007話 ストライカーの意地
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「英理奈ッ! カバーは要らないから!」
「ダメだってば! 攻撃の時はたかりんに従ったけど、守備の時はウチに従ってよ! 今までだってそうやって来たでしょ?」
「くっ、……分かった」
立ち塞がるのは倉谷。
後ろでは鷹津がカバーに入っていた。
さっきのようにドリブルで躱しても、その先にいる鷹津に捕まる。
パスをしたとしてもまともに受けられる人がいない。
折角のチャンスを相手のボールで終わらせるだけだ。
こうなったら、無謀だったとしても2人を出し抜く。
それが唯一残された選択肢か。
今の俺のスキル構成で考えられる作戦が1つだけ。
上手くいくかは置いておいて、実行するだけの価値はある。
チラッと横を確認。
ちゃんと敵陣に走り込んでいるクラスメイトが数名。
パスをする素振りを見せて、引っかかってくれたら楽なんだけど、そう上手くはいかない。
一定の距離を保ちながら、俺だけを徹底的にマークしている。
相手もこちらの戦力は見切った上で、パスの選択肢は切り捨てているのだろう。
「どうしたのー? かっこいいルーレット見せてよー」
無駄なノイズを入れる必要はない。
ルーレットはあくまでもスキル補正無しのドリブル。
使うとしたらやっぱりこっちしかないよな。
体でフェイントを掛けながら、キレキレのダブルタッチを発動。
ギリギリまで右に引き付けた倉谷を欺き、ボールを素早く左へとシフトチェンジ。
そのまま抜き去りたいが相手も反応が早い。
足が伸びて来て、ボールに触れられそうになる。
「こっちは、そのレベルのドリブルをいつも見せられてるよ!」
予想外の守備力に驚かされる。
確実に強い。DFを本職としている1年と遜色がないレベルだ。
でも、絶対に負けたくないッ!
ここで負けたら今までの人生と同じじゃねーかよ。
せめて、この世界でだけは諦めるのをやめたい。
今の俺に出来ることは足掻くことだろ!
前に出たボールを踵で後ろへ弾き、倉谷が伸ばした足とは逆方向に叩く。
勢いの止まらない倉谷の隙を見逃さず、躱して前へ出た。
「やるみたいだけど、アタシがいるのも忘れないでね」
即座にカバーへ入る鷹津。
勢いに乗ったテンポを失えば、倉谷と挟み撃ちされてしまう。
でも、この瞬間を待っていた。
倉谷を抜き去り、鷹津との1対1の状況を。
目測が正しければ、この距離は俺の──
「──射程範囲内」
ゴールから18メートルの距離。
シュートレンジのスキルが機能していれば、ここが俺の最大射程ピッタリ。
鷹津を避けるように放たれたシュートは、正確に弧を描き、吸い込まれるように右上の角へ運ばれていく。
キーパーは反応すら出来ない。
最初は本当に入ったのかどうか理解が追いついていなかった。
体育教師の鳴らすホイッスルの音で、ようやく点が入ったのだと実感する。
倉谷の予想を上回る守備こそあったが、概ね思い描いたシナリオ通り。
1番重要なのは、鷹津の目の前でシュートを打ちゴールを決めること。
これで逆転の要素は整ったと言える。
「上手すぎでしょ、今の! 絶対止めたと思ったのに!」
興奮気味に倉谷が話し掛けてくる。
「私も止められたと思ったよ。でも、なんか頭に湧き出るインスピレーションでなんとか」
「げげっ!? まさか天才肌? いやー、それにしてもしてやられたねー。あんなの見せられたらウチの相方もご立腹だよ」
倉谷が振り向いた先で、ゴールキーパーよりも先にボールを回収して、センターサークルへ急ぐ鷹津の姿があった。
鷹津の致命的な欠点はここだ。
負けず嫌いが故に、メンタルが安定しない。
プレーにも少なからず穴が生まれる。
そこを突けば、逆転というのもあり得ない話ではない。
「さっさとして、さっさと。時間短いんだから」
1人待機している鷹津が、ボールを足で踏み付けて全員が位置に着くのを待つ。
腕を組みながら、指でトントンとリズムを取る姿からも苛立ちが見て取れる。
「落ち着いてよ、たかりん。今度はウチらが攻めるんだから、いつも通りいけばまた逆転できるって」
「分かってる。でも、腹立つ。絶対にさっきのよりすごいシュートを決める」
「あちゃー、これまずいね。後は吉と出るか凶と出るか、神に祈りながら待つしかないわ」
狙いの展開になって来たが、先程までの集中力はいつの間にかなくなっている。
テキストで一瞬見えた状態がどうこうに関しては、1点決めたら解除される仕組みなのか。
そうなると、こちらは出せるものは出し切っている。
1度見せた手札でどこまで通用するかは、腕の見せ所といえるだろう。
いや、待てよ。これはサッカーなんだから、別に1人で戦う必要はない。
当たり前だけど、経験者に縛られ過ぎて思考から外していた。
もちろん、このままでは素人が何人束になろうと倉鷹コンビには敵わない。
その結論は変わらないけど、策を仕込むことは出来る。
サッカーについてのテクニックではなくて、誰にでも出来るような策を。
「杏、ちょっと来て来て」
「わ、私ですか?」
「そうだよ、杏だよ。良いから、耳貸して。やってみたいことがあるからさ」
「ひぇっ!?」
近くにいた杏を呼び出して耳打ちで作戦を伝えた。
耳がくすぐったいらしく、少し肩を震わせているのが悪いことをしているみたいな気持ちになる。
他のみんなにも伝えて欲しいと最後に付け加えて、送り出す。
倉谷から鷹津にボールが渡り、試合再開。
俺は自分にやるべき仕事をこなす為に、倉鷹コンビの前へ立ち塞がる。
「クラスメイトに何か伝えてたみたいだけど、意味なんてないから。諦めて大人しく負けなさいよ」
「意味があるかどうか、私が決めるよ」
「生意気なことばっかり言うわね」
相手の重心をよく観察しながら、シザースも警戒。
同じ過ちをしたくはない。
そして、今度は倉谷が近くに位置取っている。
ワンツーの選択肢も消せないのが、厄介なところだ。
ここで鷹津が仕掛ける。
ドリブルで倉谷とは反対側のサイドへ切り込む。
間を開けることで敢えてワンツーの線を薄める作戦にも思えたが、その危険性も理解した上で付き合う。
「なになに!? みんな集まってどしたの!?」
倉谷の驚いた声がフィールドに響き渡る。
これが用意しておいた策。
大勢で倉谷を大勢でマークすることで完全に機能を停止させる。
杏が作戦を伝えて、実行するまでには多少時間が掛かる。
何とかその時間は稼げたみたいだな。
「どんな浅知恵かと思えば、1人にあれだけの人数を付けるってことだったのね」
「9人全員付けば、流石にパスの選択肢は消えたでしょ?」
「その挑発乗ってやるわよッ!」
鷹津が右に突破しようとしている。
俺も右へ寄る素振りを見せる。
でも、本命は左だ。
さっきのシザースを見せられているので、このフェイントには騙されない。
予想通り、鷹津の足がボールの前を通る。
再度、ボールを蹴るのが見えた瞬間、左に急いで体を寄せた。
だけど、何故かボールは定位置のまま。
「ダブルシザースかよ……」
気付いた頃には鷹津が俺の横を通り過ぎていた。
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