第十八話 決着
「う、うひひひひ。」
「やっぱり運命は僕に味方したんだ。」
少女たちを目にした、
ルイの表情は一気に明るくなった。
「みんな、僕を助けに来てくれたんだね。」
「流石は僕のヒロインたちだ!」
この期に及んでおめでたい頭である。
少女たちは眉をひそめる。
「ついこの前まで、」
「あたしたちはあんたの好きを本気にしてた。」
「今考えればバカなことをしてしまったわ!」
ルイは信じられないものを見る目をしていた。
「な、何を言って……」
「君たちは僕のサブヒロインだろう?」
「なら僕にそんなことを言うなよ!」
少女の口から「はあ」と呆れたようなため息が漏れた。
「あんたの味方はここにはいない!」
パン!――
痛々しい音と共に、ルイの頬が腫れ上がった。
「いるのは、」
「あんたを恨んでいる人間だけよ!」
次の瞬間、少女たちが一斉に襲いかかった。
ドガッ――
ドゴッ――
「うげえええええええええ!」
痛ましい音、
そこに断末魔も重なる。
「このっ!虫嫌いな私に虫の彫刻なんてよくも!」
「何回も言ったよね?浮気しないでって!」
「あなたの妄想癖にはもう愛想が尽きたのよ!」
そして覆いかぶさる、
怨嗟の怒声。
「そうとう恨みを買っていたのね。」
ナスターシャは後方から腕を組み、
見守っていた。
「その一言ですませていい状況ですかね?」
ルドルフは「えぇ……?」とでも言いたげな表情であった。
――数十分後
「ふぅ~、スッキリしたわ。」
「ありがとう、ナスターシャさん。」
ニッコリと爽やかに微笑む顔の後ろには、
「う、うげへぇ……」
全身打撲傷だらけで気絶したルイがいた。
その体は鎖で巻かれ、身動きを取れなくなっていた。
「こちらこそ協力してもらえてよかったわ。」
ナスターシャも満面の笑みで応じた。
「あっ、そうだ。」
「この後みんなで一緒にお茶でもしない?」
少女がナスターシャに手招きする。
「いいですわね!」
ナスターシャは応じ、駆け寄った。
「お、お嬢様?ルイは放置でよろしいので?」
「ええ、問題ないわ、」
なんともどうでも良さそうな返事であった。
「この調子なら一日はここで伸びたままになるわ。」
「そ、そうですか。」
納得するしかなかった。
「さ、行きましょ、行きましょ。」
ナスターシャを加え50人となった少女たちは決闘場を去っていった。
気絶したルイを残して。
◇◇
――数時間後
ヴィルヘルム率いるルイ討伐隊は決闘場に到着していた。
「気を引き締めろ、」
「ルイは激しく抵抗するだろう。」
周囲を警戒するように見回しながら彼は言った。
「よし、突入せよ!」
その一言と共にヴィルヘルムを先頭に、
全員が決闘場へと突入した。
「なっ……」
「こ、これは……」
そして、全員が面食らった。
壁には所々、陥没とヒビができており、
地面には血が無数に付着していた。
極めつけには……
「あ、あれはルイ王子?」
鎖で拘束されたルイが気絶していた。
「……」
ヴィルヘルムは無言でルイへと近づいた。
「殿下、罠かもしれません、お気をつけて。」
「いや、罠ではなさそうだ。」
「なぜでしょう?」
アルブレヒトは問う。
「ルイは気付けないような罠を張れるほど賢くない。」
「新しい力を手に入れたとなれば、」
「真正面から私を殺しに来るだろう。」
論理などまるでないが、
的を射た考えではあった。
「それもそうですね。」
ヴィルヘルムは丁寧にルイの体に触れた。
「脈はある。」
「胸の上下を見るに呼吸もしている。」
「しかし、反応はない。」
何の感慨も感じられない声。
ヴィルヘルムは黙々とルイを観察する。
そして結論づける。
「気絶しているな。」
「今のうちにもっとキツく縛って牢に遅れ。」
短く指示を出す。
「はっ、承知しました。」
兵士たちが縄と鎖を持って、
静かに接近する。
そして、
手を縛り、
足を縛り、
完全に捕縛した。
「捕縛、完了しました。」
「このまま連れて行きます。」
兵士が2人がかりでルイの体を持ち上げ、
決闘場から運び出して行った。
「少々呆気なかったが……」
「今回の任務はこれで完了だ。」
「全員、解散せよ。」
こうして、ルイ討伐作戦は大した犠牲もなく終了した。
「しかし、どうしてルイは気絶していたんですかね?」
「さあな、私も細かいことはわからない。」
月の光が差す中、
ヴィルヘルムとアルブレヒトは数日ぶりに世間話をしていた。
「しかし……」
アルブレヒトには聞こえない声であった。
「やってくれたな……」
「ナスターシャ。」
確信のこもった小さな声が、
ヴィルヘルムの耳の中で反響していた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回で隣国の王子編最終回です。




