056話 ご褒美は忘れずに
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「───ちゃん! お姉ちゃん!」
「んんー。どうしたの冬音」
本物の朝花 春陽との会話を終えて、意識が戻ると隣で妹が慌てていた。
どうして慌てているのか。
俺は確かお風呂に入っていて、そこで意識を失って……、そうだ! 俺はさっきまで風呂場にいたはず。
しかし、いつの間にか服を来て、リビングのソファに寝ている。
髪は濡れたままであることを考えると、風呂場で溺れ掛けている俺を妹が見つけてここまで運んでくれたのかもな。
「……死んだかと思った」
鼻水を啜りながら冬音が言った。
その目は赤く腫れ上がっている。
彼女は朝花 春陽の家族だ。
もしかすると妹は春陽が自殺しようとしているのを薄々感じ取っていたのかもしれない。
だから、今日溺れているのも見て勘違いした。
……家族が気付くくらいの心が傷付いた出来事。
本人の口からは聞かせてもらえなかったけど、知りたいと思った。
興味本位なんていう野次馬心からではなく、この身を借りている以上他人事にしたくないから。
悩みの種が分かれば、俺も解決の糸口を探すことくらいは出来る。
そうして、いつかこの体を返す時に。
「ごめんね、冬音。怖かったよね」
今は目の前の妹を安心させるところから始めよう。
十分に体温の上がった手で優しく冬音の頭を撫でる。
俺には妹や弟がいなかったけど、遥か昔の記憶の中で泣いた時に母親が撫でてくれたのを思い出した。
あの優しい手、きっとみんな経験したことのある温かな手を。
何度も撫でているうちに冬音は泣き疲れて寝てしまった。
目から溢れた涙の跡をそっとティッシュで拭ってあげる。
起きてしまわないように、そっと慎重に。
心配を掛けてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら。
涙を拭き終えると俺の代わりにソファへと寝かせてあげた。
本当だったら妹の部屋まで連れて行きベッドで寝かせてあげるのが良いんだろうけど、妹の部屋も俺と同じく2階にある。
年齢も殆ど変わらない妹を抱えて階段を上がり切るのは、至難の業なのでどうか勘弁してほしい。
「春陽に何があったのか。家族に聞く訳にはいかないよな。本人のことを本人から聞くってパニックだろうし。だとすれば、中学時代の友人とかから聞くのが良いのか?」
1階で寝ている妹に気を遣って、自室へ戻って髪を乾かしていた。
乾かしている間も手持ち無沙汰で、とりあえず目に入った中学のアルバムから情報を探る。
当時、仲が良かった友達がいるなら、アルバムの写真で一緒に写っていることが多いはず。
ドライヤーの音が周囲の音を消して、より一層集中力を高める。
1ページ、また1ページとアルバムを捲る手が進む。
そうしている内に、1つの事実に気付いた。
「春陽が写ってる写真、明らかに少ない。かろうじて撮られているのも全部、うーん、なんというか不意に撮ったしか思えないような写真ばっかりだな」
アルバムの中にあった春陽の写真はたった3枚だけ。
全部が振り向き様の写真ばかりで、本人はあまり嬉しそうな表情ではない。
そして、1人で写っている。
思うところは沢山あった。
どうして枚数が少ないのか。どうして1人で写っているのか。
色んな憶測も浮かんでくるが、あくまでも憶測の域を出ない。
「どうしたもんかなー」
乾かし終えてドライヤーの電源を切ったのに、まだ頭を悩ませている。
答えは出ない。
この場ではどうすることも出来ないのは分かったか上で、やるせない気持ちを切り替えられないでいた。
「あっ、そうだ。忘れてた」
気持ちを切り替え為に何かないかと考えていたら、思い出したことがあった。
結構楽しみにしていたことなので、今の俺にぴったりだ。
「さてさて、ログの確認と」
[条件達成:2試合連続ゴールを達成。シュートを3上昇]
[条件達成:90分間、フル出場を達成。スタミナを5上昇]
[条件達成:人数差のある試合での勝利を達成。スキル『逆転の先導者』を入手]
[条件達成:過集中状態で、過集中状態の相手と対戦を達成。スキル『ダイバー』を入手]
[条件達成:強豪・立海山高校に勝利を達成。好きなパラメータを20上昇。 未選択]
[神からの贈り物:EXスキル『神出鬼没の狩人』が贈呈されました]
「うへぇー、大盤振る舞いだな」
パラメータ上昇系の報酬が3つ、スキル系が2つ、そして神からの贈り物のEXスキルが1つ。
パラメータに関しては、シュートとスタミナが常識の範囲内で上がっている。
これはまぁ、有難いなって感じで終わるんだけど、好きなパラメータ20上昇……、破格過ぎやしないだろうか。
現状の立海山との戦力差で勝利したことを含めても、やや豪華な様にも思える。
貰えって良いのかと躊躇う部分もあるけど、ヴァルキリーカップで優勝することが目標なので黙って受け取ることにしよう。
上げるパラメータは悩んだけど、フィジカルを上げることにした。
パラメータの中で才能がEと低い。
才能は伸びやすさに直結するので、1番伸びづらいパラメータを優先するのが最善だと判断した。
その他のパラメータに関しては、才能値が平均よりも高めなので後回しでも問題はないだろう。
スキルは、点数がビハインドの時に1度だけ味方のパラメータをランダムに上昇させる効果がある『逆転の先導者』と、過集中の継続時間を伸ばす『ダイバー』。
『逆転の先導者』は、スキルレベルを上げるのが難しい分EXスキルにも負けず劣らずの才能と言える。
『ダイバー』は、極めれば15分間は過集中状態を伸ばすスキルだ。
どちらもレベルが低い段階では大幅な強化が見込めないものの、持っていても腐るスキルでもないので純粋に喜べる。
残すところはEXスキル。
『神出鬼没の狩人』。
色々と説明文が書いてあるけど、要約すればインターセプトが成功しやすくなるスキルらしい。
俺としてはディフェンスよりはオフェンスに集中した構成が好ましいので、手放しには喜べない。
けれど、今日のように高い位置でボールを奪い返せれば得点機会も増える。
物は使いようとも言うし、何度か試してみる必要はありそうだ。
「これで以上か。既存のスキルはレベルが上がらなかったけど、パラメータと新規スキル系は文句なしだな。後は……ふぁーー、はぁー。眠くなってきた」
練習試合後と言うこともあって、まだ食事もしてないのに眠くなって来た。
ちゃんと食べてカロリーを補給しないといけないというのに。
食事と睡眠。三大欲求の2つを天秤に掛けた結果、睡眠欲が圧勝。
寝支度を手短に済ませて、今日はそのままベッドへ飛び込んだ。
ふかふかなベッドの寝心地が疲れた体を癒しながら、深い眠りへと誘われた。
【プロフィール】
名前:朝花 春陽
年齢:15歳
所属:雅乃高校 サッカー部
ポジション: FW
【パラメータ】
シュート:44(才能:B)
オフェンス:37(才能:A)
フィジカル:54(才能:E)
ディフェンス:36(才能:D)
スピード:42(才能:B)
スタミナ:39(才能:C)
インテリジェンス:48(才能:C)
【EXスキル】
『無限の可能性』、『果敢な挑戦者』、『神出鬼没の狩人』
【スキル】
[シュートレンジ強化 LV2]、[ダブルタッチ LV4]、[隠密 LV1]、[分析 LV1]、[逆転の先導者 LV1]、[ダイバー LV1]




