041話 集中の向う側
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「やっぱり素晴らしい! 雅野は可能性の塊ですよ!」
試合前とは全く異なる二面性を見せる暁美ちゃんが、英理奈が奪うよりも先に味方からボールを奪っていく。
固定概念に囚われない自由な発想。
こちらがそれを武器にして仕掛けたはずなのに、相手の行動が俺達の予想を上回る。
「ちょっと何してんの暁美! 自分のエリアから出たらダメじゃん!」
「いえ、ダメじゃありません! 寧ろ、良いんです! やっぱり3つ目のハンデは慢心でした。私は最高の勝負を望みます。 故、自由にプレーしようと思います!」
「また始まった……。これで怒られるの私なんだけど」
「怒られはしませんよ! 勝てばね!」
背後から忍び寄る凛。
会話に夢中でその存在には気付いていないはず。
「私が雅野さんなら、このタイミングで奪いに来ると思います」
「なっ!? 避けた!」
それは未来予知にも近い予言。
絶対に見えていなかったはずなのに、ピタリと言い当てて最小限の小回りで動きで避けた。
すかさず、英理奈が挟み撃ち。
ここで逃す訳にはいかないという強い意志が感じられる。
(俺も英理奈達に加勢し───)
背中で感じた殺気にも近いゴールへの執念が、俺の足を止める。
他の人は誰も気づいていない。
この瞬間、場を支配しているのは暁美ちゃんだったから。
でも、立海山1年の本質を忘れてはならない。
急いでゴールの方を見る。
マークの外れた毒島が、大胆にもフィールドを駆け上がっていくのが見えた。
視界に捉えた時には、既にかなりの距離が空いていた。
暁美ちゃんが3つ目のハンデを破った時点で、切り替えて自身も自由に動き始めたのか。
今から追い掛けても毒島がペナルティエリアに辿り着く方が先だ。
なら、ここで止めるべきは。
「今日も最高の走りですね星さん! それでこそ、私も最高のパスが出せます!」
「3人も相手して呑気なこと言うね!」
凛、英里奈、俺の3人で暁美ちゃんを取り囲む。
他の場所が手薄になるのは痛いが、成功すればピンチな状況も切り抜け、一気に攻めに転じる事が出来る。
そんな理想だけを自分の中で思い描いていた。
[警告:秋風 暁美が状態"過集中・分析型"に移行]
ビリビリと痺れる青い稲妻のオーラを纏う秋風。
俺も習得している過集中を彼女も使ってみせた。
1年生の序盤から簡単に使える力ではない。
だからこそ、あの時の俺は喜んだ。
それなのにも関わらず彼女はそれをやってのけた。
凛と英理奈の間へ的確にボールを通す。
スピードだけで勝負して強引に突破する作戦か。
分析型にしてはシンプルな選択に思えるけど、そんなのは関係ない。
転がったボールを真正面から迎え出る。
「良い位置にいますね! 10番さん!」
「敵を褒めるとは随分余裕そうだね」
「……予想はしていましたから」
彼女の口角が上がった。
この余裕、まだ何かを隠している。
先手を打たれる前にボールを奪い取らなければ……。
「そのボールはまだ私のですよ」
その言葉がボールにも伝わったみたいだ。
まるで意識を持った生き物のように、転がった勢いを止めて僅かながら秋風の方へ戻る。
かなり回転の掛かったバックスピン。
数秒にも満たない時間の中で、この状況を予測して思い付き実行したとでも言うのか。
あまりにも相性が良過ぎる。
鬼に金棒。秋風に"過集中・分析型"。
思考を加速させてしまうことで、彼女の発想力と予測力を最大限に発揮させてしまう。
「星さん! 後は任せましたよ!」
腕を振り上げて、力強く足を踏み込む。
毒島へ向けたロングパスの用意。
最後の抵抗で体を出して、全身で防ごうと試みる。
ハンドにならなければ、どこに当たっても良い。
急な静止からの切り返してドリブル。
誰もが騙される手本のようなキックフェイント。
まさか調子の良い毒島を使わずに1人で得点するつもりとは思わなかった。
フィールドを駆け上がる秋風。
その勢いが止まったのは、前半21分。立海山の2点目が決まった後のことだった。
「アイツ、どうなってんのよ」
「手強いのは間違いないね。たかりんとはるっち、ウチの3人で止められなかったくらいだし」
「これで完全に流れは立海山になったって感じか」
ゴール直後の秋風を眺めながら、3人で現状を把握する。
ノリに乗った秋風、チームの中心となる毒島。
分かっていてもそう簡単には止められない。
ハンデも1つ消えて、ここから本気になるはず。
どちらにせよ、以前、厳しい状況に変わりはない。
まだ前半の半分、これ以上の失点は避けたい。
奏が抜けた枠を凛が埋めるとしても、守備は一層手薄になる。
だからといって、1人で立海山の堅牢な守りを崩すのは厳しい。
上級生をどうにか利用出来れば、話は変わるんだろうけどな。
全員、我関せずって顔をしている。
ボールを渡したところで何もしないか、良くてすぐにリターンするぐらいだろうな。
「こうなったら、杏も含めた4人で攻めるしかないわね」
「でも、そうしたら」
「必死になって耐えたところで、点差は縮まらないでしょ。相手の攻撃力高いのは認めるけど、こっちだって負けてないはずよ」
凛の主張は正しい。
理屈で言えば、守備にも人を割くのが鉄則だけど、焼け石に水を注ぐだけだ。
なら、グチャグチャな展開だったとしても点を取って取られてを繰り返す方が勝つ可能性を見出せる。
「やるか……。それしかないよね」
「なんかドキドキしちゃう! でも、みんなでなら出来る気する! あっ、そうと決まれば、杏にも伝えて来なきゃ」
英理奈が慌てて杏を呼びに行く。
取り残された凛と俺。
言葉を交わすことはなく、黙ってセンターサークルへ向かう。
やる事は2人とも理解していた。
だから、敢えて口にする必要はない。
静かな空間で集中を高める。
首を回らして、心臓を鼓舞するように叩いた。
いつものルーティン。気合を入れ直す。
[通知:朝花 春陽が状態"過集中・分析型"に移行]
始めようぜ、疲れるくらいの殴り合いを。
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