049話 獣達の宴
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!
猫屋敷先輩のパスが獅子王先輩の下まで届く。
本人が言うように今、1番調子が良いのは獅子王先輩だ。
そんな人間に対して何も対策していないはずもなく。
3人掛かりという贅沢なマーク。
獅子王先輩もボールは何とか受け取れたけれど、それ以上先に進むが難しそうだ。
すぐにでも俺が行ってフォローするべきなんだろうが、何分現在地は自陣のゴール前。
今からでも攻め込みはするけど、あの状況を何とかするのは間に合わない。
出来る人間がいるとすれば、ただ1人。
獅子王先輩とはすこぶる相性の悪い彼女がいる。
「鷹津、ワンツー!」
あくまでも自分主体で進めたい獅子王先輩。
凛にパスを出しながらワンツーを要求する。
さっきまで喧嘩していた凛が素直にパスを返すだろうか。
「絶対に嫌ッ!」
ボールを受け取るとそのまま走り始める。
2人の関係は水と油。
決して混ざり合うことはない。
例え、片方が歩み寄ろうとも。
スキルの補正が掛かった相手を惑わすシザース。
俺は見慣れているけれど、それでも対応するのは難しい。
ましてや、相手が初見ともなれば安易と踏み込めはしないだろう。
長い溜めを作って、確実に突破出来るタイミングを伺う凛。
相手が強豪校だからなのか、いつもより慎重に思える。
普段ならチャレンジしているような場面も、今回はスルーだ。
「時間掛け過ぎだ、鷹津ッ! 1回、俺に戻せ!」
ついには獅子王先輩からの言葉も無視。
立海山の選手も2人の仲を見て、パスはないと判断。
獅子王先輩のマークを1人だけ残して、ボールを持っている凛に人数を掛ける。
プライドを優先してしまった凛の暴走。
側から見ればそうとしか見えない。
だけど、信じている。
その長い溜めも、敢えて口に出す拒絶も全て1点を取るための布石なのだと。
だって、彼女はとびきりの演技派なのだから。
1度だけ。たった1度だけ、凛の人差し指が空いているスペースを指した。
はっきりとではなく、ぼんやりと。
ちゃんと観察しておかないとメッセージに気付けないレベルだ。
「あのゴールに免じて、花を持たせてあげますよ先輩」
[通知:鷹津 凛のEXスキル"イーグルパス"が発動]
狙った獲物は逃がさない。どんな場所でも、どんな状況でも。
そんな鷹津らしい意志を感じさせる鋭いパスが、大空を自由に駆け巡る。
羽ばたいて辿り着く先には、もう1匹の獣が。
虎視眈々とゴールを見据えて走る。
立海山も気付いた。
慌てて獅子王先輩を追い掛けるが、その速さは並大抵では追いつけない。
彼女の強みであるスピードとフィジカル。
それは多少荒いコントロールを誤魔化せる程に特出している。
「これは恥欠かせらんねーなッ!」
何度見ても豪快なシュートだ。
腕の振りや腰の回し、ボールへのインパクト。
どれをとっても素晴らしい。
ただし、何度も言うが威力を上げている分、コントロールが甘い。
際どいコースを狙ったつもりでも、確実にゴールしたいという思いによって中へと軌道をズラす。
ボールは丁度、キーパーの指先に触れてゴールラインを割る。
キャッチこそされなかったが、最大の得点機会をコーナーキックに変えられてしまった。
獅子王先輩は恐らく自身を責めているだろう。
これは普段の練習を怠ったツケだ。
大分、高く付いてしまったな。
「なんで揃いも揃ってアタシのパスを無碍にするのよ。アタシがこんだけ気持ちを抑えてプレーしてるのに。ああぁぁーー!!! もう良い。アタシがやる」
あちゃー、これは随分苛立っているみたいだ。
誰がコーナーキックを蹴るか決める前に、ボールを奪い取って行ってしまった。
激しく頭を掻きむしる姿は、昼ドラのヒステリック犯人を連想させる恐怖がある。
冷静になってくれと声を掛けたいところだが、彼女がこうなっている原因の1つである俺からは無理だ。
確実に血が流れる。
「アンタ達、絶対にそっから動かないでよ? 動いたらコロス」
動かないでって言われてもな。
俺達の場所に合わせてコーナーを蹴ってくれるということか?
いや、あの背筋を凍らせる目付き。
そんな優しいアシストをしてくれるようには思えない。
多分、凛は直接ゴールを狙いに来るはず。
だから、俺達に出来ることはシュートの意志を見せて立海山の選手を引き付けること。
絶対に凛の狙いには気付かせない。
ゴール前の密集。
互いにベストな位置を目指すポジション争い。
審判にアピールをしながら、押して押されてを繰り返す。
最終的にはどちらも争いが終わらぬまま、コーナーキックが始まる。
「アタシが何も出来ないままで終わるのは嫌。絶対に活躍する。絶対に」
息を止めて、集中状態に。
ゴール前の味方を一瞥してから、腕を振って思い切り蹴る。
半円を描いて飛んでいくボール。
味方へのパスにしては明らかに角度がない。
獅子王先輩に釣られて奥目にポジショニングしていたキーパーも、その異変には即座に気付く。
でも、もう遅い。
凛の目を見ていれば、もっと早くに気付けたかもな。
あれは自分の力でゴールしようとする奴の目だ。
キーパーの伸ばした手は惜しくも届かず。
上から下へ降り落ちるボールが、願いを叶える流れ星のように雅野の逆転へと導いた。
ご覧いただきありがとうございました。
よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!




