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第十三話 疑似共同戦線

「ナスターシャの執事がなぜここに!?」


ヴィルヘルムの目は見開かれていた。


「話せば長くなります。」


「なので手短に言えば……」


ルドルフは金槌に手を向けた。


すると、まるで磁石に引っ張られるように金槌は手に引き寄せられ、


ルドルフの手に収まった。


「我々の方にも魔物は現れたのです。」


ルドルフは語る。


ナスターシャを連れ去るべく現れた魔物。


しかし、ナスターシャはその頭蓋を片手で握って砕き言い放ったという。


「私は黒幕を探ります。あなたはヴィルヘルムを助けに行ってちょうだい。」


以上。


(ナスターシャ……相変わらず恐ろしいやつだ。)


ヴィルヘルムの鼓動がわずかに早まっていた。


「そしてお嬢様は私にこの金槌……聖槌を預けてくださいました。」


ルドルフは金槌を掲げた。


「待て!なんだその凄そうな武器は!?」


突然出てきた伝説のような名称の武器。


ヴィルヘルムの目はより大きく見開かれていた。


「これはお嬢様が戯(たわむ)れにお作りになられたものでございます。」


そして掲げられたことではっきりと見えたものがあった。


(ん?何だあれ?)


それは、金属の部分に掘られた。


(……)


ナスターシャとヴィルヘルムの相合傘であった。


しかも、全面がハートで飾り付けられていた。


ヴィルヘルムの思考が停止する。


「うわぁ……」


無意識のうちに嫌悪に満ちた声が漏れていた。


「わかります、実のところ私も使いたくありません。」


ルドルフの声には同情が宿っていた。


「しかし、お嬢様が使えと言うものですから。」


「お互い……苦労しますね……」


その目はどこか遠いところを見ていた。


(あの目、見覚えがある。)


(婚約していた時の鏡の中の私と同じだ。)


「……私もお前も大変だな。」


2人の間に奇妙な友情が芽生えた瞬間であった。


しかし、


ケタケタ――


「ッ!来るぞ、気をつけろ!」


魔物は待ってはくれない。


金槌の衝撃から体勢を立て直し再び斧を構えていた。


「奴の骨の強度は凄まじい!それをどうにかしなければ!」


「お任せください殿下。」


忠告するヴィルヘルムに対してルドルフは前に出た。


ケタケタケタ――


斧がルドルフに迫る。


「危ない!避けろ!」


大声で叫ぶ。


しかし、ルドルフは落ち着き払っていた。


そしてその目には強い決意の光。


「ラブリーラブラブ――」


(え?)


唐突にルドルフの口から出た、


呪文?と思われる言葉に場の気温が急に下がったように感じられた。


「ラブラブラーブ――」


ケタ?――


魔物も振りかぶったまま、


何こいつ?とでも言うかのように硬直していた。


「相合傘よ敵を打ち砕け――!」


言い終わるや否や相合傘とハートが強い光を放ち始める。


「……」


やがて光が収束し、


そこに現れたのは虹色に輝く巨大な金槌であった。


「これぞ聖槌が、真の力!」


「喰らえ!」


ルドルフが聖槌を振り下ろす。


すると巨大な金槌も連動するように魔物に襲いかかった。


ケッケタ?――


理解が追いついていない魔物にそれは直撃した。


ドゴォォォン――


けたたましい轟音とともに魔物は粉々に粉砕されていた。


「……」


あまりに不条理な光景にヴィルヘルムは無言になっていた。


「え?えええええええええ!」


無言の後には驚愕の声しか出すことができなかった。


「どうです?」


ルドルフの頬は赤く染まっていた。


「私がこれを使いたくないと言った理由がおわかりになりましたか?」


「……」


「ああ……」


「……心の底からわかった。」


かくして魔物は排除された。


しかし、ヴィルヘルムはしばらく動けなかったという。


◇◇


「すやすや……」


一方客室ではルイがこれで作戦は成功だと言わんばかりに眠っていた。


「うひひ……大丈夫だよ……」


「ナスターシャ……」


しかも気持ちの悪い寝言まで言っていた。


「ルイ様!大変です!」


護衛が大慌ててで駆け込む。


「すやすや……」


しかし、眠っているルイは起きない。


「刺客が全滅し、計画は失敗しました!」


「起きてください!」


「大ピンチですよ!今!」


ルイを何度も何度も揺する。


しかし、


「すよすよ……」


ルイは起きない。


「ちっ。」


護衛の口から舌打ちが漏れる。


「全く護衛は……いつも迷惑かけて……」


聞き捨てならない寝言が漏れる。


「迷惑かけてんのはてめぇだよ!」


「……」


「はっ、いかんいかん、つい本音が漏れてしまった。」


もはやルイは深く寝入っており、


何をしても起きそうになかった。


(全くこのいつも呑気なバカは!)


護衛は口でも内心でも悪態をつくことしかできなかった。


そして、デニスは水差しの中で……


(人選ミスだったかもしれませんね……)


(失敗したら魔王様に怒られる!)


人知れず、ルイを傀儡に選んだことを後悔していた。


しかし、その様子を一匹のコウモリが観察していた。


◇◇


(黒幕は間違いなくルイ王子で間違いありませんわ!)


一方のナスターシャは、


毒の店の前に残されていた足跡


コウモリを通して見た魔物の進路


そして、ヴィルヘルムと自分を狙った


以上の点から、一連の騒動の黒幕がルイであることを特定していた。


(さて、コウモリからの情報ではルイは明日朝までいるでしょうし、)


(制裁は明日にして今日は寝ることにしますわ。)


意外なことにナスターシャも明日、決着をつけることを選んでいた。


それは体力をしっかりと回復しておきたいという判断であった。


それが吉と出るか凶と出るかはわからない。


しかし、1つだけ確かなことがある。


「後悔させてやりますわ!」


「私の愛しい人を殺そうとしたことを!」


ナスターシャを怒らせたものはタ(・)ダ(・)で(・)は(・)す(・)ま(・)な(・)い(・)。(・)


かくして隣国の王子との決着は明日、朝に持ち越されることとなった。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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