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撫子は強く咲く〜美少女サッカー育成ゲームにTS転生した俺、最弱高校で最強を目指す〜  作者: 風野唄


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038話 理不尽な実力

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

 試合再開直後、毒島(ぶすじま)にボールが渡る。

今回は流石に動きこそしたけど、ランウェイのように優雅で堂々と歩いていた。

その間に他の選手はこちらの陣地に傾れ込む。

毒島で時間を溜めて、上がりきったところで細かいパスを繋ぎ得点するつもりか。


 上手くいけば得点の可能性はかなり高い戦術だ。

しかし、それ相応にリスクもある。

時間を稼ぐまでにボール保持者に人が寄りやすい。

ポゼッションなら攻め上がる段階で細かくパスを繋いでいくべきだし、カウンターに近い形を取るならもっと素早い展開が望ましい。


 やはり根底にあるのは、足下で負けない絶対的自信か。

取られるはずがないと思っているのだろう。

こちらとしてはなるべく前線で奪取して、勢いのまま2点目を取りたい展開。

俺1人でもプレスを掛けて、彼女からボールを剥がしたい。

毒島の自信をへし折って、完全に流れを取り込む為に仕掛ける。


「へぇー。君、実力差とか分からないんだ」


 突進する俺を見て、鼻で笑いながらボールキープする。


(こいつッ! 全く動かねぇ!)


 目の前にいる毒島を巨岩と錯覚してしまうほどに重く硬い。

俺のフィジカルのパラメータが低いのもあるけど、にしても差があり過ぎる。

真正面から馬鹿正直にやって勝てる相手じゃないぞ、こいつは。


「本当に1年生かよ……」

「ふっ、誇って良いよ。この未来の大スター毒島 (きらん)と戦えたことを」


 急に毒島の力が抜ける。

掛かっていた体重が逃がされて、気付けば乾いた土の上に転がっていた。

仰向けになると、燦々(さんさん)照りつける太陽が眩しい。

でも、丁度良かった。

今、毒島の顔を見ると相手の術中に嵌ってしまいそうだから。


「そろそろ、みんな位置に着いた頃かな? さぁ、立海山(りっかいざん)の最強の名に懸けて、始めよう」


 遂に展開が大きく動き始めた。

毒島から始動した立海山の素早いボール回し。

全部ワンタッチで、正確に味方の足下へと蹴り出される。

守備ラインにいる杏と英理奈の2名がパスカットを試みたけど、人数に差があり過ぎて選択肢を絞り切れず反応が間に合わない。


 本来であれば、プレスにも人員を割ければ良いんだけど、案の定置き物の先輩達。

人数の差が痛い所で顕著に現れたようだ。


 結局、ボールは一度も止まる事なくペナルティエリア内へ。

しかも、フリーで打てる状況。

キーパーの猫屋敷(ねこやしき)先輩が、戸惑いながらも一応止めようとする素振りは見せる。

後は神頼みしかないのか。


 フォームの綺麗なシュートが、ゴールの隅を目指して放たれた。

反応の遅れた猫屋敷。

こうなったら、点が決まるまで秒読みかと諦めた瞬間だった。


「マニュアルでもあるのかってくらい、つまんないシュートね!」


 (りん)が深い位置まで下がってカバーに入る。

伸びた足がゴール直前でボールを弾き、なんとかエリア外へ。

相手のコーナーキックからなので、攻撃の手は緩まないけれど、九死に一生を得た。


 全員で守る為に急いで自陣のペナルティエリアへ移動。

ついでに、ナイスセーブを見せた功労者の凛を労う。


「ありがとう! 凛!」

「感謝してる場合じゃないわよ。これでハッキリしたわね。この試合、本当にアタシ達5人で勝つしかない」

「かなりきついけど、やるしかないよね」

「こんなの丁度良いハンデでしょ」


 逆境の中でも笑って見せる余裕。

彼女が味方であってくれて本当に良かった。

どんな時でも絶えない負けん気が、俺の背中を支えてくれる。


「ごめーん、たかりん! 助かったー」

「パスカットは難しそうなんで。私もうちょっと後ろ下がります」

「はい! 切り替え、切り替え! 集中して」


 (あん)英理奈(えりな)も合流。

犬飼(いぬかい)をカウンターの起点として前に残し伝えて、コーナーキックが始まる。


 キッカーは俺の見覚えのある人物だった。

立海山の練習で一緒にロンドをしたオドオドちゃんこと、暁美(あけみ)ちゃん。

だけど、様子がおかしい。

知っているのは、自信無さそうに俯いている姿。

今の彼女はどちらかと言えば、正反対だ。


 腹から声を出して、情熱的に味方への指示出し。

細かい位置取りも妥協せず、自分の納得が行くまで続いていた。

これを同一人物とするのはあまりにも難しい。

一卵性の双子だと言われた方がまだ納得がいく。


 飛び交う指示がピタッと止み、唐突に訪れる静け。

22人がフィールドに立っているとは思えないくらい、何もない時間。

キッカーの暁美ちゃんが、ユニフォームの心臓部を皺になるぐらい強く掴む。

彼女なりのルーティンであると直感で分かる。


 来る。体が本能的に身構えた。

素早い球速。低めの軌道。

反応する時間を与えず、大勢の人混みをすり抜け一直線に目的地まで駆け抜ける。


「ナイスアシストッ!」


 そこには毒島が待っていた。

敵も味方も掻き分けて、ドンピシャでヘディングを合わせてシュートを放つ。

速すぎる展開に猫屋敷先輩はついて行けず、1歩も動けないままゴールに入ってしまった。

折角勝ち越していた1点が前半8分、最も調子付かせたくない相手によって振り出しへと戻されてしまう。


 攻撃の組み立て方から得点までの一連の流れ。

全て毒島が起点となっている。

立海山の1年を攻略するには、誰かが毒島を止める必要があるな。

その役割を担える人物を俺は1人だけ知っていた。

ただし、その人物は未だに過去を引き摺っている。

この試合で覚醒するとは到底思えない。


 本人が変わろうとしなければ、ずっとこのままだ。


(アンタだって分かってるんだろ。……獅子王(ししおう)先輩)


 ないものねだりをしても現状は変わらない。

現状を打破する策を考えて、追加の1点を取ることに集中。


ご覧いただきありがとうございました。

よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!


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