037話 まだ始まったばかり
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「それではこれより、立海山高校と雅野高校の練習試合を始めます」
「よろしくお願いしまーす」
麗らか空の下、整列した2校が顔を合わせて試合開始の挨拶。
立海山の列の長さはこちらの2倍近くあり、醸し出されるオーラが1年ながらに、雅野の先輩達を萎縮させていた。
今から勝とうとしているのに、これでは先が思いやられる。
やはり、当初から決めていたように1年だけで攻守共に組み立てしかないか。
この試合、特に警戒すべきなのは毒島だろう。
あの態度と周りの取り巻き、何よりあの練習で見た動き。
自分のプレーに相当な自信があると思って良いだろう。
加えて、私情にはなるが、アイツに気持ち良くプレーをさせたくない。
渡りそうなボールは、全てカットするくらいの意気込みで見張ってやる。
「じゃあ、キックオフをコイントスで決めます。話し合って裏か表、どちらにするか決めてください」
「雅野さんの方が決めて良いですよ」
毒島がこちらに決定権を譲る。
「お言葉に甘えて、裏で」
ピンッとコインを爪で弾く音が鳴った。
空中を何度も回転して、地面に落ちていく。
結果は分かりにくいけど、この絵柄は裏。
よって、雅野のキックオフからスタート。
ここまでは俺の思い描いていた通りの展開。
1年生の俺と犬飼が、センターサークルに入る。
この光景に納得のいっていない先輩もいるみたいだけど、獅子王先輩が何も言わないので他の人口に出して抗議はしてこなかった。
こちらとしては、誰が何と言おうと覚悟は変わらない。
まずは1点を取ることに集中。
そこで相手に心理的な負荷を掛ける。
「分かってるよね、犬飼」
「うん、大丈夫。ゴール前までは私以外で運ぶ。ゴールの時だけ、私が撃つ」
「そうそう。心配しなくても、ちゃんと運ぶから体力は温存気味に動いてよ?」
「分かった」
最終的な擦り合わせも終えたところで、ボールを犬飼が蹴る。
ボールを受け取りながら、相手の動きも観察。
誰か1人でもプレスに来るかと思っていた。
だけど、相手は全員ピクリとも動かない。
「……どういうことだよ」
サッカーの試合とは思えない、あるまじき光景に動揺する。
どんな意図があるかは分からないけど、完全に分かる事が1つ。
俺達は完全に舐められているって訳だ。
ただでさえ、1年相手で大きなハンデを貰っているのに、これ以上のハンデは最早煽りにすら思える。
もしかすると作戦の内の1つなのかも知れない。
油断させておいてディフェンスラインでボールを奪い、起死回生のカウンター。
しっくりとは来るけど、だとしても動かないのはやり過ぎだ。
取れるタイミングがあれば、プレッシャーを掛けに行くのが普通だろ。
「朝花、こっち」
痺れを切らした犬飼が、ポジションを俺の方へ寄せてボールを要求してくる。
「待ってて。前線までちゃんと運ぶから」
「このまま舐められるの、嫌」
「あぁー、もう。分かった、分かったから」
相手に動く気がないのであれば、手の内を明かすのも、犬飼に体力を消費させるのも得策ではない。
ここは俺が時間を使って、様子を見ながら前へ上がるのがベスト。
けれど、彼女の頑なな視線に根負け。
最初の1点を犬飼に任せる方針ではあったので、予定通りと言えば予定通り。
心にそう言い聞かせてボールを犬飼へ預けた。
こっちの気持ちはお構いなしにどんどんと前へ上がる犬飼。
中盤を何事もなく突破する。
その気味の悪さに戸惑いながら、早くもゴール前へ。
「……本当に動かない」
ゴール目前だというのに、キックオフから全く変わらない位置。
最後の砦となるキーパーも足を開きもせず、腰を全く落とさないで脱力をしたまま立っている。
それは犬飼がシュートのモーションに入っても変わらない。
雅野高校としてのデビュー戦。
開幕を告げる先制点は、心の中にわだかまりを残す屈辱的な1点となった。
ゴールが決まったことに変わりはないので、背中を丸めて自陣へと戻る。
毒島とすれ違った。
あのムカつく笑顔をこちらに向けて、声を掛けてくる。
耳を傾けるなと言い聞かせても、嫌になるくらいスッと耳の中まで届く。
「私達のサプライズなんだから、もっと喜ぶ顔してよ。あれ? 無視? 酷いなぁー、雅野さんも。こちらは1年だけ。しかも、1点は譲る。実はもう1つハンデがあるけど、やっぱりあった方が丁度良いよね」
「そういうのは勝ってから行った方が良いんじゃない? フラグ立てるのは三流でしょ」
「あはは、可愛い強がり。……でも、うざいからさっさと心折れないかなー」
何から何まで相手のペースだ。
毒島の言う通り、強がることしか出来ない。
勿論、ここから逆転を許すつもりはないけれど、こちらの布陣は既にボロボロ。
ゴールを入れた本人である犬飼も、見た感じ4割から5割くらいの体力を使い切っていそうだ。
先輩達も異様な光景にざわつきこそすれど、何か策を練る様子は見られない。
「みんな! どんな形でも1点は1点! もっと喜んでこう!」
フィールドの奥まで響く元気あふれる鼓舞。
落ち込んでいる空気を諸共せず、ブイサインを見せる英理奈の姿が目に入った。
凛の目もまだ死んでない。
遠くて見えないけど、杏だって同じはず。
なのに、前線2人が暗くなっていたら勝てるものも勝てない。
気持ちを素早く切り替えて、もう1点。いや、もう3点を自分自身のハットトリックで決めるつもりに。
「犬飼、あと1点まではフォワードで問題ないよね」
「……そのつもり」
最高のタイミングで、試合再開のホイッスルが鳴った。
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