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撫子は強く咲く〜美少女サッカー育成ゲームにTS転生した俺、最弱高校で最強を目指す〜  作者: 風野唄


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054話 最早恋だね

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

 試合終了後、疲労困憊の中で立海山(りっかいざん)との挨拶を済ませる。

最後の最後まであっちは息も乱れぬ様子なのを見ると、どっちが勝ったのか分からなくなりそうだ。

でも、この試合は間違いなく勝った。

大量に流れ込んでくるリザルトのログからもそれは分かる。

気になる内容もあるけど、じっくり見たいので後回しにしよう。


 それよりも今は後片付けに行かないと。


「おつかれちゃーん、春陽(はるひ)ちゃん」


 背後からの呼び掛けに、歩みを止め振り返る。

全体で1度挨拶は済ませたはずの阿久間(あくま)が、笑顔を浮かべながら立っていた。

それは、にこやかな笑顔などではない。

口角と目を限界まで開けた狂気的な笑顔で。


「お疲れ様です、阿久間先輩。今日はお相手いただきありがとうございました」

「そんな堅苦しい挨拶は要らないよ、春陽ちゃん」

「いえ、心から感謝しています。雅野(みやびの)も大きく成長出来ましたから」

「そうなんだよ! そこなんだよ! 雅野は強くなった。取るに足らないと思っていたチームが変貌を遂げた! それは他の誰でもない君の力だ、春陽ちゃん!!!」


 あ、やばい。

変なスイッチを入れてしまったかも知れない。


「君の価値は益々跳ね上がる。思いが馳せる。あぁ、これは最早恋だね」


 耳に残るネットリとした声、どこへトリップしているうっとりとした表情。

可愛い顔がこんなにも怖いと感じてしまうとは。

恋なんて言葉を使っているけども、要するに新しいおもちゃを見つけてご満悦なんだろ?

阿久間 莉里(りり)ってのはそういう女だ。


 でも、身の毛がよだつ程怖いと思う反面、今の俺にとっては光栄な話だとも思う。

作中屈指の実力者が敵だと認めてくれた。

つまり、俺も強くなったということだ。

自分で言うの何だが実感もある。俯瞰した視点と全体を予測して動かす、あの新たな名の無い力。

完全に物にしたとは言えないけど、確かにあれで1点を取った。


「疼くんだよね、もう。あの興奮が忘れられないんだよね、もう。もう1度、もう1度試合をしようよ! ねぇ!」

「あ、あの。あ、阿久間先輩。古枝(ふるえだ)監督が呼んでます」


 暴走モードだった阿久間を止めに入ったのは、試合が終わりオドオドちゃんに戻った秋風(あきかぜ)だった。


 何故監督に呼ばれているのか心当たりがあるらしい阿久間は、いつもの顔に戻って冷や汗をかいている。

俺との会話か、監督の用件か。

どちらを優先すべきなのか迷って挙句、監督の用件を優先することにしたようだ。

何度も振り返っては、子供みたいに無邪気に手を振って立ち去って行く。


 残された秋風がじっと俺の顔を見つめる。

耐え難い空気に押し潰されそうで何度も目を逸らすが、しばらくしてもその視線が途切れることはない。

静かに浪費されていく時間。

喉からは潤いが失われ、こちらから声を掛けようにも言葉を発することが出来ないでいた。


朝花(あさか) 春陽(はるひ)さんですね」


 こんな状況でなければ、絶対に聞こえていなかったであろうか細い声で秋風は俺の名前を呼んだ。

何を言われるのか。想像も付かない。

高まる緊張感は口の中に僅かに残った唾をごくりと喉へ押しやった。


「こ、今回は負けてしまいました。そこに嘘偽りはありません。なので、次は絶対に……負けませんから」


 性格が一瞬で変わろうとも根底にあるサッカーに対する情熱は変わらないらしい。


「今度も、その次も、その次の次も。何度だって勝つのは雅野だよ。私がいる限りはね」

「……では、失礼します」


 深々としたお辞儀を見せ、その場を立ち去っていく。

その大きな背中を見送ってから、片付けの為にみんなと合流すべく後ろを振り返る。


「何サボってんのよ、春陽」

「きゃぁっ!!! ……びっくりしたぁー」


 目と鼻の先に現れた凛。

後退りながら肩を震わせて驚いてしまう。

おまけに反射的に出たのが、絵に描いたような女の子の悲鳴とは。

元の自分を薄れている気がして不安になる。


「な・ん・で、サボってるアンタがそんな顔してんのよ」

「いててぇっ、いてぇっ。ちょ、ごめんって。耳引っ張らないで」


 違うことを考えていたら、不貞腐れたと勘違いされてしまった。

当然の報いとはいえど、赤くなるまで耳を引っ張るのは良くないだろ。

ヒリヒリと痛む耳を優しく両手で押さえながらも、大人しく凛の後に続く。


 考えた、ちゃんと考えたさ。

流石にやり過ぎだと抗議することも。

でも、なぁ。サボっていたのはどうにもならない事実であり、現実でもある。

尚且つ、凛は平気で事実を突きつけることの出来る女。

万が一にも勝ち目はない。

出来る事といえば、顔を下に向け反省の意を心で唱えるばかり。


「アンタねぇ、いつまでそうやってるつもりよ。アタシが悪いことしてるみたいじゃない」

「いえ、悪い子は私です」

「あのねぇ、今すぐそれやめて」

「へぇーい」


 ちょっとイタズラが過ぎたようで、本気の目で注意されたのでいつも通りの俺に戻る。


「春陽、アンタ(かなで)見てない?」

「そういえば、試合が終わった後から見てないけど。まさか、奏にまで片付けをさせるつもりなの」

「違うわよッ! ただ、……なんていうの? 奏とちゃんと話さないといけないことがあっただけよ」


 凛も人の子。試合中の奏の覚悟を見て、思うところがあったのだろう。

話というのも喧嘩したあの昼休みの事を謝りたいんだと思う。

素直になれないところが彼女らしい。


「一足先に帰ったんじゃないかな。刈谷崎(かりわさき)先生もいないみたいだし」

「まぁ、それもそうね。明日にでもまた声を掛けてみるわ」


 晴天だった空模様にいつのまにか雲が掛かる。

湿った匂いもするし、嫌な感じだ。

手を出して見ても雨粒は当たらない。

だけど、この感じだと雨が降るのも時間の問題だな。

さっさと片付けて、撤収を急ぎたい。


 ちょっと小走りでみんなの所へと向かった。

ご覧いただきありがとうございました。

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