058話 参加する者、しない者
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授業が終わり放課後になると、サッカー部のメンバーは部室へと集まっていた。
普段であれば、わざわざ集合せずに着替えた者から練習を始めていたのだが、今日はそういう訳にもいかない。
今後の方針を話し合うという程でのミーティングを行うからだ。
とはいえ、方針なんてのはヴァルキリーカップに向けて、練習を重ねる以外にはないので、本質は上級生との顔合わせの意味合いが強い。
昨日の練習試合を見る感じ、獅子王先輩と猫屋敷先輩は今後意欲的に参加してくれると思うので、今日のミーティングにも参加してくれると思っている。
残りの4人。ここは参加するか怪しい。
真宮先輩に至っては確実に参加しないだろうし。
一応、刈谷崎先生の方からメッセージを通して全体連絡は済ませてあるので、後は本人次第といったところ。
「おいーすっ、おつかれー。今年の1年坊はえれーな。先に集まっているなんてよ」
いつものようにダラッとしたジャージ姿で現れたのは、獅子王先輩だった。
「お疲れ様です、獅子王先輩。今日は1年1人欠席なんですけどね」
「犬飼だろ? 昨日、倒れちまったし、無理ねーよな。お大事に伝えといてくれ」
「はい、ちゃんと伝えておきます」
携帯をチラッと確認する。あれから連絡は返って来てない。
何回も連絡するのは奏に負担を掛けてしまうので、そっと携帯をしまった。
奏にも奏の事情がある。
ちゃんと返信を待って事情を聞いた上で、ゆっくり話をすれば良いだろう。
話が途切れると、獅子王先輩はしきりに扉の方へと目を向けていた。
何があるのかと思って、全員で注目してみるが何も起きない。
どういうことかと視線を送ると、呆れた顔でため息を吐きながら頭を掻く。
こちらは益々疑問符が浮かび上がった。
痺れを切らした獅子王先輩が動く。
「おらっ、さっさと中に入れよ。みんな待ってるぞ」
「あっ、ちょっ、ちょっと待ってよ灼巴ちゃーん! 僕、まだ心の準備が、心の準備が出来てないんだけど……」
強引に腕を引っ張られながらも部室へと入って来たのは、やはり予想していた通り猫屋敷先輩だった。
「……み、雅野2年、GK! ね、猫屋敷 風琴ッス! よろしくお願いします!」
後輩相手に礼儀正しすぎる挨拶をする猫屋敷先輩。
緊張しているのか、紫髪のお団子2つを俺達に見せたままずっと顔を上げようとしなかった。
「風琴は俺の幼馴染なんだよ。幼稚園から高校までずっと一緒で。ちょっと自分に自信がない奴なんだけど、悪い奴ではないから仲良くしてやってくれ」
足りていない情報を補うように獅子王先輩からの補足説明が入る。
2人が幼馴染であるというのは聞いて驚かない。
試合中も互いを信頼している場面が見受けられたし、下の名前で呼んでいた。
付け加えれば、属性もちょっと似ている。
俺っ子と僕っ子。
幼い頃から憧れていた年上幼馴染の真似をして、なんて妄想が捗る。
「他は……来てねぇーみたいだな」
部室を見渡すも2人以外は誰も来ていないことに気付く。
このミーティングの重要性には全員が気付いているはず。
それでも他の人達は来なかった。
その意味を獅子王先輩は静かに噛み締めていた。
「まぁ、しゃーねよな。これは真宮と俺の責任だ。後輩達に情けないところを見せて申し訳ない。でも、俺も風琴も心入れ替えてチームの為に動くつもりだから。よろしくな」
「よろしくお願いします!」
「じゃあ、今日はこの6人でミーティングを──」
「ちょい待ちぃや。自分もおるで、自分も」
これ以上は人が来ないと思っていたから、全員が堂免先輩の登場に驚く。
本人も自覚があるからなのかばつの悪そうな表情を浮かべている。
それでも勇気を出してこの場に現れたということは、覚悟が決まったのか。
真意は彼女の口から語られるのを待つしかない。
「……昨日の試合。正直、勝てるとは思わんかった。負けて当たり前、なんで本気になってるんやろって。でも、勝ったやんか。そんで、みんなが喜んでんの見て、羨ましいと思った。悔しいと思った。情けないと思った。もう嫌やねん、こんな思いすんの。だから、お願いします。自分にチャンスをください」
3年としてのプライドを捨て、頭を下げてでもチャンスを乞う。
簡単に出来ることではない。
今までの態度や行動にいただけない点もあったが、彼女も悩み苦しんだし、一度はサッカーから背を向ける選択もした。
でも、俺達の姿を見て、もう一度向き合うことを決めてくれた。
素直にそのことを喜びたい。
「頭を上げてください堂免先輩。もちろん、みんな大歓迎ですから」
「でも、……」
顔を上げながら、凛の様子を伺う。
練習試合が始まる前に、ちょっとした小競り合いをした手前、気まずい気持ちがあるのだろう。
凛は曲がったことが嫌いなだけで、気持ちを切り替えた相手に追い討ちを掛ける真似はしない。
ただ表立った凛の性格を見ると不安になるのも分かる。
ここは1つ、本人の口からも何か言ってもらう必要があるな。
「凛がどう思うか言ってあげた方が良いんじゃないかな?」
「アタシは今までのこと許さないわ。練習もせず、先輩面だけして、本当にアタシが嫌いな人種だったもの」
「ちょ、たかりん! それは言い過ぎ」
「ええねん、倉谷ちゃん。事実だから」
「最後まで話は聞きなさいよ。今は許せないし、許さない。だからこそ、アタシが許したくなるように行動で示してくださいよ、先輩」
素直じゃないよな、凛も。
すぐに受け入れるのは、先輩達に都合が良すぎる。
一度否定することで、ある程度の緊張感は常に持っていて欲しいという彼女なりのメッセージだったんだろう。
「じゃあ、他の人達は来ないみたいなので、早速ミーティング始めましょうか」
切り替えるべく、手を一度叩いて空気を締める。
本題はここからだ。
先輩達にとっては酷な話をこれからしなければならないのだから。
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