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撫子は強く咲く〜美少女サッカー育成ゲームにTS転生した俺、最弱高校で最強を目指す〜  作者: 風野唄


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008話 本気だから

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

 俺が抜かれるのも想定内。

相手は攻撃のスペシャリスト。

冷静さを欠いていても1人くらいなら簡単に抜くはずだ。

なら、追い討ちを掛けるようにストレスを与えるまで。


「今だ! 頼んだ、(あん)!」


 背後から飛び出して来た杏が、鷹津(たかつ)の進路を塞ぐ。

これは予想出来なかった展開だろう。

集中力を俺に向けさせた状況で、尚且つ、倉谷の視界を塞ぐことで成立する。

普通の試合なら絶対に成功しないが、変則的である体育の授業だからこそ成立した。


 蹴り出したボールは止まらない。

杏が鷹津の足下から離れたボールを奪い取る。

正確には転がり込んで来たという方が正しいけど、結果が同じであればどちらでも良い。


「や、やった! 取れた!」


 初めて経験する成功体験に喜びが隠せない杏。

まさか、自分が鷹津からボールを奪えるとは思ってもいなかったのだろう。

喜びも束の間、ボールをなんとしても奪い返そうと鷹津が杏にプレッシャーを掛ける。


「鷹津が来てる! こっちにパス出して杏!」


 声に反応した杏が弱い力ではあるがパスを出す。

ゴロゴロと地面を這うボール。

拙い連携だけど、それでも鷹津を抜き去るのには十分だった。

パスカットしようとした鷹津の足先は僅か数センチ届かない。


 ボールを貰い、フリーと化したフィールドを駆け上がる。

相手チームはこんな状況でもやる気を感じられない。

流石に同情する余地はあるが、勝負は勝負。

勝ちには貪欲に行かせてもらう。


「アンタにだけは決めさせないッ!」

「速すぎでしょ!? 諦めてよ!」


 もう少しでゴール前なのに、執念で鷹津が追い付く。

しかも、発言の熱とは裏腹に冷静さを欠いてはいなかった。

先程のシュートから学んだらしく、密着することで簡単にシュートを撃たせてくれない。


 後少しで逆転出来るというのに焦ったい。

俺に無理矢理にでも撃ち込める才能があれば。

この距離なら絶対に入るのに。

俺がゴールを決めて逆転するプランを立てたのに、この有様とは情けない。


「ウチもいること忘れないでね!」


 大勢にマークされていたはずの倉谷(くらたに)が、ここに来て後ろから迫る。

何故だと思い、振り返ると体力が尽きてへたり込むクラスメイトの姿があった。

指示通りに動いてくれたからこその結果がこれだ。

尚更、クラスメイトの為にも勝ちたくなる。


「よそ見してんじゃないわよ!」


 隙を見逃さず、鷹津から仕掛けて来る。

このままボールを取られるくらいなら、一か八かの博打を打つ。

頼むから上手くいってくれ。


 視界の中に入っていた杏に向けて、思い切り蹴り込む。

まさかこの場面でパスが回ってくるとは思っていなかった杏は、困惑している。

どうすれば良いのと狼狽えた視線で訴え掛けてくるが、この緊迫した状況で手取り足取り教えている暇はない。


「思い切り蹴れッ! 杏!」


 無茶振りなのは百も承知の上だ。

それでも遮蔽物の何もない杏がシュートを蹴った方が、得点の可能性が高いと思った。


 杏は言われた通り、思い切り足を振り切る。

ボールは緩く空へと上がっていく。

外してしまったかにも思われたが、ゴールポストを掠めながら弱々しくもゴールイン。


 俺は一目散に杏の所へと駆け寄り、両手を握って喜びを伝える。

遅れるようにして、疲れていたはずのクラスメイトが飛び付いて来た。


「ナイスシュート! 藤村(ふじむら)さん!」

「最初、あんなお願いされた時はびっくりしたけど、意外と藤村ちゃんって熱いタイプなんだね!」

「それに朝花(あさか)様もサイコーにカッコよかった!」

「なんで私だけ様なの!?」

「そりゃ、女子校であれだけ運動出来ればモテモテでしょ!」


 まだ試合は終わっていないのに大盛り上がりしていた。

話したことすら無かったクラスメイトともあっさり会話が出来ている。

逆転する目的が達成されたことよりも、初めて教室に入った時には味わえなかったクラスの一体感を味わえたことの方が価値が高いように思えた。


「何やってんのよ、さっきから! 何もするつもりないなら出ていってくれない?」


 こちらのクラスとは対照的に、B組側の方で鷹津の怒鳴り声が聞こえる。


「はぁー? なにそれ。私達、鷹津さんみたいにサッカー上手くないから、邪魔にならないように端でお喋りしてただけじゃん」

「それがイライラするって言ってんのよ。さっきゴール決めた子も明らかに初心者だった。下手を言い訳には出来ないでしょ」

「ウザッ。何いきなり説教して。こんなお遊びでマジになるとかキモすぎでしょ」


 激しい口論が繰り広げられる。

すかさず体育教師と倉谷が仲裁の為、間に入った。

喧嘩相手の女子は体育教師に宥められて落ち着いているが、問題は鷹津の方だ。

倉谷に抑え付けられて暴力沙汰は避けられているけど、燃え上がった炎は収まることを知らない。

何度も睨み付けては宥められてを繰り返している。


「ちょっと何、その態度。私も悪かったって言ったんだから、鷹津さんも謝ってよ」

「絶対に嫌」

「なにそれ、子供かよ」

「ごめんねー、たかりんにはウチがキツく言っておくからさ」


 これ以上、本人同士で会話をさせるのはまずいと判断した倉谷が会話に割って入る。


「……まぁ、倉谷さんがそういうなら。でも、可哀想だよね、倉谷さんも。鷹津さんのお守りさせられてさ」

「あはは、確かに大変な時もあるかもね。でもね、たかりんのこと好きだよ。本気で熱くなってサッカーしてるところも含めて。サッカーとなれば、全部本気なの。それを"遊び"の一言で片付けられちゃうのは、ちょっとだけ悲しいかな」


 優しい口調や笑顔の裏に感じる静かな怒り。

相手もそれを感じ取ったらしく、その後は一切嫌味を言ってこなくなった。


「色々あったし、時間もそろそろだから試合はここまで」


 嫌な空気を断ち切るべく、体育教師から試合終了の宣言がされた。

つまり、これは俺達の勝利も意味している。

大きく万歳をして喜びたいところだけど、今の状況を見て控えることにした。

そのくらいの空気は読める男だからな。


 最後に整列をさせられて挨拶をする。

軽く握手をしてから片付けに入ろうと動き出すと、背後から鷹津に声を掛けられた。


「今の試合、とりあえずA()()の勝ちだけど、アンタのことは認めないから。最後の最後で運任せのプレーをするような相手には2度と負けない」

「あのー、すごく言い辛いんだけど」

「何よ?ハッキリ言いなさいよ」

「同じ部活入るなら、勝った負けたとかではなくなるんじゃないかな」


 見る見る顔が真っ赤になる鷹津。

カッコつけた言葉をマジレスで返されるとは思っていなかったようだ。

その様子を見て、ようやく俺も要らない一言だったと気付く。

空気を読める男は数分でいなくなった。


「あ、あはは、ほら行こうかたかりん!」


  倉谷が強引に背中を押して、この場から離す。

アイコンタクトでごめんとだけ伝えたが、倉谷には後でもう1度謝る必要がありそうだ。

背中から聞こえる喚き声を聞いて強く思った。

ご覧いただきありがとうございました。

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