稿はお休みさせていただきます。


読者のみなさんは9月12日の投稿をお楽しみに。

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