009話 故に、ギャルである
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[条件達成:初試合で初得点を達成。『シュートレンジ強化』『ダブルタッチ』をLV1上昇]
[条件達成:状態"過集中・分析型"を初使用。スキル『分析』を入手]
[条件達成:初勝利を達成。1番低いパラメータを5上昇]
[神からの贈り物:EXスキル『果敢な挑戦者』が贈呈されました]
昼休みの時間、俺は試合後に見えたログを見てニヤニヤしていた。
ステータス画面もそうだが、近未来のホログラムみたいだと思いつつ、他の人には見えないらしいから堂々と見ていられる。
スキルレベルが上がるのはシンプルに嬉しい。
ゲームをプレイしていく中で、煮詰まっていくと1番他の選手と差別化を図れるのはスキルだからな。
パラメータはある程度決まった伸びしろがあるけど、スキルはほぼ無限大だ。
スキルの数だけ組み合わせがある。
その点でいくと、EXスキルはもっと嬉しい。
複数所持出来るという強みが早速活かされている。
しかも、『果敢な挑戦者』は、『始めの合図』という毎試合初得点するまでパラメータを僅かに伸ばすスキルの上位互換だった。
FW希望の俺にとって、これほどまでに相性の良いEXスキルがあるだろうか。
「春陽さん、食事中ににやけてどうしたんですか?」
「いや、さっきの試合が勝てたのが嬉しくてさ」
「分かる分かる。ウチが逆の立場だったら、絶対嬉しいもん」
「正直、私もゴールした瞬間すごく楽しかったです。春陽さんのアシストがなければ無理でしたけど」
「そんなことないよ。最後に決めたのは、杏なんだから。あそこで決めるのは結果メンタル強くないと」
「そうだよ、あーちゃん。褒められた時は、素直に受け取るのが鉄則だよ。じゃないと、たかりんみたいになっちゃうよ」
そうそう、負けず嫌いの赤髪ツインテールみたいに……、
「って、なんでナチュラルに食事に混ざってるの倉谷さん!」
コテコテすぎるノリツッコミをかます。
1周目の時点で本当は気付いていた。
だけど、杏が触れなかったから、これは俺がツッコむ流れなのかと思い、満を持して肩にパシッと。
一瞬生まれた間が怖かった。
大スベリしたのではないかと不安になるが、遅れて腹を抱えて笑う倉谷に救われる。
やっぱり、このギャル良い奴! 天使! ポニテを解いたロングも最高!
いやー、俺が男なら惚れてたね。今は女だからギリギリ耐えた。
「やっぱ同じ部活の仲間になるんだから仲良くなりたいなと思ってね。いやー、たかりん誘ったんだけど断られちゃったよ。困ったもんだよね」
「いや、鷹津さんが来ないの分かってて誘ってるでしょ」
「えっ? バレた? 絶対来ないだろうけど、一応形式上ね。後で知ったら絶対怒るもん」
鷹津の事を良く知っている倉谷だからこその配慮という訳か。
出来る女はやる事が違うな。
「てか、待って! やばいやばい!」
何かに気付いた倉谷が、口に手を当てながら慌て始める。
「流石に倉谷さんはやばい。もっと良い呼び方考えてよ、はるっち」
「大袈裟に騒いで呼び方についてなんだ」
「それはそうでしょ! 仲を深める為には呼び方からって昔から決まってるんだよ。ねぇー、あーちゃん?」
「あっ、えっ、はい、そうですね。呼び方は重要ですよ」
まさか話を振られるとは思っていなかった杏が、動揺しながら答える。
このギャルは会話に混ざれない子を見逃さない優しさがあるな。
杏も距離感の近さにこそ驚いてはいるが、会話に参加するのは成功している。
「倉谷さんは、鷹津さんのことをたかりんと呼んでましたよね。春陽さんのことははるっちで、私はあーちゃん。どうやって、呼び方を決めてるんですか?」
「おっ、真面目な質問いいね! その答えは……」
人差し指を突き立てて、長い溜めを作る。
それがフリにしか見えなくてツッコミそうになるが、敢えて待ってみることにした。
「無限に湧き出るインスピレーションが勝手に名付けるんだよ!」
「いや、浅っ!」
「あはは! ナイスツッコミ!」
結局、ボケるのかよ。思わずツッコミ入れてしまった。
杏の貴重な笑顔が見れたから良いけど、このままではいずれ下手なツッコミでやけどしそうで怖い。
「良かったー、はるっちとあーちゃんが良い人そうで。5人しかいないサッカー部の1年生だから嫌な子だったら、どうしようと思ってた」
「待ってください! 私、サッカー部には入れませんよ」
「そうらしいよ、運動が苦手だからサッカー部は入らないって。サッカー自体は相当好きそうだけどね」
「だよね、ウチから見てもサッカー好きなの伝わったよ? ウチのことも熱く解説してたし」
おいおい、あれ聞かれてたのかよ。
恥ずかしくて杏の耳が真っ赤になってるから、あまり掘り返さないであげてくれ。
でも、サッカーが好きなら高校から始めてみるのも悪くないと思う。
さっきの授業も楽しかったと言っていたし、運動が苦手ではあるけど、嫌いではないようだ。
苦手と嫌いでは話は全く別物。
最後に決めるのは自身の本当の気持ち次第。
「これはあくまでウチの意見だけどね。やって後悔するのは一瞬だけど、やらなかった後悔は一生だと思う。人間の記憶は嫌な記憶の方が残るからさ。……なーんて、柄にもないこと言っちゃった」
「ううん、その言葉すごく良いと思います。私に必要な言葉。だから、……ちゃんと私の口から言います。私、…………本当はサッカー部に入りたい。みんなと一緒にサッカーしてみたい」
その瞳は真っ直ぐと強く語っていた。
空気に流された訳でも、嘘を付いている訳でもない。
本心からサッカーがしたいのだと分かる。
「よーし! これで正式に5人になったね!」
「さっきから5人って言ってるけど、4人の間違いじゃない?」
俺と杏、鷹津と倉谷。これで4人だ。
今のところ、A組とB組で他の生徒が入部する情報はない。
他クラスと交流がない現状では、確定しているのはこの4人で間違いないはず。
「確か、D組の犬飼 奏ちゃんもサッカー部入部希望だったはず。中学もサッカー部だったって聞いてるし、間違いないと思うよ」
「その情報網には関心するよ。この日数でそこまでの情報を知ってるなんて。流石、コミュ強」
「褒めてもウチの作った卵焼きしか出ないぞ」
もらった卵焼きを頬張りながらも、まだ出会ったこともない犬飼という子の想像を膨らませる。
ギャルにツンデレ、委員長と来たら、空いてる属性とかあるかな?
めっちゃオタクとか、めっちゃヤンキーとか振り切ってくれた方がやりやすいまであるんだけど。
期待し過ぎて普通の子だった時のリアクションが薄くなるのは避けたいので、妄想もほどほどにしておく。
「あれ? でも、なんか忘れてるような」
「何忘れてるの? 倉谷さん」
「あぁー! 呼び方だ! まだ決めてもらってないじゃん!」
この後、倉谷がごねにごねた結果、英理奈ちゃん呼びに着地したのは、また別のお話。
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