044話 全てを薙ぎ倒す者
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「おぉー、やってるじゃんかねぇー。皆の衆」
「どうしてお前がここにいるんだ。今日は1年以外オフの日のはすだが?」
「そんな堅いことはナッシングゥーだよ、古枝ちゃーん」
「俺は友達じゃないと何度言えば分かる阿久間」
怒られているにも関わらず、反省の色を見せずに笑ってばかりの阿久間。
空いていないベンチの前を彷徨いて、ここだと謎のセリフを吐く。
そこにはユニフォームを着て、まだかまだかとチャンスを待っている1年生が座っている。
なのに、えいっとその子の膝に飛び乗った。
「やめろ、阿久間。そいつがいざって時に、足が痺れてたら困る」
「やだなー、古枝ちゃーん。この子、試合出すつもりないでしょ」
「え!? 本当ですか、監督!?」
「……全員にチャンスはある。そいつの妄言に騙されるな」
「で、ですよね」
全く取り合って貰えず、つまらない顔をする阿久間。
膝の上に座るのは諦めて、立ち上がる。
「さっきも聞いたが、何故ここにいる阿久間」
「ちょっとだけ気になる子がいてねぇー、その視察かもね。多分。メイビー」
「お前が気になる? 珍しいことを言うな」
「あはは! 自分でも、そう思うっち!」
「そいつの名前は?」
「朝花 春陽、あの10番だよ」
立海山のベンチが目に入った。
何かかキッカケがあったとかではない。
相手をぼんやりと観察する中で偶々。
視線の先にいたのは、立海山の中で数少ない見覚えのある人物。
阿久間 莉里だった。
彼女を見た瞬間、全身から血の気が引いていくのが分かる。
何故、ここにいるのか。そんな疑問よりも、彼女が出場したら勝ち目がないという事実。
目の前のことに集中したくても、彼女の存在がちらついて邪魔をする。
いや、あくまでも今日は1年生のみで構成されたチームのはず。
万が一にも阿久間が出てくることはない。
立海山のボールでキックオフ。
毒島から秋風、秋風からDFへ。
かなり後ろまでボールを逃がす。
サイドチェンジを挟みながら、じっくりとこちらの出方を窺っているようだ。
「これはまた厄介な戦法だ」
「人数差を活かしに来たわね。あのボール、取りに行きたくても迂闊には狙えないわ」
「だからって、何もしないって訳にもいかないよね」
「いや、ここは前半を同点のまま終わらせた方が良いわ。その方がこっちの士気は下がらない」
後半をビハインドからスタートするのは、確かに気負うものが多い。
雅野のメンバーは俺も含めてナイーブだからな。
メンタル面はパフォーマンスに多大な影響を及ぼす。
となると、凛の言ったように互いに牽制し合って時間を使い切るのが得策か。
勿体無い気もするが、ここでの失点は絶対に避けたい。
ならば、この時間も必要経費として支払うことにしよう。
「このまま同点に……、なんて思ってないだろうね」
わざわざ俺の近くへやって来て、不愉快な笑顔を浮かべる毒島。
挑発でもして、冷静さを失わせるつもりなのか。
そんな幼稚な策には引っ掛かるはずもない。
いや、余計に引いて守りを強くしないとと思わされる。
「その様子じゃ、分かってないみたいだね。私達が同点なんかで終わらせる訳ないでしょ。時間を目一杯使ってるのは、勝ち越した後に反撃の隙を与えない為。ほら、もうそろそろ前半終了間近だ。……始まる」
「始まるって何が──って、ちょ、待て」
説明責任を果たす前に、毒島が走り出した。
コイツをフリーにしてはならない。
それだけはどんな状況でも変わらない事実。
前半の終わりがけということもあり、息も上がった状態で必死に毒島の背中を追いかける。
対して、毒島は一切の疲れを見せない。
最初と変わらないペースでフィールドを駆け上がる。
少しずつ離されていく距離。
このまま毒島にボールが渡れば、ゴールを決められる確率は高い。
ファールを取られる覚悟でも強引に止めるべきか。
いや、後ろから追い掛けている場面で無理矢理止めに行けば、最悪レッドカードを貰うかも知れない。
ただでさえ、奏の離脱で人数が足りていないのに、俺まで退場したらいよいよ勝ち目がなくなる。
だったら、俺の全力を。
今ある体力の全てをぶつける。
「正直、雅野のこと舐めてた」
毒島が本音を呟く。
「でも、今はそうじゃない。全力で潰す」
まずい。肌でそう感じ取った時には既に遅かった。
これは俺の驕りだ。
もうすぐ前半が終わるというタイミングで起こるはずがないと、勝手に思い込んでいた。
秋風がなるなら、毒島にだって可能性はあったというのに。
[警告:毒島 星が状態"過集中・本能型"に移行]
メラメラと燃える業火のオーラ。
肉体から感じる威圧的な脅威。
3つある過集中の内の1つ。
分析型の思考力向上とは違い、自身の身体能力を最大限まで向上させる過集中。
それを毒島が発動させてしまった。
「毒島だ! 絶対、毒島に回すぞ!」
「あちゃー、気付かれちゃいましたか。でも、もう遅いですよ雅野さん!」
細かいパスでボールを回すと思っていた。
だから、まだ時間はあるはずと。
秋風の放った縦に大きく伸びたパスは、まるで最初から毒島の辿り着く位置を予測していたみたいにドンピシャで届く。
杏と英理奈が2人で間に割って入って止めようとするが、体感が全くブレずビクともしない。
背中に2人を背負いながら、どんどんゴールへと進んでいく。
最後はもう一度チャレンジしに来た英理奈を弾いて、強烈なシュート。
前半45分。立海山・毒島によるゴールの後、前半終了を知らせる笛の音が聞こえた。
それはとてもとても鮮明に。
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