006話 ゲームスタート
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「すごい剣幕だったね。初対面なのにあんな感じでこられたらびっくりだよ」
「今の府部中の倉鷹コンビですよ! 倉谷さんが守備的MFで、鷹津さんが攻撃的MF。幼馴染の2人は息のあったコンビプレーが武器で、2人さえいれば攻守が成り立つと言われるくらい強い選手ですよ!」
「てことは、さっきの2人かなりの有名人?」
信じられないものを見る目で俺を見る杏。
サッカーしていて倉鷹コンビを知らないなんてあり得ないです。と顔に書いてあるけど、知らないものは知らない。
少なくともエンジェルイレブンのストーリーに登場するキャラの中には確実に存在しなかった。
俺の知識はゲームに依存しているので、当然知らない選手だって出てくる。
「もしかして、2人を知らなかったんですか?」
「……あ、あははー」
「春陽さん……、私でよければいつでも教えますからね」
有難い話ではあるけど、人を憐れむのはやめてほしい。
主要人物ならパラメータまで完全に頭に入ってるから! なんなら、詳しいまであるから!
なんて言っても、今の状況では説得力がないので、ありがとうとだけ言っておく。
自分達の試合が始まるまでの20分間は、有意義な時間だった。
杏にも協力してもらい、スキル『ダブルタッチ』の性能を試してみたけど、あれはダメだ。
楽しすぎて癖になりそう。
気分はさながら神の子。
このスキル1つでフィールドを縦横無尽に駆け巡るのが、容易にイメージ出来る。
他のスキルも確認したいところだけど、そろそろ時間だ。
体育教師の前に整列する2チーム。
試合開始の宣言と同時に、向かい合って握手を交わす。
俺の前にいた鷹津も、険しい表情を浮かべながらも渋々握手をする。
「アンタ、分かってるわよね?」
「お望みとあらば」
最後の最後まで念を押しするとは、生粋の勝負好き確か思えない。
ジャンケンで負けたので、ボールは相手チームに。
こちらにはチームとしての作戦がないので、とりあえず俺が前線でボール奪取して素早くカウンターを狙いたいところ。
対して、倉谷と鷹津はセンターサークルの中に立つ。
他のB組クラスメイトの大半は、後方の邪魔にならない位置でお喋りを始めてる。
こう見ると2人で攻めるのは明らかにリスクが高いように思える。
GKは全くの素人。シュートを打てれば、ほぼ確実に入るだろう。
倉谷を守備に徹底させた方が確実なのではないか。
つまり、これで読み取れる相手の言い分はこうだ。
"お前にボールを奪われるはずがない"
なんともシンプルで自信満々な挑発。
俺の闘志がメラメラと燃える音が聞こえるぜ。
ホイッスルが鳴ると同時にキックオフ。
倉谷から鷹津にボールが渡る。
「ほら、来なさいよ。アタシが直々に相手してやるから」
指をクイクイっと折り曲げて挑発をかましてくる。
わざわざ真っ向から勝負に挑むのは馬鹿のすることだ。
相手は2人。ワンツーパスで簡単に突破されてしまう。
「あぁ、そういうことね。英理奈、上がって良いわ。アタシが1人で仕留める」
「りょうかーい! ゴール前で待ってるね!」
俺の心理を読み取った鷹津は、タイマンの状況を提供してくる。
どうしても実力の差を見せつけたいのか。
余程の負けず嫌いに見える。
「良いの? 1人になっちゃったけど」
「アンタ、勘違いしてるみたいだから教えてあげる。周りは倉鷹コンビなんてダサい呼び方して持て囃すけど、アタシは1人でも最強なの」
挨拶代わりに攻撃を仕掛けてきた。
スピードの乗ったドリブル。
見た目に反して、芸のない強引な突破だ。
こちらも合わせて走り出す。
必死に負けじと並走するも相手の表情は余裕そう。
「やっぱり、どうってことないわね」
つまらなさそうな顔で呟くと、完璧に勢いを殺した減速を見せた。
反応して止まることは出来たが、足に力が入り過ぎたせいで一瞬動きが固まる。
鷹津の視線は右。足の動きも右側に切り込もうと動いている。
出遅れたけどまだ間に合うはずだと、体を寄せる。
「なっ!? そっちかよ!」
目にも止まらぬ足捌きのシザースで逆側に突破。
甘く考えすぎてた。
1年生だから大したことはないと、高を括っていたのは大きな間違い。
誰だってあんな演技派のシザースを見せられたら騙されるに決まってるだろ。
背中を追って挽回を図るも、無慈悲な縦パスがゴール前にいた倉谷へボールを運ぶ。
「ナイスパース! たかりん!」
形式上、DFとして立っていたクラスメイト達もいたが、倉谷相手では分が悪い。
容易く3人を抜き去ってシュートを放つ。
ゴールネットが激しく揺れる。
開始2分、鮮やか過ぎる先制点を見せつけられた。
「すごいね、鷹津さん。全然ボール取れなかったよ」
試合再開の為にボールを持ってセンターサークルへ向かう中、悔しさを誤魔化すように鷹津との会話を試みる。
「あれくらい当然でしょ。それよりも、今度はそっちの番よ。あんまりアタシをガッカリさせないでね」
赤色の髪を靡かせながら自陣に戻っていく鷹津。
想定よりも弱かった俺に興味を失ったのか、会話はするつもりはないらしい。
「あちゃー、素直じゃないなーたかりん」
ひょこっと俺の後ろから現れた倉谷が、やれやれと首を振って呆れている。
「本当はまだ期待してるんだよ、はるっちのこと。あんなにツンツンしてて分かりにくいけどね」
「期待? 2人の方が有名なんだし、私に期待することあるの?」
「そんなことないよー! だって、たかりん──」
「英理奈、余計なこと言わなくて良いから」
気になる言い方をして去っていく。
これはもしかすると彼女達の策略なのか。
気を散らしてプレーに集中させないつもりかもな。
そうでなかったとしても得点は1対0のビハインド。
意地でも同点に持ち込みたい。
センターサークルに入ると、目を閉じてぐるっと首を回し心臓を軽く叩く。
集中する時のいつものルーティン。
全神経を使うので激しく疲労するが、確実に1点を入れたい執念が勝る。
ピーッとホイッスルの音が耳に入ると同時に目を見開き、杏からボールを受け取る。
その瞬間、見える景色全てがより鮮明でクリアに見えた。
風の音が、ボールに触れる感触が、土の匂いが。
五感全てが研ぎ澄まされて別世界を生み出す。
この状態、絶対に負けられないゲームの試合をしている時に似ている。
得られる情報がいつもの何倍にもなっているのに、それでいて邪魔に感じることもない。
意識しない間に頭で整理されていく。
[条件達成:状態"過集中・分析型"を習得]
まずは仕返しだと言わんばかりに鷹津の方へ一直線。
距離をどんどん詰めていくが、敵チームの他の生徒が割り込んでボールを奪いに来る。
相手の視線はボールに釘付け。
こちらを全く見ていない。
なら、左に切り込みながら位置をずらして、自分の方へボールを引き込みながら360度体を回転させたルーレットで容易く突破。
自身の調子は最高潮。
思い描いたプレーが自動再生みたいに再現できる。
この感じが途絶えてしまう前にゴールを決めてしまいたいが、話はそう簡単ではない。
狙いが鷹津とのタイマンだと悟った倉谷が既にカバーの体制に。
人数不利な状況をどうするか、考えるだけでも頭が熱くなる。
それでも動き続ける思考を止めることは出来なかった。
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