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撫子は強く咲く〜美少女サッカー育成ゲームにTS転生した俺、最弱高校で最強を目指す〜  作者: 風野唄


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060話 無責任な先輩

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

 1人で職員室へ向かう道中。

同じく1人で外を眺めている真宮(まみや)先輩を見つけた。

相手はこちらに気付いていない、もしくは気付いているけど触れたくない様子。

だけど、その道は職員室へと繋がっている。

わざわざ迂回するのも不自然な感じがして、敢えて堂々と近寄っていく。


 距離が近付くに連れて、心臓に負担の掛かる緊張感が押し寄せる。

流石に無視するのは不自然だろうか。かと言って、普通に挨拶をしても返事を返すとは思えない。

悩みに悩んだ末に俺は何も見ていないことにした。

彼女は多分、真宮先輩ではない。

良く似た誰かだったということにでもしよう。


 窓の外をずっと眺めたままの真宮先輩の横を通り過ぎようとした時、


「立海山との練習試合、勝ったみたいだな」


と彼女の方から声を掛けて来た。

試合の結果を知っていたことも驚きだけど、まさか話し掛けられるとはという驚きの方が大きい。


「えっと、そう…ですね。勝ちました」


戸惑いながらも無難な返事を試みるが、声色が全てを物語る。


「君は嘘が付かないタイプらしい。まさか、私が話しかけるとは思わなかったと思っているだろ」

「正直に言うとそうですね。嫌われてると思ってたんで」

「最初の会話があれなら仕方ない。私が感情的になり過ぎていた。必要であれば、ここで謝罪をしよう」


 最初に話をした時と違い、客観的に物事を捉えられている。

明らかな変化。肩の荷が降りたような表情。

俺は悟った。


「サッカー部、辞めたんですか?」


 だから、職員室に向かう廊下で明後日を見て黄昏ていた。

そうやって仮定すると合点がいく。

勝手な憶測に過ぎない推理。

そんな推理は外れているだろうし、外れていて欲しい。

本当だったとしたら、俺は目の前にいる彼女を失望することになるのだから。


「どうして……」


真宮先輩が目を丸くする。


「あぁ、今し方顧問に退部届を渡して来たところだ。未練がないかと言われたら嘘になるが、これで良かったんだと思う」


 1度部長を引き受けた人間が、どんな理由があるにしろ易々と辞める選択をするなんて。

中途半端な覚悟しか持っていないのなら、最初から部長なんて引き受けないで欲しい。

最後の締め括り方も、逃げたことを正当化しているだけで、美談でも何でもない。


「辞めて満足ですか?」


 鋭い一言で刺した。


「満足だ。私はとっくの昔に戦えなくなっていた。いつまでも足を引っ張るより、新しくなりつつある風に全てを任せる方が互いに良いだろうさ」

「なら、私から言えることはありませんね。お疲れ様でした」

「待ってくれ。最後に1つ頼みたいことがある」

「退部する身で私に頼み事ですか? 随分と都合が良いんですね」


 頼みがあると聞いた時、素直に憤りを感じた。

あまりに自分勝手だ。

ここまで散々俺達と、サッカー部と向き合うことから逃げておいて、自分の頼みだけ聞いてもらうなんて。

だから、立ち止まってうんうんと相槌を打って話を聞いてあげる気にはなれなかった。

苛立ちを隠さないまま黙って職員室へと足を運ぶ。


「サッカー部を君に任せた」


 この人は余程俺の神経を逆撫でしたいらしい。

真宮 実乃(みの)という人間が絶対に言ってはならない言葉をこうも容易く口にしてしまうのだから。

本来であれば、彼女がやるべき努め。

それを他人に投げてしまうのは無責任だ。


 振り返るつもりにすらならなかった。

もう口を開かないで欲しいとすら思った。

今の自分がどれだけ滑稽な事をしているのか。

1度頭を冷やして冷静に考えて欲しい。


 どんどんと遠くなっていく距離。

ずっと感じる視線を背に、立ち止まらずに歩き続けた。




「失礼します。サッカー部1年の朝花(あさか)です。刈谷崎(かりやさき)先生、いらっしゃいますか」

「はぁーい、いますよぉー。どうぞぉー」


 間延びした癖のある返事。

もう何回目も聞いきてきたので、流石に慣れて来た。


「部室の鍵を返しに来ました。これ、どうぞ」

「お疲れ様ぁー。昨日は大変だったしぃ、今日はゆっくりお家で休むんだよぉ?」


 労いの言葉が真っ先に出てくる辺り、先生の人柄の良さが分かる。


「帰る前に1つ良いですか? 真宮先輩についてなんですけど、退部したって本当ですか?」

「んんー? 退部ぅ? してないよぉ」


 真剣な顔で刈谷崎先生が答えた。

嘘偽りは感じられない。

聞いていた話と違う回答で呆気に取られる。

だったら、さっきのやり取りはなんだったのか疑問だ。

2人の発言が食い違っているということは、どちらが嘘を言ってる。

全くメリットのない嘘を。


「もしかしてぇ? これのこと言ってるのかなぁ?」


 机の引き出しを開けて、1番上に置かれていた1枚のプリントを取り出す。

そこにはしっかりと退部届と書かれており、名前の箇所にも真宮先輩の名前が書かれている。

これを見ているのに退部していないと言い切った刈谷崎先生の真意を聞きたい。

どう考えても退部届を出されたら、退部扱いになるのが当然だと思うけど。


「それのことですよ、刈谷崎先生。退部届ですよね、それ。本人も退部したって言ってましたし」

「言われたねぇー、退部したいってぇ。でもぉー、この書類不備があるからぁ」


 トントンと指した箇所は空白。

何が空白なのかと視線をズラすと項目の欄は退部理由と書かれていた。


「退部理由がないってことはぁー、辞める理由もないってことでしょ? 預かりはしたけどぉ、彼女が退部理由を探すまではお預けかなぁって」

「なんかトンチみたいな事言いますね」


 どちらの話も真実だったと言うわけか。

認識の違いでこんな結果になったようだ。

刈谷崎先生は退部を認めていないけど、結局本人が退部したつもりでいるなら意味はない。

きっと部活に参加することは金輪際あり得ないと思う。


「教えて頂きありがとうございます。聞きたいことは聞けたので、今日は帰ろうと思います」

「ちょっと待ってぇー。あっ、うーん、いや、そうだな。なんでもないかもぉ」

「……? そうですか。失礼します」


 最後の含みのある一言。

刈谷崎先生の表情は何かを隠していた。

職員室で他の先生の視線がある手前、しつこく追求は出来なかったけど、察するに重要な事だと思う。

後日、改めて話を聞くことにして職員室を後にした。

ご覧いただきありがとうございました。

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